World Cooking Recipe Project ~食を通して世界を知ろう~ @鎌倉学園
鎌倉学園中学校・高等学校は鎌倉市にある中高一貫の男子校です。新型コロナウイルス感染症拡大の影響をうけ、海外留学などリアルな国際交流の機会が減る中でも、英語科の先生方が中心となり「食を通して世界を知ろう!」という授業が行われました。
1. この授業の目的
「食を通して外国の人や暮らしを理解する(理解できることを実感する)」
この授業は、鎌倉学園中学校の総合の授業の一環として行われたもので、外国の人の暮らしや仕事を身近な食・料理から感じてみようという授業です。
英語科の飯塚直輝先生が中心となって企画されたものに、クックパッドがサポートを行いました。
2. 参加者について
中学2年生、4クラス約170名の男子生徒が参加しました。
3. 学習の流れ
この授業は、以下の流れで行われました。
事前学習
↓
夏休みの課題「世界の料理を作ろう」
↓
特別授業「料理から世界を探検する」
以下、実施した内容をご紹介します。
4. 実施内容
4-1. 事前学習
夏休みに入る前に、一本の動画を視聴。クリスマスのシーンを扱ったイギリスのテレビCMです。
この動画は、イギリスでの伝統的なケーキ「クリスマス・プディング」がキーとなっています。それを知っていれば楽しめますが、もちろん日本に住む私達は知りません。
世界にはいろんな食べ物があって、その食べ物のことを知ることで、その国の文化を知ることができることに気がついてもらうことをこの事前学習の目的としています。
4-2. 夏休みの課題「世界の料理を作ろう」
世界の食べ物に少し興味が湧いたところで、夏休みの宿題では、実際に世界の国の料理を作ってレシピと感想を英語でまとめてもらいます。、単に作り方を知るだけでなく、その国や人について学びを広げよう、というのがこの課題のねらいでした。担当する国は、一人ひとりにランダムで割り当てられます。
4-3. 特別授業
そして、夏休み明け。170人それぞれの、世界各国「オリジナルレシピ」が集まりました。
ひとつひとつのレシピには、書き方も内容も、気づきがたくさん散りばめられています。そこでいくつかのレシピを取り上げて各人の工夫と気づきを紹介し、さらに発展させるのが、夏休み明けの特別授業でした。クックパッド社員で世界各地の家庭を訪れ一緒に料理をしている岡根谷実里が壇上に立ち、生徒さんの書いたいくつかのレシピについて、魅力的な点を紹介していきます。
Nくんの担当国はエチオピア。ワットという肉や野菜を煮込んだ料理を作りました。盛り付け写真の食材の色と国旗の色を対応させていて、料理から国を伝えようとする工夫がうかがえます。
マレーシアの麺料理「ラクサ」を作ったOくんは、甘さと酸っぱさの組み合わせが特徴的なのかも?と発見しました。
インドネシアのナシゴレンは、直訳すると炒め飯。Iくんは「作り方も似ているし、中国の炒飯(チャーハン)と同じだ!」という発見をしました。
「この課題の目的は、食を通して未知の世界に興味を持つことです」と英語科の飯塚先生は語ります。聞けば今回の課題は、かつてないほどの高提出率だったそう。ひとりひとり違う担当国が割り振られるという周りと比べない安心感、その国の中で食べ物は好きに選べるという適度な自由度が、意欲と創造性を刺激したようです。
お互いのオリジナルレシピを見た次は、岡根谷が、実際に南米コロンビアの家庭で出会ったとうもろこし料理を紹介します。「実際食べて味わうと、疑問が湧いてきて、それを調べてみると発見がある。なんで?は探検の始まりなんですよ」
ここで改めて各自のレシピを見返してみると、そこには「おいしかった」「まずかった」といった感想が書かれています。言葉では単純なものですが、五感で感じたものはとても貴重な探究の出発点です。そこで次は「なぜ?」を見つけて深掘りしてみようというセッションです。
テーブルに、世界の調味料がのったクラッカー5種類が用意されます。代表者が試食して食レポし、入っている材料を当てるのです。
「赤いから辛いと思ったのに甘い!」「ぜったい栗の味なのに、これココナッツなの!?」「納豆みたいな匂いがする...なんでこんなまずいものを食べるんだ」。試食する代表者の反応とリアクションに大盛り上がり。おいしかった、おいしくなかったという味の体験が探究心を掻き立てます。
ひとしきり盛り上がった後、最後は落ち着いて、もう一度自分のレシピに立ち戻って疑問探し。おいしいものはもちろん良いですが、「おいしくない」という体験からこそ、たくさんの疑問が出てきていました。
「ネパールのモモは、なぜ肉にガーリックを入れるの?塩胡椒でよくない?」
「エジプトのコシャリは、なぜパスタとお米の炭水化物二つを混ぜるの?」
「イギリスのフィッシュアンドチップスは、なぜ魚と芋を一緒に食べるの?」
「トンガのロイフェケは、なぜココナッツミルクにタコという日本ではやらない合わせ方をするの?」
さまざまな「なぜ?」が出てきました。
5. 成果・感想
「自分の思っている”普通”が世界の人たちの”普通”ではないと気づいた。おいしいと思う味も同じじゃないから、もっと調べてみたい」
「料理(食べ物)は他の国の人と繋がれるものだということが伝わりました」
「世界には様々な食があり、日本とは全然違う味や材料などがあり、世界を見て回ってみたいです。」
「自分が作った料理は正直おいしくなかったし、見慣れていないからか別の料理も美味しそうに見えなかった。でもそれは自分たちが慣れていないだけで外国から日本料理もそう思われているのかもと考えると、逆に興味深かった」
上記は、生徒さんの感想です。ひとりひとり、料理を通して世界が広がる経験があったようです。
* * *
今回の授業は、「英語を通して生徒の心を揺さぶり世界を広げたい」という学校側の思いと、「料理を通して遠く感じがちな社会のことを自分ごと化し、より良い方向へと向かう未来の作り手を育てたい」というクックパッドの思いが重なって実現したものでした。
先生の発案から始まったことで、より生徒さん一人ひとりと深く関わり、普段の生活や学習につながる学びを作ることができました。飯塚先生、鎌倉学園さん、ありがとうございました。
クックパッドでは、講演や出張授業の他に、今回のように先生方とゼロから学びを作ることにも取り組んでいます(詳しくはこちら)。
食・料理の力を使った学び作りに関心のある先生、ご連絡ください。