しゃっくり食道説

 しゃっくりの原因は未だはっきりせず、横隔膜の痙攣だろうと言われていますが、しゃっくりを再現しようと横隔膜を細かく緊張させても、呼吸が起こる又は腹圧が高まるのみで、あの胸が引き上がるような、しゃっくり独特の動きは起こりません。たまたましゃっくりが出た時に横隔膜を強く緊張させても、しゃっくりに変化はありませんでした。しゃっくりの原因と横隔膜はあまり関係が無いのだと思います。

 しゃっくりでは胸郭(胸部の骨格)が瞬間的に上がります。胸郭が上がるのは、呼吸をする、姿勢が伸びる、のどちらかです。

 胸式、腹式、どちらの呼吸でも胸郭は上がります。胸式呼吸では吸気筋の緊張によって、腹式呼吸では①横隔膜が下がる事で②腹部内臓を押し下げ、③その反発力で④姿勢が伸び、胸郭が上がります。

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 しかし腹式呼吸の場合だとこのような手順を踏まなければならず、瞬間的に胸郭が上がる説明にはなりません。また、腹式呼吸だとお腹が膨らむものですが、しゃっくりではお腹は引っ込む動きになります。しゃっくりに関して横隔膜は除外して考えて良いでしょう。

 胸式呼吸でしゃっくりを再現しようとしても、どこか動きが違います。しゃっくりはもっと中から突き上げるような感じがします。お腹から胸にかけて、何かが瞬間的に動くようなあの独特の運動が出来るのは、あとは食道の筋肉ぐらいしかありません。食道の瞬間的な緊張によりしゃっくりが生じると考えればどうでしょうか。食道は意識的に動かせない不随意筋であるし、しゃっくりの再現が困難であるのも頷けます。

 しゃっくりの特徴の一つである、あの高い音はどうでしょうか。あの高い音は息を吸う時に声道で生じる吸気音です。息を吸いながら声を出そうとすると、高い音になるのが分かります。つまりしゃっくりでは瞬間的に息を吸っている事になります。そして腹式呼吸が否定されているので胸式呼吸であるはずです。

 これには相当頭を悩ませました。まず考えたのが、食道が瞬間的に強く緊張し、胃を強く引き上げ、背骨を中から押し上げ、姿勢が伸びて息が吸われる、です。しかし間にある肺を介して背骨を押し上げるので、肺が圧縮されて呼気になるはずです。よってこの仮説は偽となります。

  次に考えたのが、食道は通常ではたわんでいるので、これが強く緊張する事で真っすぐとなり、姿勢を伸ばすのでは、というものです。

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 食道は背骨に沿って通っています。食道の緊張により真っすぐになると、姿勢を支える背骨が食道に引かれより前方に引かれ、背骨が直立し、姿勢が伸び、胸郭を引き上げるのでは、と考えました。

 しかし食道は直径1~2cm、食道壁の厚みは3~4mmのペラペラなものです。大きく重い背骨を瞬間的に動かすほどの筋力があるとは思えません。それにそこまで力があるのなら、重い背骨を引くより先に、喉を強く引いてしまい苦しくなるはずです。よってこの仮説も偽となります。

 上の図をよくよく見ると、食道の前に心臓がある事に気づきました。食道の緊張で心臓が押されるとしたらどうでしょうか。心臓自体の重さは200~300gであり、血液が詰まっているとすれば倍くらいでしょうか。その程度ならば、満腹になる胃を支える事が出来る食道からすれば、宙吊りになっている心臓を押す事は充分に出来ます。

 しゃっくりにより心臓が後ろから急に押されるとびっくりしたような状態になり、息を吸うのでは、と考えました。心臓が止まるかと思った、というあれです。驚いた時に息をヒッと吸うのは、誰にも覚えがあると思います。冷たいプールに入る時も、心臓が緊張するのか息を吸ってしまうものだと思います。

 長くなってしまったので続きは後日にします。

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