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『おかえりモネ』 最終週 ~「おかえり」の循環、そして雨が降る

最終回で「おかえり」されたモネ。
みーちゃんやりょーちんが笑っているのを見て‥‥いや、彼らに「幸せになっていい」「私が “ みーちゃんは悪くない ” と言い続ける」と断固言えるようになり、モネ自身も解き放たれ、やっとその魂が故郷に戻れたということでしょう。
「もう、何もできないなんて思わない」という言葉が印象的でした。

しかし! 最終回の前日のセリフも忘れてはいけません。モネはこう言ったのです。

「誰が来ても受け入れて、「行っといで!」と送り出して、帰ってきたらまた「おかえり」と迎え入れる。そんなふうになりたい」

「おかえり」される側じゃなく、
「おかえり」する側になりたい
とモネは言ったのです。

実際、最終回を見ると、出航する亮を見送り、母の亜哉子と一緒に島の子どもたちの世話をしています。

傷心で島を出て、
登米の人々に迎え入れられ、
菅波先生に勉強を教わって
東京で仕事を覚えて大人になり、
島に戻って「おかえり」と言われ

そして「行っといで」と「おかえり」を言う側になった‥‥。

それは、
太陽の熱で蒸発した水を
海風が山へ運び 雲を作り
雲が山に雨を降らせ
雨が川に流れてまた海に戻っていく
いろんな形になってぐるぐるまわる水のような、循環。

年月の循環でもある。

「迎え入れて、“行っといで ” と “ おかえり”  を言う大人」
モネにとって、その理想はサヤカさんだから。

また、「サヤカさんのようになりたい」
そう言われたサヤカさん自身が救われたのも見逃せない。

モネを東京に送り出す前、「一人で生きる人生よ」と独りごち、
そっと涙していたサヤカさん。
資産もすっからかんで、切られ倒れる大木に感情移入していたサヤカさん。

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でも、モネの言葉で「私はあの子の中に生きている」と思えたんだよね。
一人じゃないのだと。

子どもが成長して「おかえり」を言う側になったこと。
若い人を守り、後押ししてきたサヤカさんが、若い人に救われたこと。
これも循環。

久しぶりに菅波登場! 菅波が登米にキター!な 月曜日。

菅波に勇気づけられた亮が
みーちゃんとしっかり向き合って未来を見つめ、
一方の菅波はきょどきょどしてるところを
モネに「私たちは一緒に未来を考える仲」と励まされる。

これもすばらしい循環でしたねw

これまでずっと、「救ってあげたい」「寄り添ってあげたい」と、みーちゃん(やモネたち)に庇護される側だった亮ちんが、みーちゃんに向かって
「俺よりつらそうに見える」「いつか笑わせてやる」と初めて主体的な姿を見せる。

喫茶店で人目もはばからず体を寄せ合う二人。
すがモネ(菅波&モネ)に比べてだいぶ官能的な抱擁的でしたし、
その夜、モネにLINEを送ってきて、翌朝(菅波が東京に戻る朝)も永浦家に姿を見せなかったみーちゃんは、亮ちんの部屋にお泊りしてたという解釈でOKですね???

いや、ゲスい目でニヤニヤしてた(だけ)じゃなく、大事なのは、その先。

ずっと好きだった亮ちんとやっと結ばれて、それでめでたしめでたし、じゃなかったんだよ。
そのあとなんだよ。みーちゃんが、おばあちゃんのことを告白したのは。
しかも亮にではなく、モネに言った。

「あさイチ プレミアムトーク」に出演した清原果耶さんが

「モネは恋愛軸で生きてない」

という解釈を披露して、「それな!!!」とすごく頷いたんですが
この、みーちゃんの告白といい

【若い女の子イコール、みんな恋愛至上主義】

にしないこのドラマは本当にフラットだし、アップデートしてると思いました。もちろん、すーちゃんみたいに、恋の上級者みたいな子だっているのですが。

モネにしろみーちゃんにしろ、神野(今田美桜)や高村さん(高岡早紀)にしろ、野坂さんにしろ、
「女性も仕事をするのは当たり前」
「できる(=能力が高い)のも当たり前」
という描き方もよかった。

「昔は、女が好きな仕事をするのは難しかった」という、おばあちゃんのセリフで過去の環境も押さえつつ、今はもう変化してるんですよ、という描き方だったよね。


呼吸器内科の医師として、東京でコロナの診療にあたっていたと思われる菅沼。

「太陽は久しぶり」「会うのは二年半ぶり」

海辺でやさしい抱擁を交わしながら

「雨が降ります」

とモネ。

「私たちには距離も時間も関係ない」。
だけど、触れ合うことで熱伝導が起きて、飽和水蒸気量に達したんだよね。

かつてサヤカさんが言った
「すべてが整ったとき、雨が降る」
ということだね。

菅沼の後方には彩雲が見え
いろんな形になってぐるぐるまわる雨が
やさしく落ちてくるのでしょう。

被災した人、たまたまその場にいなかった人、まったく違う場所にいた人。。。

経験は違っても、濃淡があっても、みんなが循環の輪の中に。

清原果耶さんの実力は知っていたつもりだったけど、
半年間、彼女に驚かされっぱなし、魅了されっぱなしだった。
終始、細やかな表情やトーンと、15歳だった震災時から、徐々に成長して大人になってゆく演技がすばらしかった‥‥。

斜め上のことを口走る菅波に、微妙な顔をして「ん?」とリアクションするモネが大好きでした。
「ん?」集、誰か作ってくれないかなw 最終回にもあったよねw


追記。

「記憶は消えないし、
 自分を許せないと思うのはしょうがない。
 だから、代わりに私があなたは悪くないと言いつづける」

最終回の前日、モネがみーちゃんに言った言葉。
#自己責任よりLoveMyself そのものだった。

自分で自分を許すこと、
自分にかかっている自己責任の呪いを解くことは難しい。
だから、まわりが言う、寄り添う。

BTSは「Love Myself」というメッセージと共に
「僕たちを利用してね」と言う。
それは、一人で Love Myself するのは難しいから。

2021年に放送するのにふさわしい、
アップデートされたドラマ「おかえりモネ」と
世界を席巻するBTSとに共通するもの。

いま、世界が必要とする、普遍的なメッセージですね。

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