[創作論845] 発電するゲル

発電するゲル材料が開発されました。

近年、ソフトエレクトロニクスに適応する柔軟、軽量、かつ自己発電できる材料への期待が高まっています。
外部電源を用いずに静電荷を持続的に保持できるエレクトレット材料は、振動発電素子へ応用できます。
研究チームは、流動性のある液体エレクトレットとして、静電荷を安定化するπ共役色素部位と柔軟な分岐炭化水素(アルキル)鎖からなる難揮発性の常温液体(アルキル-π液体)の開発を進めています。
このアルキル-π液体は、優れた帯電性を示すことに加え、成形加工性に優れており、塗布や浸透などの方法を活用できますが、流体であるため液漏れ、染み出しなど電極作製時の固定化や封止に課題がありました。
さらに、発電機能の向上のために帯電量のさらなる増大も必要となっていました。
今回研究チームは、微量の低分子ゲル化剤をアルキル-π液体に加えて貯蔵弾性率を4000万倍増加させ、容易に固定化や封止できるゲル(アルキル-πゲル)を創成しました。
アルキル-πゲルの基本的な物性を明らかにするため、π共役色素の一種であるナフタレン分子に分岐アルキル鎖を導入した液体分子(アルキル-ナフタレン液体)を検討したところ、微量の低分子ゲル化剤をアルキル-ナフタレン液体に加え、130℃に加熱して溶解させた後、室温に冷却することで、流動性を失ったゲルが得られました。
さらに、アルキル-πゲルは大気中で10カ月以上ゲル状態で保存できます。
また、π共役色素の一種であるピレンを分岐アルキル鎖で液体化した分子(アルキル-ピレン液体)は、静電荷の安定的な貯蔵で有利な液体であり、研究チームはアルキル-ピレン液体をゲル化し、コロナ帯電処理でゲル-エレクトレットを創成しました。
さらに、柔軟な電極で挟んで封止し、振動センサー素子を作製しました。
同振動センサーは、エレクトレットの電荷保持量が大きいほど、大きい出力電圧が生じます。
電極素子作製の際の封止や固定化が、ゲル化で容易になったことに加え、液体より帯電量が24%増加しています。
また、ゲル-エレクトレットを組み込んだ柔軟な電極素子は、17Hzの振動に対し、出力600mV(液体素子より83%増大)の振動センサー機能を示しました。
また、振動センサー素子として、一度エレクトレットとして使用したアルキル-πゲルを回収して再利用できることも確認しており、サーキュラーエコノミーに資する材料としても期待できます。
今後、帯電量、帯電寿命といった帯電特性とゲル強度をさらに高め、素子性能を向上させ、微弱な振動やさまざまな歪み変形に追従できる、ウェアラブルセンサーとしての実用化を目指すとのことです。


素晴らしい技術ですね。
創作活動でもゲルを上手く使えると面白いですね。

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