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ともだち


大学で最初にできた友達が鬱になった。


そういえば昨日授業いなかったよなーと思いながら「図書館で勉強しない?」とLINEを送ったら「いま実家で…。」と返ってきた。

詳しくは聞いていない。簡単に聞けないし言いたくないだろう。
「時々ね、不安になって気分が落ち込むの。そうするとそのままどんどん沈んじゃって体が動かなくなってしまって。」

1週間前に見かけた彼女の顔は、顔の奥の筋肉が固まっていて、なんだかへんだと感じたのを急に思い出した。



彼女はとても真面目だ。
わたしも真面目それ以上に臆病なので同じくらいセーフティーネットを大きく持って生きていきたい者同士気があって一緒にいると楽なのだ。
他の人には絶対わからないような、10分前に集合して、5分前に店に着いて、10分早く帰る そういうことを一緒に共有できた。
高い買い物と実にならない時間を嫌い、厚底を履きこなした女の子や巻き髪に香水をたくさん垂らす綺麗な女の子いる流行りのカフェで撮ったケーキの写真はストーリーにはあげず、小さい声で将来のこと、家族のことを語り合った。ケーキは一番値段の低いプレーン的な物を選んだ。


わたしが彼女にダイエットを勧めた。
真面目な、厳格な彼女に勧めるべきではなかった。いつか絶対に、この子の性格なら摂食になる、そんなことはわかっていた。
彼女のもつ元のスタイルや雰囲気に締まった身がきっと似合う。わたしも頑張っている。そう言って勧めた。

彼女は痩せた。身は確か、心までやせ細ったのだとしかいえない。痩せて空っぽになった頭で、一生懸命考えて一生懸命勉強をしていた。

誰かが、「ダイエットをしていた頃「空っぽの頭で一生懸命書きました」みたいな文しか書けなった」とツイートしていたのを思い出す。

わたしは段々と、同じように彼氏が医学部で、同じような趣味で、当たり前のようにマルシェで買う有機ルイボスティーとかルピシアで買う紅茶にお金をかけ、お互いを可愛いと思うのと同じようにお互いを刺激的だと思う友達とずっと一緒に過ごすようになっていた。
女友達ってのはより同じレベルの方を居心地がいいと思いやすいのだろう。彼氏がどんな人か、というのは劣等感にも優越感にもなり得るからなるべく同じな方がいい。
友達とは気づいたら一緒にいた。友達が友達に隙を作らせなかった。わたしもその隙を見つける努力を怠った。



もう遅かったのか。
彼女にとって他にも友達がいたように見えたが、内向型の彼女には最初にできたわたしが1番の友達だったのだろうか。
もっと早くに、サラッと「食べたケーキはいちゃったの」と笑顔で言う彼女に何か助け舟を出すべきだったんじゃないか。



「学校くるの、怖い?」とLINEを送ったら「踏み込まないで」と言われた。「おはよう」と送った以降返信が来ない。


確か、『ノルウェイの森』で「開ける」かどうかをレイコさんは見ていた。彼女は春から閉じるようになっていた。

無理して復学しなくていい、人生なんとでもなる。死なない限り幸せだし幸せと思えば何でも幸せだよ、場所変われど友達だよ、いつでも電話しようね!そんなこと言いたいが言われた彼女はどう捉えるのだろう。



どうしていいかわかんない、わかってるようなわからないような分からないことが多すぎる。

早く学校行けるように頑張るという彼女に頑張らなくていいと言うべきか考えて結局何も言えなかった。


全てがうまくいきますようにと、時々体にやさしくて美味しいお菓子を彼女に実家に送っている。
これからも送るつもりだ。

わたしは彼女が心底大好きだ。卒業してもずっとずっと友達がいい。





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