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「虎に翼」メモ 第16週「女やもめに花が咲く?」~戦争の傷は簡単には癒えないというエピソードが随所に

新潟編が始まった週。

・地元の名士を中心に“なあなあ”にまわる地域社会。ちょっと地方に行くと、令和でも依然として生きてますよね。

・名士は財産・人脈などを用いて人を助けたり便宜を図ってくれるが、複式簿記の論理でいうと、それは助けられた側にとっては「借り」つまり負債になり、助けた名士にとっては「貸し」資産になる。つまり名士は自分がもともともっている資産を用いて新たな資産を増やしている。こうして力関係の強弱は常に維持されていく。

・寅子が書記官・高瀬さんを「処分」したのは、その力関係を断ち切るためだったんだよね。望月歩、この役ハマってる。高橋克実も、こういう「一見、磊落な好人物に見えて実は狷介」な役めちゃくちゃ似合う。

・ただ、地域共同体それ自体が悪いわけではないので(むしろ良い面もある)、そのあたりどう描くのかな?描かないのかな?

・そっか、優未は優三に似たんだね。なるほどなるほど。お母さんが「仕事行きたくなーい!!」とジタバタジタバタする様子、テストのときはあれを思い出せば落ち着けるんじゃないだろうか?

・「仕事の鞄を右手に、買い物かごを左手に」持って出勤する姿が寅子の状況を象徴的に表している。「ただいま」のあとに必ず「すぐごはん作るからね」が続く。仕事から帰宅して、ちょっと座ってひと息入れることもできないのがお母さん。

・「クレヨンハウス」の代表でもある落合恵子が昔書いていたことを思い出す。

「子の幸せのため、「母であることだけを考えろ」というのも違うし、母親が自分を優先して子が犠牲になるのも違う」
「男性中心の社会構造では、女と子どもという声の小さい側が互いの権利の食い合いをせざるを得ない」

『教育について』(旬報社、1998)


・優未に優三のことを聞かれて答えられなかった寅子。今、昭和27年だっけ。戦後は多くの人が生きていくだけで精いっぱいだった時代。しっかりお弔いをして故人を偲んだり別離と向き合ったりする余裕もなかったりして、戦後7年経っても心の整理がついていない人は少なくなかっただろうな。

・兄を亡くした高瀬書記官も然り、戦争の傷は簡単には癒えないというエピソードが随所にある。

・梅子の次男の設定で少し触れていたが、従軍した兵士の戦争トラウマについても今後もうちょっとしっかりやったりするのかな。研究が進み、近年、一般にも伝わるようになってきた分野だ。去年から朝日新聞で断続的に続いた「戦争トラウマ」に関する連載、ぜひ多くの人に読んでほしい(でも有料記事なんだよねー…)

・カウンセラーの信田さよ子さん

・カウンセラーの信田さよ子さん

「原宿カウンセリングセンターを設立した1995年当時、40歳前後の女性の虐待経験が他の世代と比べて際立っていた」

「父が娘の耳と口に指を突っ込んでつり上げ口が裂ける。全裸で木につって青竹で殴る。妻の髪をごっそり抜く。日本刀で脅す父も多かった」

「多くは「父は復員して人が変わり、酒飲みになって暴力的になった」という話に行き着くが、当時は共通性に気づかなかった。2018年に「戦争とトラウマ」(中村江里著)を読み、戦争と家庭内暴力が初めて結びついて、ハッとした」

「50年以上前、精神科病院で携わっていたアルコール依存の治療を思い出した。多くの患者が驚くほど似た経験を話していた」

「一兵卒として渡った旧満州、攻撃前夜に恐怖で眠れない。上官から粗悪な焼酎を飲まされ、吐いても無理に飲まされ、泥のように眠り、翌日人を殺したのだと。帰国後も飲酒習慣が残る人は多かったのです」

「日本のDVの源泉は戦争ではないかとすら、今は思っています。国が家族から男を奪って総動員し、ボロボロになった男たちを家族に戻してケアをやらせる。その結果、家族がボロボロになってしまったのです」


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