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第2回THE NEW COOL NOTER賞~1/1講評その2(愛加ちゃん分)

第2回THE NEW COOL NOTER賞へご参加いただいている皆様。
本日までに応募された作品のうち、審査委員の愛加ちゃんに講評をいただいた作品について、掲載させていただきます。

愛加ちゃん講評文(2作品)

恥ずかしながら、わたしは「アポロンとダフネ」の彫像を初めて知りました。凄いですね。彫像なのに、まるで生きているかのような。自分たちが抱えた物語を感じさせる、訴えかけてくる。

せっかくなので、Googleさんにウィキペディア先生の講義を引っ張り出してもらいました。ウルバヌス8世、インノケンティウス10世、彫像の作者•ジャン・ロレンツォ・ベルニーニが活躍した時代の教皇の名前に聞き覚えがあるから、きっと世界史で習ったのでしょう。

でも、ウィキペディア先生は知りません。エロスの放った矢がアポロンとダフネの物語を織り成したように、この、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ作の彫像が織り成した、ささやかだけれど温かくて切ない、そんな物語があることを。

遠い異国の地で、どこか日本を恋しく思いながらも日々を逞しく生きている女性と、日本で初めての子育てに懸命に向き合っている女性。そんなに大仰な話はしなかったのでしょう。しかも、インターネットを介しての繋がり。
でも、「アポロンとダフネ」の彫像が、動かないのに物語を訴えかけてくるように、その人の書く文章には、虚構とは思えない愛とひたむきさが宿っていた。

それなのに…。突然に訪れた別れ。会ったこともないあなたのことが好きでしたと、告げられた思い。今まで書いて来たことは、海に流すとの返事。元々、声も顔も知らない相手だっただけに、あれは夢か幻か。主を失ったブログは、記憶の彼方に追いやられて当然。

でも…。数年後、訪れたブログに残されていたコメント。自分と同じように、その人の思いに励まされていた人がいる。確かに残る、その人との軌跡。
名前も知らない異邦人との物語は、子どもがもう1人増えて、青年になった、そんな事実と変わらない、確かな歴史となって、作者•鶴木マキさんの中で眠っています。

今、歴史という言葉を使いました。そんな大仰なと、思われるかもしれないけれど、わざとです。
わたしたちは、歴史というと自分たちが生きている世界の変遷をイメージする。太古の昔から今まで、世の中はどう動いて来たか。特定の地域に焦点をあてるか、世界というものを輪切りのように広い視点で捉えるか。ものさしは変われど、測られるのは世の中の側。
でも、ほんのちょっと自分を内省してみれば、心の片隅には、消えることなく眠る、ささやかな物語。

メタモルフォーシス。和訳すると、変形、変身。
フランス革命や百年戦争。そんな世界史の華々しい舞台には立てなくても。マリー•アントワネットやジャンヌダルク。そんな有名人にはなれなくても。変わりゆく日々の中で懸命に毎日を生きる自分たちにも、歴史はある。

「エロスの矢のかけら」と書いて、「歴史」と読みたくなるような、素敵な作品でした。


言霊、という言葉があるように、言葉に心は宿るものだと思う。古今東西、その時代、その地域に伝わるおまじない。短い言葉、ちょっとした仕草に宿るのは、きっと人の優しさ温かさ。

でも、わたしが知っているのは、「ちちんぷいぷい、痛いの痛いの、飛んでけ!」ぐらい。調べたら、地元のおまじないもあるかもしれないけれど、調べないと分からない。知らない。だから、心温まるエピソードとともに綴られたおまじないの数々が、何とも優しく心に響く。

柔らかい手の温かさとともに残る、薬指で軟膏を塗るおまじない。沖縄らしい響きの、「まぶやー、まぶやー」。「くすけー」は、音が面白くて、なんだか笑ってしまった。
わたしには、修学旅行で沖縄に行って、沖縄の綺麗な海に惚れ込んで、迷わず沖縄に進学、そのまま就職して、結婚した先輩がいる。
でも、綺麗なのはきっと海だけではないんだろうなと、そんな土着の文化こそ、美しいと思えてくる。

今より、もっとずっと原始的だった縄文時代の土偶。近代に近づいてはいるけれど、まだ明治維新も世界大戦も知らない、江戸時代のアマビエ。文明も科学も進歩して、グッと便利な世の中となった今日でも、古臭いなと切り捨てることができない、どこか共感できるものたち。それは、その裏にあるものが、身も心も安らかでいたい、安らかでいてほしいとの、祈りだからなんだろうな、と。

実家で年越しをし、年明けに並べられたお節を前にして、母に数の子食べときよと言われ…。数の子=子孫繁栄、えっと、孫が欲しいということですか?結婚しろと、暗に仄めかしてる?と邪推をしてしまった自分を戒めた、人の温かさの宿る、優しい作品でした。

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第2回THE NEW COOL NOTER賞への、みなさまのエントリーをこころからお待ちしております。

■募集期間  ―― 令和2年12月1日~令和3年1月5日まで
■応募方法

#第2回THE_NEW_COOL_NOTER賞 」のハッシュタグをつけてください。
特定の部門へのエントリを希望する場合は、さらに「 #第2回THE_NEW_COOL_NOTER賞 ○○部門」を付けてくだされば、各審査委員が拝見します(必須ではありません)。
※希望する場合は複数の部門への応募が可能です。

また、お一人様何作品応募いただいても構いませんが、授賞対象は1作品までとさせていただきます。
なお、過去作品でも応募可能です。その場合も、同様にハッシュタグをつけていただけるだけでエントリとなります。

よろしくお願いいたします。

参加者同士の交流の場所を設けてございます。
お気軽にご参加ください。

*なお講評は分担制にしているため、必ずしも応募順に講評結果が発表されるわけではございません。よろしくお願いいたします。

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