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ゲルマニウムの雨

昨日、隣町にいる友人に会いに行った。

開催予定の、まちおこしアートイベントの打合せの為に車を走らせたのだ。
そのオープニングとなるイベントは、私がどうしてもやりたいと、仲間達を無理やり誘ったものなのだが、それ以外の主要部分は、これから会いに行くからと、都合も訊かずに向かっている先の彼が企画したものだ。
全体として会期が長く、イベントは多岐に亘り、おのずと巻き込む関係先も広くなる。
結果的に予算が厳しくなる。
さてどうしようか、といった相談なのだ。

彼は彼で、今年で三回目となる、地元出身スーパーアーティストの展示会を併行して企画している。

会うと彼は、私の話す内容は大体察しがついているので、いつもと違ってちょっと口が重い。
ちょうどお昼に掛かる頃で、そばでも食べに行こうと、彼のプジョーの助手席に座った。(先に勝手に)
天気予報は外れだ、雨が降りだした。
まだまだ暑いのに、気分も滅入る。
運転しながら、ワイパーの「キーコキーコ」というリズムに誘われるように、彼が話し始めた。
「ン~、割と心配性なんだなぁ」
と私のことを言う。
(というのは、普段は昼行灯で通っているし、一見いつでもヘラヘラと危機感がない。これは小学校の頃からよく言われていたことだ)

そう言いながら、彼は自分の方の企画での心配事が晴れて、ようやく動き始めたんだと話し出した。
(どっちもどっちだ)
信頼している実行責任者と担当者間で、「ようやく人の絆が生まれた。これでもう大丈夫。後は何が起こってもブレることなく前に進める」と話す。

そして最後に、
「これでダメなら、、、人生やめるしかない」
と、雨の滴のようにポツリと言った。

話すことはもうなかった。
私は黙ってそばを食べる。
何を話に来たのか、忘れてしまったかのように。

帰り道、途中のコンビニ・パーキングで昼寝をした。
グッスリと。
15分のつもりが30分も眠った。
打合せで待っている仲間から電話が入る。
スッキリ目覚めて、灰白色に煙る国道を仲間達の待つ会議場へと急いだ。

”常に命を懸けて取り組みたいし、その時がいちばん幸せだ”
と言って本当に駆け抜けた、一ノ瀬泰造の言葉を思い出す。
”何”のため? なんて事はないし、もちろん自分の為なんかじゃない。
あるとしたら、”創り出す”ためだ。
それが何かは知らない。

わたしは、今がいちばん幸せなんだと思う。
泣き笑いの連続なのだけれど、仲間達とこうして活動している時が、ほんとうに自分で自分の生を生きているんだって思えるから。

こころから感謝している。
友と、私のこの世の使命に。
(ちょっとは、手加減してくれないかなと祈りつつ) 

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