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料理本トレンド観察

あっという間に季節は夏になってしまいました。
コロナ禍の自粛のせいばかりではなく、今年秋に発売予定の料理本に取り掛かっていましたので、すっかりnoteはご無沙汰していました。

コロナで発売日延期や合併号など、今までならあり得ない状況が相次いだ出版界ですが、巣ごもり人たちが「時間があるから」と取り組んだのは、やはり料理。
どんな状況だろうが食べなきゃいけないわけで、こんな時は本を買ってみようと思った人が多かったのか、料理本の世界では大ヒット作が相次ぎました。

ヘッダー画像に並べたのは、COOKBOOK LAB.のSNSで、巣ごもり真っ盛りの4月から5月にかけて紹介した本たち。
  Instagram  @cookbooklab_love
  Facebookページ https://www.facebook.com/ryourinohonlab/
  Twitter  @cookbook_lab
(本家はどうしたって話はまたあらためてw 更新中 )

すいません、リュウジさん の本だけ最新刊ではなく昨年11月に発売されたもの
最新刊は、4月16日発売の『失敗ゼロ!秒で作れる奇跡のウマさ!1人分のレンジ飯革命』(KADOKAWA) 。こちらは今日の時点でアマゾン総合ランキングで15位ですよ、すごい勢いです。きっと家ごはんもコンビニ弁当をレンチンするぐらいの勢いで作れるよってレシピなんだと思います。なんですが、手元になくて想像でしかないので、ライツ社のこちらを紹介させてください。

料理本としては珍しい、文芸などに多い四六判サイズの文字通りハンディな本書は、切って混ぜるだけ、切って焼くだけ、ごはんにのっけるだけ、みたいな爆速が身上。でも確かに表紙のアボカドの漬け丼なんて最高だし、アボカドの揚げ出し豆腐風なんてやってみたいと思った(アボカド好き)。
このアイディア最強。

同じくYou Tube、ツイッター界でたちまち大人気になっただれウマさん『極上ずぼら飯』(ワニブックス)も、この表紙のビジュアルで手に取ってしまったもの。

こちらは、他本より少し早く、今年2月に発売になったものですが、You Tubeを主戦場としているだけあって、コロナ巣ごもり中にむきむきマッチョが作る料理の数々に夢中になった人は多いと思います。
先に挙げたCOOKBOOK LAB.のSNSで紹介した通り、真っ黒バック、硬い光で撮られた料理写真や、作り方文の間に材料表が差し込まれているところにびっくりして。レシピ校閲者の会の人たちに怒られますよ、っていう斬新な構成です。
でもこれ、考えたらとても合理的な書き方で、You Tuberならではなんですよね。やってみればわかりますが、動画を見ながらはい次、という感じで次の材料を用意して作業に取り掛かるわけで。動画先行ならではの料理本だと言えるでしょう。

ツイッターでバズっているのがジョーさん。『めんどうなことしないうまさ極みレシピ』(KADOKAWA)

普段料理しない人がいざとなって面倒に思うのが、計量すること、包丁を使うことで、なんとか材料を買ってきていざ、ってなったらレンチン一択、「火を使わない」で楽したい。また買ってきた材料が半端に残るのも嫌だから「余らせないレシピ」も欲しい、と。見事に料理が苦手な人の文脈に沿って組み立てられてます。この編集者天才か。最近のKADOKAWAの料理本の凄さよ。きっと今年の料理レシピ本大賞にランクインすると思う。

たぶんこのコロナ禍で多くの人が気づいたと思うけれど、料理って、あくまで日常の1シーンでしかなくて、わざわざ腕まくりしてやるものでもなくて、今日は何が食べたいかな、冷蔵庫に何があるかな、何が作れるかな、とやるもの。

そんな日常を誰よりも楽しんでいるのが滝沢カレンさん。Instagramでにっこりポーズをとるカレンさんの間に挟み込まれる家ごはんをまとめた本書。独特の日本語で綴られる作り方説明に、ファンタジーを感じた人も多いでしょう。

かわいいよねぇ。今日(6/15)のインスタを見たらば、「絶対友達になってください、と頭を下げたくなるおかずに出会いました。」って、なんだと思ったら「豚と味噌のお泊まり会feat.玉ねぎ」ってw
本書の「カニクリームコロッケ」では、「カニカマをさいて入れ、ワクワクする量の粒コーンを入れます」とか。「中華丼」では「仲間たちは『個人差♪個人差♪』とつぶやきながら切ります」とか。冷蔵庫を見て、「珍しい食材が入ってきていつもより男気出してる気がします」とか。ポエムか。

そんなことを言われると、山本ゆりさんでなくても、「軽い気持ちで。足をくずして。」てなります。

だからこの方の驚異的な売れっぷりにはもう驚きませんよね。アマゾン総合ランキングでは今は31位。でも、昨年4月に発売のレンジ本は183位だもの。1000位以内に入らない料理本のほうが多いことを考えると、十分すぎると思うのです(きっと他の本もランキング上位)。
10冊目の記念号には、過去本すべての索引が1冊にまとまった付録がついてます。私はこの付録目当てに買ったようなもの(すいません)ですが、その付録の対向面、いわゆる奥付を読んで、山本ゆりさんの人気の秘密をあらためて知ったように思いました。詳しいことはぜひ手に取って(買って)読んでいただきたいのですが、山本ゆりさんに「肩ゆさゆさ、そして抱擁」ってされたら誰でも泣いてしまう。

そういう共感力の高さをレシピ作りに怒涛のように注ぎ込んで作っているから本が売れる。

そのように思いました。そしてこれは山本ゆりさんばかりでなく、ここで挙げた著者さんたち全員がそうなんです、共感力の鬼

もちろん編集者的注目ポイントもあります。ぐっとおいしさに寄った写真とか、かつてのほっこり食卓をイメージした自然光を使った撮り方よりもライティング重視、料理重視で皿周りで切り抜かれた写真とか、作り方工程を載せる場合は最大4ステップとか。簡単である、手抜きである、時短である、といったキーワードはずいぶん長いこと料理本を賑わせてきました。今年はそれにずぼらが加わって、レンチン&コンソメ・鶏ガラスープの素・めんつゆが欠かせない調味料となりました。

本のサイズもどんどん小さくなる傾向です。気づいたら、新刊はA5判が半分ぐらいになっていますし、紙の本と同時に電子書籍が発売になるのも当たり前になりました。著者も編集者も意識改革です。

にしても、アマゾンランキングを眺めていて驚いたのがこれ。

7月の発売予定なのに、すでに総合ランキング24位って何。登録者数57.5万人を誇るYou Tuberとっくん。もう表紙も出来上がってるKADOKAWAさすが。6月11日にとっくん自身がYou Tubeで発表してますね。所属事務所株式会社Kiii

さて、秋の出版状況はどうなっているでしょうか。コロナで撮影がめっちゃ遅れてますからどこも今が繁忙期です。はい、私もです。初著書出版に向けてがんばる料理家さんと一緒にこの夏は走り抜けます。あ、コロナ対策忘れずに。

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