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「オーケストラの科学」2024年5月9日の日記

こんにちは。cuprateです。大学で物理学と工学の研究をしています。

このNoteでは、自分が普段考えた事を書いていきます。

今日の考えたことは…。

「オーケストラで大人数が奏でるバイオリンの音は、一人のバイオリン奏者が奏でる音の大きさよりも大きいのか?」


ほとんどの人は、大人数が鳴らす音は当たり前に一人が鳴らす音よりも大きいはずと考えるだろうし、自分も直感的にはそう考えてきました。でもその認識がゆらぎつつある。理由は以下。

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まず、二人の人間がバイオリンを鳴らすことを考える。音は空気の振動(厳密には空気の疎密波)なので、この音が重なりあうと音は大きくなる、つまり疎密波の振幅が二倍になる。

音の位相がそろって強め合うとき

ポイントは、これはあくまで「音の位相が揃っていた場合」の話ということであり、もし位相が半分ずれれば音は打ち消しあう。よって、二人の人間の音の足し合わせが必ず大きい音になるとは限らない。

音の位相がずれて弱めあうとき

今までは2人のケースを考えたが、それを3人、4人、、、、100人へと拡張していっても同様の考えが成り立つ。つまり、その100人の音は強め合ったり弱めあったりするわけで、音の大きさの合計は結局1人の音の大きさと同程度になる、そんな気がしてきませんか?

音の大きさの期待値をちゃんと考えるとどうなるのか。つまり、各楽器のならす音波の「位相」の分布を考える。まず、この位相は少なくとも人力では揃えられないだろう。ゆえに、位相は完全にランダムにばらつきそう(この仮定は本当か?つまり、共振現象/同期現象ようなものがある可能性はないだろうか?=疑問その①)。もし複数人の鳴らす楽器の位相差が完全なランダムだとナイーブに仮定した場合に、音は各自で強めあったり弱めあったりするわけで、そうなると音の大きさの期待値は一人が鳴らす音の大きさと同じになりそう(この結論は本当か?特に、いかなる音の「波形」の場合でもこの結論は成り立つのか?=疑問その②

はっきりした結論はありませんが、このあたりをもっとちゃんと調べて考えてみたい。特にこの話は何となく同期現象との関連があるのではないかと感じている。何か考察に進展があれば続きの記事で追記します。

(以下に同期現象に関連するリンクを貼っておきます。)

蔵本モデルと呼ばれる、同期現象をシンプルな仮定で記述したモデルのwikipedia
・Arenas, Alex, et al. "Synchronization in complex networks." Physics reports 469.3 (2008): 93-153.
・Acebrón, Juan A., et al. "The Kuramoto model: A simple paradigm for synchronization phenomena." Reviews of modern physics 77.1 (2005): 137.



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