[創作論860] コンタクトレンズに搭載できる多点マイクロ電極

市販のコンタクトレンズに搭載できる多点マイクロ電極が開発されました。

角膜上のセンサー電極によって、光刺激に応答する網膜から発生する電位を測定する網膜電図(ERG)は、一般的に網膜変性疾患の検査で利用されており、基礎研究から臨床的な応用まで幅広く利用されています。
ERG測定は、検出電極(間電極)、参照電極(不間電極)、接地電極からなる3電極システムが必要で、検出電極は角膜または結膜に、参照電極は測定器のグランドに相当し、耳たぶなどに接地電極を接触させます。
現在は角膜上で測るタイプが主流で、レンズ形状に加工された硬質なプラスチック上に金属が配線された製品が市販されています。
こうした一般的な1電極によるERG計測は、全視野網膜電図(FF-ERG)と呼ばれ、網膜の局所的な応答を取得できないなどの課題を有していました。
研究チームは、これらの課題を解決するため、透明度、電気伝導度、柔軟性に優れるメッシュ電極を作製しました。
ERG計測ができる多電極化、市販のコンタクトレンズ上への接合と局所的絶縁化に成功しました。
透明で柔らかい金属電極を作製するために、形状(Serpentine、square、zigzag、hexagon)、幅(5、7、9μm)、ユニット幅(200、500、1000μm)を変えたマイクロメッシュ電極を作製し、透過性と10%歪を加えた際の抵抗値変化を評価したところ、すべてのマイクロメッシュ電極で80%以上の透過性を示しましたが、10%歪は、Serpentineとhexagonのみ歪に耐えうることを確認しました。
次に、多点電極によるERG計測で、マイクロメッシュ電極から計測に繋げるリード電極の絶縁についての課題解決が必須になることがわかりました。
そこで、メッシュ電極の導電性高分子のみの導電性を維持する方法として、電極全体の両端に直流電流を印加することで、リード線に流れる電流と金マイクロメッシュ上に新たに流れる電流値を電極構造で制御できるか確かめました。
シミュレーションの結果、電流密度として約70倍以上の電流値の差があることがわかり、実験的にリード線上の導電性高分子のみが過酸化されること、フーリエ変換赤外線分光法による分子振動解析で導電性高分子の構造変化を確かめました。さらに、通電試験により、電圧がマイクロメッシュ電極を介してのみ計測されることを確かめました。
生物学的安全性と動物試験によるERG計測電極としての性能評価では、AuとAu/PEDOT電極上では90%以上の高い生存率を保ちましたが、Zn電極上は生存率が50%以下まで低下することがわかりました。
これにより、電気メッキで作製したAu/PEDOT複合電極は、十分な安全性を有していると言えます。
さらに、開発した複合マイクロメッシュ電極をアレイ化(7電極)した多電極レンズを試作し、家兎の眼に装着させ、各電極からERGが計測できることを確認しています。
これらの成果は、緑内障や網膜色素変性症に伴う盲点評価につながるとのことです。


素晴らしい技術ですね。
創作活動でも、目を大事に守りたいですね。

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