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I am… 上 25日

アメリカのユタ州某都市、街の外れの山近くの小さな小屋に2人の男女が怯えている。
イスに手足を縄で縛られて、口を猿轡で声が出せない。周りは見えない。なぜなら目の周りは茶色の壁に覆われている。袋のようなもので顔を隠されていて観ることはできない。
暫くして、袋が取られた。怯えた様子で深井慎太は周りを見る。
錆びた小屋に、1つのディスプレイ、窓はない、扉は2つだけ。
その1つの扉はパッと見る感じ、鉄のようなもので出来ていて、とても1人では動かせないタイプの扉だ。もう1つは開けられそうだが、出口だとは限らない。
どこからか変な臭いがする。錆びた小屋なので、そのサビの臭いだろう。となりには彼女のシーハン・J・マヌーが同じく、縛られていて座っている。身動きができない。彼女も怯えている様子で、震えている。歯と歯がカチカチカチカチッと、怖いものや寒いときに発生する気持ちの悪い音が聴こえる。
深井はどこだ? ここは? と考え始めたとき、1人の奇妙な格好をした人が語り出した。

やあ、僕はJ(ジョー)・ピエロ。君たちをここに連れてきた。

深井とシーハンはン゙ーッ! となにかを話したそうにしている。

おっと、口が聞けない状態だったね。それを外してあげよう。

低いドスの利いた声が小屋中に響く。恐ろしい声だ。見た目はピエロだ。白黒の服装に右の裾に「I am」と書かれてある。顔も恐ろしい、アニメやホラー映画にでそうだ。
そのピエロは2人の猿轡を取る。

これで話せるかな?

先にシーハンが話し、深井が話す。

なによ! ここ!? 外してよ! 痛い!
そうだ! 何でこんなことを!? 離してくれ!

君たちは置かれた状況がわかるか?

知るもんか! この縄を取れ! クソ野郎!

ほう、その口で行けるのか。いいだろう。その縄を外してやる。その代わり手錠をはめる。

すると、ピエロは持っていた手錠を先に足にはめて、手の縄を取って、手錠を2人にはめた。この時、深井たちは暴れれば良かったのだが、それが出来なかった。
連れてこられた時に神経を衰弱させる注射をうったのだ。それで弱っている。

手錠をはめた後、そんな2人に語る。

覚えているか? なぜここにいるのか?

まったくだ、覚えない。

そう、深井は答える。

考えるといい。

────────── 2か月前10月22日、日本。

深井のアパート、1dkの部屋で深井慎太とシーハン・J・マヌーは同棲をしていた。もうすぐ婚約とも周りから言われるほどだった。
2人は愛していた。2人の出会いは大学、深井は大学卒業後、パチンコ・スロット・競輪・オートレース・FXなどのギャンブル専門の雑誌ライターとして働いていた。
彼女はアメリカからの留学生で、大学卒業後にワインのソムリエになった。
2人は婚約間近で、クリスマスに旅行を計画していた。
彼女はグランドキャニオンが見たい、深井はラスベガスに行きたいと、アメリカ旅行にすることにした。

最初は日本からロサンゼルス、そこから列車でロサンゼルスからラスベガス、グランドキャニオンに行き、旅行する計画を立てた。
12月24日から27日の予定で行く。実際には23日の夜飛行機に乗り、24日に着く。

12月21日、PM14時。
この日、深井は遅く帰ってきた。この日は2人で今後の計画や結婚の事などを考える約束をしていた。だが、彼はそんな事を忘れて、オートレースを女友達と賭けに行っていたのだ。その後、飲んだ後で帰ってきたそうだ。これはシーハンにとって、許せないことだった。シーハンは比較的大人しめな女性、深井は荒っぽいところがある。
ここでは一旦許した。もうすぐアメリカ旅行だから。

12月24日、アメリカ・ロサンゼルス。2人はロサンゼルスに立ち寄った。日本からはロサンゼルス行きが多くフライトがある。
着いてすぐ、ラスベガスに向かう。長旅だけど、ラスベガス、グランドキャニオンに行けるのは、ワクワクする。
深井は正直、グランドキャニオンには興味がない。ラスベガスでギャンブルが出来ればいいと考えていた。その思惑どおり、深井はラスベガスに着くとギャンブルを早速する。
夢中になっていると、シーハンの事を忘れる。
2人で旅行に来ているのに、忘れて自分の時間を楽しむのは男としてやっては行けない事だろう。
こうなるのはわかっていた。
シーハンはラスベガスのカジノの外で電話をしていた。知り合いだ。電話が終わると、もう遅いので彼氏を探しに行く。
すると、カジノにどっぷりハマっている彼氏を見つける。ブラックジャックをしていた。その時の顔は負け続けていて、機嫌が悪く、暴言を吐きながら勝とうと何回も賭ける。まるで、悪に満ちたバッドマンみたいだ。
もう遅いし、とりあえずまた明日来ることにした。
帰ろうとカジノを出る間際何者かに口を抑えられ、気を失ってしまった──────────

12月25日、現在。
これまでの事を考えた深井。旅行の事とラスベガスの事を思いだしていた。

お前! もしかして、俺らを襲ったヤツだ? なにが目的だ、金か?

金? 金なんて必要ない。くれてやる。いいかいまから言うことをよく聞いておけ愚民よ。これから話すことはゲームだ。この小屋でゲームをしてもらう。

ゲームだと? ふざけてんのか? このクソ野郎は。

その言葉覚えておく。ゲームはいわゆるデスゲームだ。お前らはこのゲームをクリアすると、この小屋から出られると同時に賞金が貰える。賞金は4万ドルだ。

4万ドルだって!? 日本円で560万だ! くれるのか!?

おい、慌てるなアホンダラ。いいかその賞金を手に入れるにはゲームをやってクリアしないといけない。それとこの小屋の鍵を渡す。

そのゲームは?

そのゲームは○‪✕‬心理ゲームだ。

なんだ? それ? 知ってるか? シーハン。
いや、知らない。でも心理ってことはなにか揺さぶるゲームってこと?

いいや、もっと簡単さ。お互いのいま思っていること、好きなこと、同じ事を一致させるゲームだ。
例えば「彼女の好きな魚は?」に対して、あるなら○、ないなら‪✕‬、「彼女の好きな魚はマグロだ」、○か‪✕‬で答えたとき、2人とも同じ回答で無ければいけない。まあそれだけだがな。

簡単そうだな!! ちょちょっと勝ってギャ…… 旅行の続きをしよう!
そうね。早くでたいわ…… 。

ただし!この状況だとカンニングをしてしまうだろう? お互い目がある。どちらかがみたら答えが分かってしまう。そこで、手錠をよく見たまえ。

2人は手錠を見る。その手錠は普通の手錠と違って、真ん中になにかカプセルのようなものが付いてある。

これはなんだ?

深井は不思議に思う。

それは毒だ。僕が持つこのコントローラーのボタンを押すと、その毒が解放される。2人の手錠とも毒が充満し、爆発する。君たちはバッドエンド。死ぬってことだ。

は? 何言ってんだ? そんなことできるわけないだろ?

ではお見せしよう。

するとピエロは、ディスプレイの近くにあった1つの小さな箱を取り出す。その箱を開けると、透明なガラスの箱だ。中にはマウスがいる。
ピエロは2人と同じカプセルをポケットから取り出した。そして、その透明な箱に入れて鉄の扉付近に置くと、ピエロは離れる。

よく見ておけ。

ピエロはコントローラーのボタンを押した。すると、大きな爆発音が透明の中から聴こえた。びっくりした2人は驚きながら耳を塞ぐ。徐々にその箱を見ると、箱ごと木っ端微塵になっていた。先程までいたマウスは粉々になっていて、近くに血が飛び散っている。

なっ!? まさかそんなことが…… 。

わかったか? 彼氏くん。不正をするとこうなるという事だ。覚えておくがいい。問題は全部で20問。簡単だ。そのうち、15問正解したら鍵と4万ドルを渡そう。出題者は僕だ。あのもう1つの扉の奥はモニター室になっている。このディスプレイから君たちに出題、監視をする。くれぐれも気をつけてくれ。あ、1つ言い忘れていた。このゲームに負けたら死にます。では。

ピエロはそう言うと、モニター室に入った。2人は小屋に残されてしまった。
どんな問題がくるのだろうか、ドキドキが隠せない。

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