見出し画像

第2回THE NEW COOL NOTER賞~1/8講評その2(愛加ちゃん分)

第2回THE NEW COOL NOTER賞へご参加いただいている皆様。
本日までに応募された作品のうち、審査委員の愛加ちゃんに講評をいただいた作品について、掲載させていただきます。

愛加ちゃん講評文

人には、原点とも言うべき、心の故郷があると思う。その人がその人であることの根本を支える、心の原風景とでも言えるもの。
わたしにとっては、未だ実物を見たことがない、写真や動画でしか知らない、ロンドン塔がそれ。物書きとしてのわたし、すなわち愛加が生まれたきっかけは、様々な物語を秘めた、かの建物にあると思っているけれど。
きっと、いとさんにとってのヘイスティングスは、そんな原点とも言うべき場所なのではないか。そんな風に感じました。

まだ10代のいとさんが、遠足で訪ねたその場所。ちくちく刺さる青い芝生、穏やかに凪いだ海、海鳥の鳴き声。
歴史を題材に物語を書けたらいいなぁ。胸の奥で秘めていた憧れが、言葉として語られた、イングランドのはじまりの丘。
無言のまま思い描いた未来は、きっと淡いパステルカラーのような優しい色をしていたのだと思う。

しかし、大人になるにつれて知った現実。いいことばかり起きて、とんとん拍子に全てが進むなんて、あり得なくて。思い描いたのとは違う日々を生きていた。
でも、はじまりの丘の記憶は色褪せない。押し寄せる現実にどんなに疲れていても、消えてなくなることなんてない。

脳裏に蘇った光景を求めて、いざ、かの場所へ。

悲しいかな、ここでも運命はいたずらをする。冷たい風と戦いながらやっとたどり着いた丘の上は、はじまりの丘ではなかった。
あの場所に、行きたかったな。そんな切なさを味わいながらも、いとさんの心の目には、初めてヘイスティングスの地を踏んだウィリアム一世が映っていた。

結果としてあの丘は、イングランドのはじまりの丘となったけれど、未来のことなど分からない。最悪の結果をも想像したかもしれない、ウィリアム一世の姿が浮かんだ時、いとさんは思う。

たとえ今立つ場所があの丘でなくても、心をはせればリアルに蘇る、青い芝生の香り。色褪せない記憶とともに、わたしは、はじめる。
いつでも、どこでも、何度でも。

きっとこれまで幾度となく、反芻したであろうはじまりの丘。
そしていとさんは、いとさんにしか書けない優しいお話を書く、物書きさんになられました。

ねぇ、いとさん、物書きさんになったんだよ。
あの丘で一緒に未来を夢見た研修生にそう伝えたくなる、心温まる作品でした。

=============================

第2回THE NEW COOL NOTER賞の応募期間は終了しました。
みなさま、たくさんの応募、ほんとうにありがとうございました。

引き続き、応募作品への講評と、授賞に向けた審査をお楽しみください。

よろしくお願いいたします。

参加者同士の交流の場所を設けてございます。
お気軽にご参加ください。

*なお講評は分担制にしているため、必ずしも応募順に講評結果が発表されるわけではございません。よろしくお願いいたします。


画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?