見出し画像

「光る君へ」メモ 第5回「告白」通い合う心、成就しない恋、同じ罪を背負う共犯者。

おもしろいねー! よくできていて感心する。以前も書いたけど、私はこのドラマを「まひろと道長の愛憎にまみれた婚外関係(笑)」を軸に見ているから、ふたりの関係性を描くために初回からコツコツと頑丈な基礎工事がされているのがうれしい。

でも、平安時代の婚姻システムに慣れていない視聴者の方は飲み込めたのかな?(と書くと、私が平安時代の婚姻システムに慣れてるようで変だが)

道長は、まひろが自分の素性を知って、身分差にびっくりして倒れたと思ったんだね。それからしばらくうわの空だったのは、どうしようか悩んでいたから。

「為時殿の屋敷に参る」という手紙は「あなたを妻問う」という暗示。
妻問う(つまどう)とは「求婚する」ってことだけど、身分差を考えると正妻としてではない。まひろはいわゆる「妾」にすらなれず、以前詮子(吉田羊)が言っていたように「しょせんいっときの慰み者」として扱われてもおかしくないほどの下級貴族の娘。

まあ、若くまっすぐな道長は為時にも会うつもりだったようだから、「責任をもって妾として遇します」くらいの誠意はもっていたはず。
妾ってのは、今回出てきた財前直見くらいの立場ね。「蜻蛉日記」の作者だけど。
その息子・道綱(上地雄輔)は、父兼家から「おまえはかわいいけど、道長たち3兄弟とは身分が違うからわきまえろ」とハッキリ言われてたよね。
産みの母親の身分が子どもの身分になるからね…

とはいえ、妾だろうが一時の火遊びだろうが、男が女を夜に訪ねるのは艶めかしい行為だから、以前 公任(町田啓太)がもっていたように、色や匂い、折り方にまで気を使ったペーパーにとっておきの和歌を流麗に書いて届けるべきなのに、道長の「要件のみ」の手紙よ! 
味もそっけもない。しかも字がすごくへたくそ。あれぞ道長だよ!!
道長は史実、悪筆と悪文の人なの。(でもハードワーカーです)

まひろのほうも「ひどい手紙ではあるが、これは妻問いだ」と理解。
父が許せば妻問われちゃう(いわゆる手籠めにされる)システムだし、兼家の息子からの求婚なら、父は処世のために許すに決まってるから、まひろは直秀に頼んで別の場所で会った。

その別の場所が「六条」なのがまた、源氏物語ファンには「おおお」ってところなんだけど、それはおいといて。

すべてを告白するまひろ。ここで、まひろは単に道兼を恨んでいるだけでなく「自分が道長に会いたくて急いでいたからあんな事件に」と思い詰めていたことが視聴者にも明かされる。

「あなたへの淡い思慕が元で私は急ぎ、そのために母はあなたの兄に殺された」これは道長もショックだよね。
そこで屋敷に帰って兄を殴り飛ばすが、兄に「おまえが俺をイラつかせたのが発端」となじられる。
完全に言いがかりなんだけど、もともとショックを受けていたから、冷静に考えられずガーンとなる道長。

「そっか‥‥まひろの母が死んだのは俺のせいだったんだ‥‥」的な。
いや違うよ。違うから!

でも、まひろも道長も共に「まひろの母の死」という原罪を背負ったわけだ。通い合う心、成就しない恋。そして、同じ罪を背負っている共犯者。好みの設定です!!!!!!!(落ち着け)

しかも、ぶちぎれる道長を兼家がちゃんと見てんのよ、「道長、熱いやん!政治家向いてるやん!」と喜んでんのよ。

うん、確かにちょっとびっくりはした。好きな女があんなに苦しんで泣いているのに、女に寄り添うより、家に帰って兄を殴るほうを優先するんだ、って。今さら兄を殴ってもどうにもならないのにね。
あれは若さゆえの青さ・血気盛んを表す表現なのか、あるいは、のちに権力闘争を勝ち抜く者の片鱗なのか、今後の描写が待たれます。

段田安則の兼家。娘の伴侶である帝に毒を盛り、それを娘に泣いてなじられてもどこ吹く風、次男の不始末も、我が子の兄弟げんかも、何もかも自分の権力強化に利用していく、ギラギラしたゴッドファーザーぶりがかなり良い。
右大臣だから、臣下ではナンバー3の地位なんだけど、格上の左大臣や関白もずらりと並べて安倍晴明を脅すあたり、やりおる。

ユースケ・サンタマリアの安倍晴明、昨今すっかり定着してた、羽生結弦の清冽なイメージを払拭する、暗く怪しい陰陽師っぷり。シャーマンなんだけど俗っぽさもあるというか。
兼家たち公卿と共謀したかと思えばせめぎあったりして、当時の “まつりごと” とは“政りごと” と “祀りごと” が混然となっていたのだとわかって良いよね。

そしてさー
まひろと道長が今回の「告白」に至るきっかけは、「五節の舞」でした。
あれがなければ、まひろは三郎=道長と知らず、道長もまひろを訪ねようと思わなかったはず。

「五節の舞」がきっかけで、貴人が舞姫役の女性を妻問うのは当時よくあること。左大臣家のサロンの姫もひとり、妻問われていましたね。相手がなぜかザブングルだったけど‥‥また出るのかな?

そんな、カギとなる機会のきっかけ、まひろを五節の舞姫に仕立てたのは倫子だという‥‥!
今回、倫子は兼家と顔を合わせるシーンもありました。
猫を追ってというのがまた、源氏物語ファンには「おおお」で。
倫子がどういう存在かは、一応まだ伏せておきますが、まひろ・道長・そして倫子の絡ませ方がうまい!

しかもしかも、「父があんなことするなんて」とか「父の言うとおりにするのは嫌だけど倫子さまは気になる」とか、相反する気持ちに苦しむまひろを
「それが人というものだ」
と諭していたのは、宣孝なんだよねー
きっと生涯、愛と罪、愛と憎に絡めとられて生きるまひろの、ひとつの背骨になる言葉‥‥

それはきっと、まひろがのちに、さまざまな人々の千々に乱れる心を書き表していく源氏物語にも通底するテーマだろう。
宣孝がどういう存在かも、一応まだ伏せておきますが(みんな知ってるのかな?)ほんとうによくできてる!

あと、「謎の男」こと直秀の役割がだんだん見えてきてこちらもすごくおもしろいんだけど、長くなったからまた今度!毎熊克哉、大役やん!!

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?