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料理が苦手な男性に向けた「図解レシピ」はこうして誕生しました。

偶然生まれた図解レシピ

それは料理教室の当日、準備をしている時のことでした。その日に作ってもらうメニューは生姜焼き。その手順を事前にホワイトボードに書き出しておくことにしました。
時間があまりない中で、どのような順番で作業をしてもらうか。手順を文字と矢印で書いていると、なんだかプロジェクトで使う工程表のように見えてきました。それを見て、スタッフの誰かが言いました。
「なんか、レシピの図解みたい」
これが「図解レシピ」の原型が生まれた瞬間でした。

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私たちは、クックパッドのプロジェクトとして「男子料理プロジェクト」を立ちあげました。元々クックパッドのミッションは「毎日の料理を楽しみにする」です。
おかげさまで無数のレシピが投稿される料理サイトとなりました。では、みんな果たして料理を楽しんでいるのだろうか。さまざまなユーザー調査をしていると、忙しい日常の中で、食事の支度が苦痛になっている女性も少なくないことがわかってきました。
今や共働き世帯が6割となっている中で、家事の分担が進んでいるところもあれば、それでも料理は女性の役割となっているところが多いようです。もはや男性が仕事をし、女性が家事をするという時代ではない。であれば、料理ができる男性が増えれば、女性の働き方も柔軟になり、より誰もが仕事をしやすい社会になるのではないか。

こんな目的で「男子料理プロジェクト」は立ち上がりました。そして、まずは料理に苦手意識のある人の実態を知ろうと、自称「料理ができない男性」を集め、料理教室を開催することにしました。冒頭の一コマは、その時の様子です。

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図解レシピってどんなの?

料理教室から生まれたのが、この「図解レシピ」です。
世の中には無数の数のレシピがありますが、私たちの「図解レシピ」は以下のような条件を満たすものとして作りました。

・初心者でも平日の夜、30分で作れる夕食のレシピ。
・1品ではなく、できれば2品以上を同時に作るためのレシピ。
・パートナーのいる男性を想定し、基本は2人前。
・時間を優先するため、手の込んだ工程を入れない。
・時間は優先するけど、見た目もよく、美味しいと言ってもらえるものに。

このレシピは、料理に苦手意識のある男性でも、図解に従って作れば美味しい夕食ができる。そして、この図解レシピに沿って、一つひとつ料理をつくることで、料理に対する苦手意識がなくなり、スキルも上達するようなものを目指しています。そのため、図解レシピは3つの難易度を設定し、現在までに約30種類のメニューが完成しました。

具体的には次のようになっています。

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大きな特徴は、それぞれの料理の手順ではなく、2品一緒に作る際の手順が一つになっていることです。左側には、それぞれの作業にかかる時間の目安を書いていますが、これによって、あとどのくらいの時間で完成するかもわかります。

試行錯誤で出来上がりました。

実際の図解レシピ作りは試行錯誤でした。ここには文字をできるだけ入れないように工夫しアイコンを多用していますが、多すぎると伝わりません。また、丁寧にコツを紹介しようと知ればするほど複雑になっていきます。私たちはキッチンの片隅に図解レシピを見せれるように、1枚で見せることにこだわりました。シンプルにするために、言いたいことも優先順位を決めて削らなければいけません。

一旦出来上がった図解レシピはまずは、あまり料理が上手でない男性スタッフが自宅で試してみました。ところが、実際にやってみると手順が抜けているところがあったり、1時間近くかかってしまったりするなど問題が山積みです。これらを数回繰り返し、昨年秋には、Facebookでモニターの方を募り、2週間にわたって私たちが作った図解レシピを試してもらいました。

ここでも多くの課題が見つかりましたが、一方で、一定の手応えを得ることができました。
モニターの方々からは次のような感想をいただきました。

・「30分でサクッと作れるようになった。しかもシンプルで美味しい。妻も喜んでくれて、より仲良くなった気がする。妻が日頃、何が大変なのかがよくわかった。」(37歳、NPO法人、経営者)
・「図解レシピは料理の手順が時系列にしかも一覧で理解できるので、とてもわかりやすい」(29歳、ベンチャーIT企業、エンジニア)
・「外食が減った。自分が料理ができるようになったので、妻がゆっくり時間を過ごしたいという時も外食ではなく、自宅で食べるという選択肢が広がった」(38歳、広告代理店勤務、マーケター)
・「図解レシピを見ながら自分で3品作った時は我ながらすごいと思った。料理はまるでプロジェクトマネジメントのような工程だと思った。図解レシピはその工程が一覧で理解できるのでとても良かった」(38歳、証券会社勤務、営業)
・「やってみると『自分でもできるんだ』というのがわかったのが一番大きい。レシピ通りにやれば、自分でも美味しいご飯が作れることが自信になった。また普段妻がやっていることに感謝するようになった」(31歳、病院勤務、SE)
・「集中的にやったら、日常的に料理を作るとはこういうことなんだと理解できたし、料理の手順がわかるようになってくる。妻が楽をできるし、自分も料理が完成した時に予想以上の嬉しさがあった。料理は面倒だとそれまで思っていたが、楽しいというのがわかった」(32歳、ITメディア勤務、編集)

このようなプロセスを経て現在でき上がった図解レシピはなんとバージョン22! どうにか、皆さんにも公開できるものになりました。


実は偶然ではなかった。

しかし、実は図解レシピは偶然生まれたようで偶然ではなかったのです。
料理男子プロジェクトのメンバーでもあり、料理教室の講師を務めたクックパッドの小竹貴子氏は、料理を教える上で全体の見通しを立てて見せるということを心がけていました。

というのも、海外で小児医療に携わる医者と話をしたときに、「子どもたちに料理をさせることは機能回復に非常に重要である。ただ知的障害をもつ子どもたちが料理を覚えるときにパニックにならないよう、先にゴールやプロセスをひと目でわかるような”見通し”をたててあげることで、子どもたちが穏やかな気持ちで上手に料理ができる」と伺ったことがあったそうです。

ただ、まさか今回の料理男子向けのプロジェクトでそのメソッドが活きてくるなんて、思いがけない産物だったのです。

もしかしたら、この図解レシピは料理初心者男性のみならず、子どもたちや知的障害を持つ方々にも役に立てるかもしれません。是非、図解レシピが役にたてることがあれば教えてください。

#図解レシピチャレンジ

さて、今後このnoteで図解レシピを公開していきますが、図解レシピを試して料理の楽しさを感じてもらい、また苦手意識が和らいだり、自ら料理をつくってみようという人が増えたら嬉しいと思っています。同時に、皆さんのフィードバックをいただきながら、この図解レシピもさらに改良していきたいと思っています。

まずは、今回ご紹介した「しょうが焼き、味噌汁」の図解レシピを使ってみていただき、使い心地の感想をいただけたら嬉しいです。
こちらからダウンロードできます。

▼PDFデータhttps://drive.google.com/file/d/10S6WdnYrQVuzbv_2f_k0Bwb1R5t6gJbB/view?usp=sharing




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