見出し画像

AIによって地震予測の精度は上がるのか?〜AIと人間の関係について〜

目安時間:5~7分(約4000文字)
最終更新日:2024年5月18日

本記事の目的

2024年の元旦を襲った「令和6年能登半島地震」や2011年に東北や関東を襲った、国内では最大規模、世界でも未曾有の規模となった「東北地方太平洋沖地震」など、日本は、大規模かつ頻繁に地震が起きる地質的特徴のある国となっております。
日本において、地震の予測・予知の精度が上がることは、被害を低減することに繋がります。
そんな地震の予測・予知はAIの発達によって向上するのか?どのように変わっていくのか?を知ること。
そして、私たちはどのようにAIと対峙すれば良いのか?を考えるきっかけになればと思い本記事を作成いたします。


1.地震予測とは?

地震予測とは、地震の発生時期、場所、規模を事前に予測する技術や方法を指します。
地震予測には、「短期予測」と「長期予測」の2種類があり、それぞれ異なる方法とデータに基づいて行われます。

短期予測は、数時間から数日以内に発生する地震を予測することを目指します。この予測は、地震の前兆現象やリアルタイムの観測データに基づいて行われます。

長期予測は、数年から数十年にわたる期間における地震発生の確率を予測することを目指します。この予測は、歴史的な地震データや地質学的な研究に基づいて行われます。


2.地震予測の過去(歴史)

◼︎日本の地震学

日本は地震が頻発する地域であり、古くから地震に対する研究が行われてきました。
江戸時代には、貝原益軒(かいばらえきけん)(注1)が地震についての観察を記録し、
近代では寺田寅彦や今村明恒といった地震学者が地震研究を推進しました。1970年代には、東海地震の予知に向けた研究が本格化し、地震予知連絡会が設立されました。しかし、予知の難しさから「直前予測」よりも「長期予測」や「防災対策」の重要性が強調されるようになりました。

(注1)貝原益軒(かいばらえきけん):
1630年に福岡県福岡市に生まれ、幼少期より神童と言われるほど頭脳明晰だったとされる。薬学、地学、歴史などさまざまな学問に精通し、”日本のアリストテレス”とも呼ばれた。86歳と当時としては非常に長生きをし、晩年まで著書を生み出している。

◼︎海外の地震学

海外でも地震予測の研究は盛んに行われてきました。特に、アメリカのカリフォルニア州やイタリア、中国などの地震多発地域では、地震予測に関するさまざまな試みが行われています。1970年代に中国では、海城地震を事前に予測し被害を軽減した成功例がありますが、その後の予測は成功していないケースが多く、地震予測の困難さが浮き彫りとなっています。


3.地震予測の現在

◼︎地震予測の現在の仕組み

現在の地震予測は、観測データの収集と解析に基づいています。
地震計やGPS、人工衛星などから得られるデータをリアルタイムで解析し、地殻の動きや地震前兆現象を監視しています。また、地震発生のメカニズムを解明するためのシミュレーションやモデリングも行われています。しかし、短期的な予測の精度は依然として低く、地震発生の正確な日時を予測することは現在も困難です。

データ送信のイメージ


◼︎AIによって進歩が見込まれていることは?

AI(人工知能)は、地震予測の分野で新たな可能性を提供しています。
膨大な観測データを高速かつ効率的に解析することで、地震前兆現象を検出する精度が向上しつつあります。
また、AIは過去の地震データを基にしたパターン認識や機械学習を通じて、地震発生の予兆をより早期に検出する能力を持っています。例えば、ディープラーニングを活用して地震波の解析や異常検知を行う研究が進められています。


4.地震予測の未来

地震予測においてAI(人工知能)は、多くの期待と可能性を秘めています。以降は、AIによって進歩が予想される地震予測を具体的なポイントごとに記します。

◼︎期待ポイント1:大量データの迅速な解析

AIはビッグデータの処理に非常に適しており、地震計、GPS、人工衛星、その他のセンサーから収集される膨大なデータをリアルタイムで解析できます。これにより、地震発生の前兆となる微細な変化を迅速に検出することが可能になります。従来の手法では見落とされがちな異常なパターンやトレンドを、AIは高い精度で識別することができます。

◼︎期待ポイント2:パターン認識と異常検知

ディープラーニングやニューラルネットワークといったAI技術は、複雑なデータパターンの認識に優れています。これにより、過去の地震発生前に観測された特定の前兆現象を学習し、将来の地震の予兆を検出する能力が向上します。例えば、地震波形データや地殻変動データから、地震発生前に特有の信号を捉えることができるようになります。

◼︎期待ポイント3:短期予測の精度向上

AIは、リアルタイムデータの解析を通じて、地震発生直前の微細な変動を検知することが可能です。例えば、電磁気異常、地下水位の変動、小規模地震の発生パターンなど、従来の手法では見逃されがちな情報をAIが迅速に処理・解析し、短期的な地震予測の精度を向上させます。これにより、数時間から数日の猶予を持って警報を発することが可能になるかもしれません。

◼︎期待ポイント4:シミュレーションの高度化

AIを活用することで、地殻内の応力分布やプレート運動のシミュレーションがより精密に行えるようになります。これにより、地震発生のメカニズムをより深く理解し、将来の地震発生リスクを予測するモデルを改善することが可能です。高度なシミュレーションは、地震発生のプロセスを解明し、長期的な地震予測の精度向上にも寄与します。

◼︎期待ポイント5:継続的な学習と改善

AIの強みは、継続的にデータを学習し、予測モデルを更新できる点にあります。新たな地震データや前兆現象が観測されるたびに、AIモデルはそれらを取り込み、予測精度を向上させることができます。これにより、時間が経つにつれて予測精度が向上し、より信頼性の高い地震予測が可能となります。

◼︎AIを活用した地震予測の未来

前述の通り、AIは地震予測の分野で大きな進展をもたらす可能性があります。大量データの迅速な解析、パターン認識と異常検知、短期予測の精度向上、シミュレーションの高度化、そして継続的な学習と改善といった点で、AIは地震予測の新たな可能性を開拓しています。
これらの技術の進歩により、地震発生前に警報を発することで被害を軽減し、人命を守ることが期待されています。

5.私たちはどのようにAIと対峙すれば良いのか?

◼︎AIを使用した地震予測の障壁は人間?

 AIを使用した地震予測の障壁には、技術的にも進歩が必要な点がいくつかありますが、私が考える一番の障壁は人間だと考えています。

AIのアルゴリズムは複雑であり、人間の理解の範疇を越える予測や判断がされることが想定されます。
また、失敗が許容されづらくなっている世の中において、AIが予測を外したり、必要以上の不安を煽った場合、その責任をどこに向ければ良いのかといった問題も発生する可能性があります。

AIを用いた地震予測が浸透するには、人間サイドが、
・AIを用いたテクノロジーをどのように許容するか
・AIが導き出した答えをどう捉え、どのように活用するか
・AIが人間の判断のプロセスに正しく貢献できる仕組みをどう作るか
つまり、人間がいかにAIを理解し信頼するかだと考えています。

◼︎AIとどのように対峙するか?

AIには、法則性を見つける能力や、イレギュラーをいち早く気づける能力など、得意な面が多く存在しています。
一方、前述の通り、発展途上のAIにおいては、今後予測やアラートが外れることもあるでしょう。。。

しかし、重要なのは、当たった / 外れたの、結果のみで評価をするのではなく、予測やアラートを出すに至ったプロセスに焦点を当てることだと考えています。

AIの予測結果とプロセスをどのように捉え、社会に伝え、行動に反映させるか。それには、我々の人間力が試されているように感じています。
AIと共に人間も社会単位で認識やスタンスを進化させることが重要です。

個々人がそのようなスタンスでAIと向き合い、ゆくゆくは社会単位で変わっていくことができれば、
AIは私たちが気づいていなかったり、パターン化できていないものを捉え、新たな視点や知見へと導いてくれるのではないかと信じています。


あとがき

まず、最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
至らない点が多々あるかと思いますが、ご容赦いただけますと幸いです。

本記事では、地震予測にフォーカスし、過去〜現在〜未来について、私なりの見解を記載させていただきました。
地震学や地質学は、構造的にも時間的にも、人間からみると非常にマクロな視点が必要な難易度の高い学問だと感じました。
だからこそ、人間スケールでは見つけられない、予兆やパターンを発見するためにAIとの相性が良い分野だと捉えています。

今後も地震予測についてはウォッチを続けたいと考えております。

※注意書き
個人的な解釈と事実はできる限り判別できるように記載するよう心がけました。しかし、一人の人間が書いていることもあり、偏った情報や解釈になってしまっていることもあると思います。
私の記事だけを信じるのではなく、その他情報や様々な著者ならではの見解に触れていただき、ご自身の考えへと昇華して頂けたら幸いです。

【主な更新履歴】
2024/5/18:初稿

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?