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キュレーションという名の“愛の押し売り“


※このnoteは武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダシップコースの「クリエイティブリーダシップ特論」という、クリエイティブの力をビジネス・社会に活用しているゲスト講師の方々による講義のレポートです。


5/3の講義では、時事通信社→森美術館→日本科学未来館というキャリアを経て現在はキュレーターとしてご活躍をされている鈴木潤子さんに、鈴木さんが取り組んできた活動や社会と繋ぐアートにについてお話を伺いました。

Profile
鈴木 潤子 (すずき じゅんこ)
東京都出身。時事通信社、森美術館、日本科学未来館で通算約20年間の勤務を経て独立。 2011年より無印良品有楽町店内のギャラリースペース・ATELIER MUJIにてキュレーターとして8年間で約50件の展覧会とその関連イベントを企画運営した。2019年4月に開店した無印良品銀座店6階ATELIER MUJI GINZAにて展覧会やイベントのキュレーションを行い現在に至る。同時並行でフリーランスとしてこれまでの経験を活かした個人事務所@Jを立ち上げ、アートやデザインを中心に、幅広い分野でPRやキュレーション、文化施設の立ち上げに携わる。
(引用:Schoo(スクー)  https://schoo.jp/teacher/2775 )

このnoteでは鈴木さんのお話の中から印象的だったことについて書いていきます。



キュレーターとはどんなお仕事?

鈴木さんのお話の前に、私はキュレーターというお仕事がよくわかっていなかったので調べてみました。

■「キュレーター」とは、英語「curator」を由来とする外来語です。「curator」とは、欧米の美術館や文化施設における専門職の呼称です。学術的な専門知識によって美術資料の収集や保管、展覧会の企画や構成、運営などを行います。施設に属さないフリーランスのキュレーターもいます。

■キュレーションとは、特定のテーマに沿って情報を選んで整理し、そこに新たな価値を付加して発信する作業のことをいいます。

■キュレーターを日本語では「学芸員」と訳しますが、厳密には日本の学芸員とキュレーターは定義が異なります。「学芸員」は国家資格であるため、学芸員として勤務するためには資格の取得が必要です。学芸員は、博物館や美術館における、作品と来館者をつなぐ役割です。資料の収集、保管、展示および博物館事業における専門的事項の多くを担います。また、展示の企画や情報を発信する仕事も行います。この業務の部分について、さらに専門性を深めたのがキュレーターの仕事であるといえます。
(引用:TRANS.Biz https://biz.trans-suite.jp/26094


どうやらキュレーターの仕事は“展示や企画を魅力的に情報発信をすること“が肝のようです。


“好き“が呼び寄せたキュレーターというお仕事

キュレーターってどうやってなるんだろう?やっぱり美術を学んできたのかな〜〜と思ったら、鈴木さんは美術大学出身ではないそうです。
学生時代からアートは昔から好きだったけれど、美大出身じゃないとこのような仕事はできないと思っていたとか。そんな鈴木さんはファーストキャリアで時事通信社を選択されます。

けれどこの“好き”という気持ちが自然とアートに関係している人を引き寄せて、「このイベントの情報発信を手伝ってほしい」などと声をかけてもらう機会が生まれたそうです。そこからどんどん広がり、いろいろなお手伝いをしていく中である日、“こっち(アートの世界)に入ってきていいよ”という風に感じるタイミングがあったとか。2011年に独立してから無印良品をはじめとして様々なキュレーションを行なってきたそうです。

▼無印良品「木を見て森を見る!」展

▼なおえつ うみまちアート(2021年夏に開催予定)


「好きなことを欲張っていたら、気が付いたら好きなことができていた」

そんな言葉が印象的でした。



“愛の押し売り“をしているのかもしれない

お話の印象的だった言葉に“愛の押し売り”というキーワードがありました。
キュレーターは自分が好きなもの・素敵だなと思うことを“押し売り”しているのかも、というお話でしたが、すごく大事なことだなと思いました。


「突破するデザイン」(著:ロベルト・ベルガンティ)の本の中で引用されていたAppleのスティーヴン・ウォズニアックさんの以下の言葉を思い出しました。

People will never love a product you do not love.
(引用:Steve Wozniak, founder Apple, 2014)


キュレーターの方が本当にその作品を愛しているからこそ、その作品を多くの人に届けたいと心から願っているからこそ、紡ぎ出される言葉などの表現方法が力を持ち、心に届く伝え方ができるのかな、と思いました。
展示はキュレーターの方の思いや世界観の表れでもあるのかな。



最後に

実はこの大学院の入試の際に提出した研究計画ではアートプロジェクト(特にソーシャルエンゲージドアートプロジェクト)がテーマでした。アートプロジェクトが持つ社会的価値ってなんでしょうか?という質問が学生から出ていて、この問いは私自身も修士課程の2年間で考えていきたい問いだなと思いました。

アートは「問い」であるかもしれない、と鈴木さんはおっしゃっていました。
では「問い」にはどんな社会的価値があるのだろうか。何を持って社会的価値なのだろうか。そんなことを思った講義でした。


2021.5.3   こっぺ

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