【コラム】アクセサリーにまつわる、私のパリばなし
パリに来ると必ずアクセサリーを買うことが私の目的だ。そしてパリでアクセサリーと言えば、マレ地区のブティックを中心に周ることが多かったのだが、去年訪れたパリ旅行では、マレ地区ではなく、街の中のちょっとしたマルシェでのお買い物だった。その1つが優しい色をしたレザーのバングル。
その日は日曜日、朝から小雨が降っていたが、ホテルの前のメトロの高架下ではマルシェが開催されていた。私の住んでいる国では見られないような可愛いお花、いい匂いのパン、新鮮な魚、そしてアフリカンなドレスなど、様々なものが所狭しと並んでいる。
アクセサリー、アクセサリー・・と探していくと、あったあった。アクセサリーのワゴンも小さく出ていた。ヴィンテージものやら、どこかアフリカか東欧で作られたチープシックなアクセサリーやら、全てごっちゃになり破格な値段で売られている。私はもう夢中になって、アクセサリーを見ていた。
このバングルを見つけた時、ある高齢のマダムに腕をつつかれた。
マダム「ねぇ、マドモアゼル、このイヤリング、私に似合うかしら?」
私「(マドモアゼルって年齢ではないが)そうですね、マダム。そちらよりこちらの方がお似合いですよ。」
と、私は少し暖色系のものをおすすめした。きっとマダムのグレイヘアと白い肌に、少し明るめの色を混ぜると顔がきれいに見える気がして。
マダム「ん-、でもね、私、こっちの方がいいと思うんだけど、どう思う?」
私「(私に聞く前に答えがでているのでは・・)そうですね、私はこちらがいいと思いますが、マダムが本当に好きなものがいいと思いますよ。こちらだとどんな服に合わせようとお考えですか?」
マダム「冬は全身白い服で身をまといたいのよねぇ。だからこれがいいと思うのよね~ほほほ」
マダムの「ほほほ~」で、そのワゴンにいた人たちが、皆微笑んだ。なんて可愛らしい方なのだろう!私とその見知らぬマダムは、こんなやり取りを15分くらい真剣に続けていた。私は片手に自分の選んだバングルを持ちながらだったのだが。マダムの選んだイヤリングは実は2ユーロ。それでも本当に真剣に悩む彼女は、別に雑誌の中に出てくる優雅なマダムではなく、いわゆる本当に普通のやさしそうな(70代後半?)おばあさんだった。
「Au Revoir(さようなら)」
マダムは、結局その2ユーロのイヤリングを購入し、早速自分の耳につけて私に手を振って行ってしまった。翻ったレインコートから見えた足はハイヒールだった。
「あぁ、ここは本当にパリだな・・」
素敵だった。よくネットや雑誌などではパリの年齢を重ねた素敵な女性の記事があるけど、本当にその通り。どんなに年齢を重ねても女性らしさを忘れてはいない。こういうマダムを見ると、女性を楽しむのが本当に嬉しく思えてくる。そしてこういう方に出会えると、女性って本当に嬉しい希望をもらえる。
私は、このバングルを比較的気分が上がらない日につけることが多い。それは腕にはめるとき、マダムとやり取りしたこと、マダムの笑い声で皆が笑顔になったこと、そして去り際の彼女のハイヒール、すべてよみがえってきて、思わず微笑んでしまう。そんな小さな思い出を腕にはめて、外に出ると目に入ってくる近所のブーゲンビリアや、青い空が、いつも以上にきれいにみえるのだ。
そんな私の今日のコーディネートは、バングルを中心に考えたファッションコーディネート。白いTシャツに、ジルサンダーの白いコットンライダースジャケット、スモーキーピンクのパンツ。ジャケットの袖をまくるのがポイント。ライダースジャケットは、オフィスの冷房の冷えから体を守るため。そうなると、基本白いTシャツに腕をきちんと出すというスタイルだから、バングルがポイントになる。オフィスではPCをタイプする時にバングルが視界に入り、忙しい作業中にちょっとしたモチベーションアップにもなる。
アクセサリーってデザインだけではない、きっとこんな小さな思い出も今日のファッションになるのだ。
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