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企画書を書いて料理本出版をしてない会社で企画を通した話

今日は自分の話をします。

COOKBOOK LAB.は、料理本好きのフリーランス編集者、綛谷久美が主宰するWEBメディアです。
私が勤めていたのは、料理本とは無縁のジャンルばかりを扱う出版社でした。
それがなぜ料理本を出すようになったか。

私が企画を通したからです。

と書くと、なんかスゴイ人に見える!
おお!てなりますね(自分で書いててへーってなってる)。

けど、もちろんそんなスゴイ人でもなんでもありません。
むしろ、毎日モヤモヤばかりでした。
「仕事なんだから『好き嫌い』じゃなくて売れる本の企画を考えて」
「なんでも作れる編集者になって」
という会社からの期待に応え、雑誌から書籍などさまざまな形態で、売れそうであればどんな本でも作って、それなりの実績も上げてきたので編集長にもなりました。

社員編集者として、料理本出版に挑戦

しかし、私が扱ってきたジャンルのすべてに心からの興味を覚えていたわけではありません。
海外取材にもしょっちゅう行けたし、専門家によるめちゃくちゃ深い知識を得ることができるなど、学習欲、収集心、達成欲の高い私にとっては、夢中になれたと言えた毎日ではあったんです。
でも、いつも心の片隅にはひっかかっていたんですね。
このまま『仕事だから』とやる編集仕事で本当にいいのか。
世のため人のためになる、自分が心から挑んでみたい本があるんじゃないか、と。

そんなある日に見つけたのが「料理」というジャンルでした。
きっかけは、娘のために毎日作っていたお弁当。
「お弁当の本なら、経験のない私やうちの会社でも、料理本ジャンルに入り込めるのではないか」と突然閃いたのです。
ちょうど世の中では、ブログ発信の料理本がヒットを連発している時代でした。
2008〜2009年のことです。

それで会社を説得すべく、企画書作りにせっせと励みました。
あちこち探し回って人に聞き、取次にもお願いして、元会社にはない料理本関連の類書販売データを積み上げます。
「なぜ料理本なのか」
「その中でもなぜお弁当なのか」
「読者マーケットはどうなのか」
「その裏付けはあるのか」
「類書の実績はどうなのか」
「この企画の特色・差別化ポイント」
などなど。

社内の編集会議に出すにはちょっとやりすぎな感じの、多めな資料が出来上がりました。
私自身が力説するための準備も整っています。
何を言われても通すぞ。という意気込みで会議に臨みました。

ぴしっ。


がー。
あっさり通ってしまいました。社長の鶴の一声で。
「いいんじゃなーい」

……。


まあいい。
1回通れば、あとはじゃんすか作ってOKな会社です。
大赤字を垂れ流さなければ、おーけーおーけー、がんばって開拓してねー、みたいな感じで放り出されました。

「好き」は最高のモチベーション

それからは、ご想像通り、大変の山積み。
会社を説得した、編集者はやる気に満ちている、しかし、肝心の料理本を作るノウハウがない!!! と焦りましたが、未経験の分野に乗り出したんです、当たり前っちゃー当たり前のこと。

やりたくて出した企画ですから、やっぱり何をやっても面白いし。
被写体となったお弁当たちや、小さなおかずたちのモデルっぷりにワクワク。
料理撮影のあれこれはカメラマンさんたちから伝授いただく。
フードスタイリングのあれこれも、プロのみなさんから伝授いただく。
調理のあれこれは、料理研究家だったり、時にはプロの厨房にお邪魔して取材と称して、口の重い和食の料理人に、なぜなぜとしつこく聞いてみる(すいません)。
レシピ原稿が届いたら、真っ先に自分で全部作ってみる。原稿通りにやってちゃんと作れるかどうか。曖昧な表現はないか、と。

やっぱり「好き」は最高のモチベーション
そうしているうちにいつの間にか経験と知恵と、売るためのコツのようなものが徐々に積み上がって行きます。
そうするとますますおもしろくなっていきます。
会社を辞めた現在に至るまでそれは続いていて、引き続き料理本の編集をし、COOKBOOK LAB.というサイトを作って、実用書ジャンルの中にある料理本の価値を高めるための活動を始めたりしてるわけです。

行動しよう、企画書作りをしてみよう

で、長々書いてきて何が言いたいかと言うと(自慢話はいらん、てね)。
自分がしたいことを実現するには、まずは企画書を書け、てことをお伝えしたいのです。

「自分の料理はどんな人の役に立つのか」→読者ターゲット
「自分が料理することで自分の周りにどんなストーリーが生まれたのか」→その人にしかない経験と差別化ポイント
「自分の料理と自分自身によってどんな成果を上げてきたのか」→実績
あとは履歴書的なデータがあればOK。

これらを企画書にまとめるんです。
思いの丈を力を込めて書くのとはちょっと違います。あなたの思いよりも、誰にも真似できないあなたのストーリーと実績です。それがどんな差別化ポイントなのかをちゃんとわかるよう噛み砕いて書いてください。

そして、もうひとつ大事なこと。
自分にキャッチフレーズをつけてください。
例えば私だったら、「料理愛に満ちた編集者」…………って、え。



A:ダメ。
 ダメダメです。なんだそれ、普通。もっとないの?
B:えー、なんだろー?
A:キャッチですよ、人が一発であなたのことを覚えるような、目を引くような!
B:料理本なら1000冊以上持ってます!
A:古本屋か。



いいやそのうち思いつくだろう。

ま、そんな感じでキャッチーなタイトルを自分自身につけてあげると、ぼわーっとしていた人物像がいきなりイキイキと立ち上がってくるのがわかるでしょうか。

そうしたらもうその人物像キャラを思いっきり身にまとってですね、書いた企画書を持って編集者のところに乗り込んでください。

あとはあなた次第。
がんばってー。

ありがとうございます。新しい本の購入に使わせていただきます。夢の本屋さんに向けてGO! GO!