公民連携虎の穴、オガール留学
おつかれさまです。コーミン入江智子です。
今日は、日本で最も有名な公民連携事業である、岩手県紫波町のOGAL〈オガール〉プロジェクトについてお話したいと思います。
素敵な光景でしょう?
私が2016年の4月から9ヶ月、子ども3人を連れて紫波町に移り住み、岡崎正信の元で修行をしていた時に出会ったオガール広場での結婚式です。奥に見える建物は、男子日本代表も合宿をするバレーボール練習専用体育館を持つ可愛いビジネスホテル、「オガールベース」です。
〈オガール〉や〈岡崎正信〉で検索をすれば、10.7haもの町有地を公民連携で見事に開発した伝説がいくらでも出てくるので、ここでは私が実際に感じたオガールの公民連携をお伝えしたいと思います。
ちなみに、コーミンはオガール紫波(株)をモデルにしていて、大東市でも同じく市有地の開発を手がけはじめています。しかし、現実はつまづくことばかり。自戒の意味も込め、あらためて紐解くと…
目指す共通のビジョンである「都市と農村の新しい結びつきの創造」「持続的に発展する街」に向かい、
テナント料を支払う各事業オーナーと、それらテナント収入から逆算してハコを建てるオガール紫波=「民」側は、“やりたいこと”を、市中の資金を集めて実現する。金融機関の愛の千本ノックにより、事業計画は自ずと鍛えられる。
地主である紫波町=「公」側は、その実現のために“やらなければならないこと”を、愚直にやる。壊れたテープレコーダーのように幾度も住民や議会に説明し、町の財産をいかに持つべきか、法制度の新しい解釈も厭わず研究する。
これら公と民の全力の戦いの末に生まれたのが〈オガール〉です。とは言え、テナントが埋まっているのは最初だけなのでは?と聞かれることも多いですが、最初の事業棟「オガールプラザ」開業から6年目を迎える今も、入居率は100%です。設計前から入居を決めている事業オーナー達は、それぞれが他にない店づくりに余念がなく、町立図書館も指定管理ではなく直営で、司書達はライブラリー・オブ・ザ・イヤーを受賞するほど働きものでアイデアマン。常に営業第一、ソフト主導を貫くことが肝でもあります。
今では、紫波町民3万4千人を遥かにしのぐ年間100万人の人がエリアにある産直のレジを通過し、ホテルの予約もなかなか取れません。町には雪捨て場でしかなかった町有地から地代と固定資産税が入るようになりました。周辺の地価は上がり、駅向こうの商店街ではリノベーションまちづくりの動きも生まれ、まさに持続的に「おがる=岩手の言葉で〈成長する〉」街に向かっています。
ランドスケープデザインもとても重要な要素です。デザインと施工が素晴らしい芝生広場と、それに開かれて建つ「オガールプラザ」「オガールベース」「オガールセンター」は、どれも豪奢ではないものの美しい外観と、ヒューマンスケールで、良く始末された内部空間を持っています。
補助金を投入したり、PFIで公が“やりたいもの”を建ててしまうと、絶対にこうはならないのです。〈オガール〉という発明品は、視察で惜しげも無く公開しています。行政視察件数ではダントツの全国No.1、皆さんも機会があればぜひ訪れて、エリアで働く人達と会話してみて下さい。きっと公民連携を知る第一歩になると思います。