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「虎に翼」メモ 第4週「屈み女に反り男?」

2週間くらい前、個人的に「世の夫たちって妻をどんだけ見下し、且つどんだけ甘えてるんだろうと腹が立つことが多い」って話をしてたんだが、今週の『虎に翼』梅子さんの夫がまさにそれでしたね。

ナチュラルに妻が見下される(そして妻がそれに甘んじる)夫婦関係のもとで育つと、息子も夫のコピーロボットのようになる、という再生産まで描かれていて胸が詰まりました。

妻が法律を学ぶことと夫が外で女遊びをすることを同列に語り、寅子たち法科の女子学生を「特別扱いしてやってる」という花岡。

自分たちの基準で「良い女/悪い女」と分類したり、「君たちは女の中でも特別」序列をつけるのは、ホモソーシャル(※1)とミソジニー(※2)の行動類型のひとつ。

(※1) 男同士の連帯至上主義
(※2)家父長制的秩序の遵守を監視し執行するシステム。女性蔑視や女性嫌悪として表れがち

「男性社会の中で、女性が名誉男性扱いされても、それはボーイズクラブのメンバーとして認可されているわけではなく「二流の男」扱いにすぎない」
と、昨年『100分deフェミニズム』で上野千鶴子が言ってました。

寅子たちに物わかりの良い紳士づらをし、他の女学生に「女は優しくするとつけあがる」なんつってわざと冷たく振る舞ったりする反面、自分たちより優秀な帝大生を前にすると “スン”となる花岡たち男子学生の中には、
「男たるもの強く優秀でなければならない」
翻れば
「弱く愚かな者には価値がない(劣る」
とする価値観が埋め込まれています。

“ウィークネスフォビア”ですよね。
弱さを嫌悪・忌避する観念。

先週、よねさんが花江を指さして「こんな奴」呼ばわりし、苦境でも努力を重ねる自分たちと比べて蔑んだのも “ウィークネスフォビア”の一種。
男性だけのものじゃない。

梅子の長男が、父親にならって実母を軽蔑するように
家父長制と男女差別、それに、ウィークネスフォビアや能力主義も
互いに相関・補強し合い、下の世代に受け継がれていく。

それを変えていくには、置かれた場所でただ咲いてるだけじゃダメってのはわかりますよね。

このドラマは、世の中の構造についてかなり意識的で、人の痛みについて描くのがとても上手。
令和の現在でも、女性は多かれ少なかれ登場人物たちと似たような経験をしているわけで、泣けてくるようなシーンがたびたび。

他方、痛みの生々しさ、根深さに比べ、解決が素早く、綺麗にまとまりすぎている感もあるのは、まあ、朝ドラだからしょうがないか。

もっともバンカラマッチョに見えた轟が
「俺が男の美徳と思っていた強さ優しさをあの人たちはもっている」
「おれが今まで"男らしさ"と思っていたものは、実は男とは無縁のものだったのかもしれん」
って、すてきなシーンだし、轟くんチャーミングだし、毎日声に出して読みたい日本語だが、いかにも
「脚本家が言いたいことを登場人物に言わせてます」
って感じも否めなかった。
教育テレビみたいというか‥‥ま、NHKらしいといえばそうでしょうか。

直言は無実だと思うけど、拘留されたのを見て「このための岡部たかしかー!」とすごい納得感。
サブタイトルが毎週凝ってますね、
「屈み女に反り男」って、そんなことわざあったのか~、と。


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