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『こっち向いてよ向井くん』完走

かつて恋人に「おれが一生守るから」となんの躊躇もなく言い放っていた向井くん(赤楚衛二)が、「恋愛感情って一方的でワガママなものかも‥‥告白したら何らかの答えを強制的に求めることになって相手に負担をかける」と逡巡するようになった! 胸が熱い。

「将来を考えたとき、普遍的な家族像が思い浮かぶのは、自分が幸せな子ども時代を送ったからなんだ」と気づくシーンもすごくよかった。

「10年間恋人がいない向井くんが久しぶりに恋をしたドラマ」なんだけど、「向井くんがアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)や、自分がもっている特権に気づいたドラマ」でもあるんだよね。

ただ、おもしろいことに、向井くんの妹の麻美(藤原さくら)は、法的・社会的な「婚姻」を良しとしなかった。
「同じ家庭に育っても個人差がある」という当たり前の話ではあるけど、男女の置かれる立場・求められる役割などの違いが、向井くんと麻美の価値観の差につながっている部分があるということでは。

さらに、坂井戸さん(波瑠)、美和子(生田絵梨花)、麻美と、アラサーの主要な女性キャラの3人が3人とも、グラデーションは違えど、いわゆるふつうの結婚にネガティブなのが面白かったし、現代的な表現だなと思う。

父への抵抗から結婚に嫌悪感をもちながら、元カレ向井くんにもたれかかる美和子の描写も好きだった。
「フェミニストは気が強くて男嫌い」みたいな、ステレオタイプじゃない。
茶髪・長髪で飲食店を営む、自由人の象徴みたいな元気(岡山天音)が、
実は旧来的な「大黒柱」幻想にとらわれてるのも。

向井くんと元気が男性同士でケアする関係性になっているのも現代的だったよね。
いきいきとしたおしゃべりからお互いに影響を与え合って進むドラマが大好きなので楽しい3か月だったー! 

私は元気(岡山天音)と同じく、「友だちが恋人になるの最高やん!」と思う人間だし、「こんなこと言ったら相手に迷惑かも‥‥」の海に溺れて何でもかんでも口をつぐみがちなのは現代の悪弊だと思ってるので(もちろん配慮は必要)、向井くんが勇気を出して伝える姿に感動した。

「一緒に過ごすと楽しい。一日の最後には坂井戸さんと話したい」
って、告白の言葉としてめちゃくちゃ最高だと思うし、そのあと「だから付き合ってください」と言わないのが、向井くんが坂井戸さんという人間と向き合ってきた証拠。

坂井戸さんの返事は「一緒に過ごすと楽しい」、それに加えて自分の壁になっていた「向井くんには素の自分が出せる。ありがとう向井くん」って、こちらも最高じゃないですかー!

ふたりの関係性がこの先どんな形になるのかはここで決めないの。
このドラマならそういう結末になるよね。

で、その返事で向井くんもとってもうれしくなって、ニコニコおしゃべりしながらカレー食べてるラストシーン‥‥めちゃくちゃ私好みですありがとうございます。

困った顔とともに繰り出される向井くんのモノローグと妄想が毎回楽しゅーて楽しゅーて。
正直、モノローグの演技がすごくうまいわけじゃないんだけど、なんか、それがいいw

カジュアルOKのアパレル系会社に勤めながら、毎日きっちりYシャツにネクタイという向井くんのスタイリングは原作マンガのとおりなんですか? すごくよかったです。
童顔で実年齢より年上を演じていた赤楚くんだけど、あの着こなしに「年季の入ったサラリーマン」感が出てた。
冷蔵庫を足で閉めそうな「実家男子」ぶりもよかった!
あの会社のチョロさすごかったけどね。
私も10年会社員やりましたが、今どきあんなチョロい会社ないよねw あるのか?東京には。

ま、坂井戸さんも美和子も麻美も、女子3人ともがフルタイムの会社員しかも正社員だから、「結婚したくない」設定が成り立つんだよな―とも思う。

そして、結婚しないとか事実婚とかはもちろん個人の自由で尊重されるべきなんだけど、法律婚以外の人が法的・経済的(税金面とか)で著しい不利益をこうむるのはおかしいから変えていこう!みたいなところには少しも触れないのも、まあ、日本のドラマの限界ですかね。

坂井戸さんのファッション毎回楽しみだった。
波瑠さんは私の中でラブコメの女王。
今まで見たラブコメどれも良かったんだー。

藤原さくらちゃんはやっぱり菊池風磨に似てると思う。
岡山天音を嫌いなドラマ好きはいない(根拠なし)。

向井くんのおしゃべり&モノローグ&妄想シーンを編集したDVDが欲しいです。

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