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「一番好きな○○(ぐちゃぐちゃ)」

『あなたって「一番好き」って言わないよね。』

突然、恋人にそう言われたわたしは何も言えず、
持てない 間 が流れる。
こういう時、わたしは一時停止を食らた自分の表情を客観視してしまう。
瞳孔がきゅっとなって、唇が数ミリひらいて、口角がちょっと上がる。

そうしてその口のまま、「え、なにそれ」とようやく発して
再生ボタン。



「一番好き」って言えない話。?

何気ない会話の流れで、「一番好きなYoutuberってだれ?」みたいに聞かれて、私は「いや、一番ではないけど」と応えた。

そうしてあのセリフ。
『「一番好き」って言わないよね。』

詳しく聞くと、「好きな食べ物とか好きな音楽とか、あなたって決まった回答を用意しているでしょう。質問者に合わせたり。あと聞いてないのにランキングで答えたり。」とのこと。

そんな指摘をされたのは初めてで、とてもびっくりしたけれど、
このドキリが初めてじゃないことを私は知っている。

恋人は続ける。
「悪いと思ってるわけじゃない。けど、数か月、一年先の自分に保険かけてるんだろうなあと思う。」

ほんとうにその通りだと思った。そうしてこの時思い出したこと。

「なんにでも興味があります、楽しい、好きですってお前は言うけど、
それは何にも本気になれない冷めたやつってことだよ。」


くそ嫌いな奴に言われた言葉、最近よく思い出してしまって苦しい。

「てめーが一つのことに固執しちゃっておのぼせなだけだろ」って今なら言い返してやりたいけど、結局一つのことに夢中になって、努力している人が立派で、わたしはフワフワしていて、そこには到底敵わないやつなのかな。

たまたまあなたが一番好きって言えるものに出会えただけじゃん。ずるいじゃん。一番好きになることと、そのものが存在して私の前に現れるのって、どっちが先なんですか?
わたしを魅了できないやつが悪い!みたいな不誠実さが私の中にあるのかなあ。

でもさ、だってさ、私が言う一番ってすごく嘘くさいんだもん。
恋人が言う一番っていうのはとても誠実なものに感じるのに。

つまるところ、沢山の何かを犠牲にするほど、自分の身を粉にするほど好きって、めっちゃ怖い。だから「一番」とか言えない。

恋人のことはとても好きで、優しく冷静な指摘をくれる存在としてかけがえのないものだと思う。

「一番好きな人は?って聞かれたら、あなたっていうことにしている。」
そう言ってこの話は終わり。



私は「不誠実」を表現することでしか、自分が誠実である証明ができないのかもしれない。
私は誠実さを示す手段として、自分の「不誠実さをさらけ出すこと」しか持ち合わせていないのかもしれない。






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