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猫のお告げは樹の下で

青山美智子著『猫のお告げは樹の下で』読了しました。
以下読後感です。

人生に対して、痛み、悩み、迷いを抱く人々が、ふと立ち寄る神社。お尻に星の形の模様がある猫・ミクジが現れると、葉っぱが一枚はらりと落ちてきます。見上げてみればそれは多羅葉タラヨウの木。葉書の元になったといわれるこの葉っぱには、その人だけが読める単語がひとつ書かれていました。

それは「お告げ」。

でも葉っぱに書かれた単語ひとつでは意味するところがわかりません。お告げの真意を知りたくて、確かめたい一心で、人は動き出すのです。しっかり腑に落ちるまで…。その過程が無理なく自然で、読み手もしっかり納得させられます。

もし、今の私がミクジに出会うことができたら、多羅葉の葉っぱにはどんな言葉が書いてあるのでしょう。ミクジには会えなくても、人は本当に必要な時には知らず知らずのうちにお告げを受け取っているのかもしれません。それは誰かが何気なく口にした言葉だったり、ふと開いた本に書いてあることだったり、散歩している時に目にした言葉だったりするのかも。お告げとはキッカケやヒントに過ぎず、本当に大事なことは、自分自身で探し、見つけ出し、心底納得すること。つまり答えは自分の中にしかないのかもしれません。物語の7人が答えに辿り着く過程を読みながらそんな風に思いました。

忘れたくない言葉が散りばめられています。ネタバレになるからあまり書けないけれど、たとえば ー

「早く忘れたい。毎日痛くてつらい。どうやったら消えるの」
時子さんは、今度は即答した。
「残念、消えません。消さなくていいの。その痛みは消えるんじゃなくて、別のものに変わっていくんだよ」
「別のものって?」
私がすがるように問うと、時子さんはふふっと笑った。

この答えが実に良いのです。知りたい人はぜひ読んでみてください。
読書の秋の一冊におすすめです。


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