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始まり

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 アンゴラ兎が鐘を鳴らしてぼくの前を走り出したので「うるさいな! 寝られへんやないか」と言うとアンゴラ兎は我が意を得たりの表情で「そうでおま。寝てる場合やおまへんで」と静かに言った。
 鐘は鳴らずに沈黙が震えた。
「夜が始まります。それは、ただの夜やおまへんで。血の川が、血の池が、そして、血の色に変わる海が生成する夜でっせ」

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 夜に沈む。

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 夜が明ける。


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