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”生きる、命、受け継ぐ”、そんなものに重点を置いているような、そんな温かい本でした。

2020/9/8 読書記録no.5『約束』石田衣良

石田さんは、私の好きな作家さんの1人です。
言葉の言い回しが柔らかく、
読んでいて、なんだか心地よくなるんですよね。
多分、文章のリズムというか、流れというか、
そんなものが私の好みにハマっているのだと思います。

今回は、そんな石田さんの『約束」という本を紹介します。


裏表紙のあらすじ。

親友を突然失った男の子、リストラに晒され、
息子に侮蔑されながらも日常に踏みとどまり続ける父、
不登校を続ける少年が出会った廃品回収車の老人、女手一つで
仕事を抱えながら育てた息子を襲った思いがけない病ー。
苦しみから立ち上がり、もう一度人生を歩き出す人々の姿を
鮮やかに切り取った短編集。たくさん泣いた後は、
あなたの心にも、明日を生きる小さな勇気が戻っているはず。

この本は、7つの短編が1つの本になっています。
どのエピソードも心温まるものばかりで、
本当は全ての短編をまとめたいところですが、
相当な文章量になると思われるので、
今日は、その中でも私は一番印象的だったものを2つご紹介します。


 1、夕日へ続く道

色々なことを考えすぎて、不登校になってしまった男の子。
季節は冬、1人公園で冷たい空気に体を晒していたら、
こんな音が聞こえて来た。

「ご使用していないテレビ・パソコン・ステレオ、
なんでも回収いたします。」

ひょんなことで、
その男の子は廃品回収車のお手伝いをすることに。
毎日朝9時に公園で待ち合わせをして、
”源じい”の手伝いをすることが男の子の習慣になっていきました。

その車の中で、”源じい”はいろんな話をしてくれました。
しかし、脳血栓で倒れてしまうんです。
なんとか意識は戻りましたが、リハビリが必要な体に。

そんな”源じい”は、男の子に1つ賭けを持ちかけます。
3日間リハビリをして、もし自分の足でトイレまで行くことができたら、
中学校に戻って欲しい、と。

”源じい”は、その賭けに勝ち、
男の子は中学校に戻ることをなんとか承諾します。
自分の中で葛藤する男の子に向けて、強くて優しい言葉を語り続けます。
「きつかったら、休んでもいいけど、またちゃんと、学校に戻るんだ。」
「みんな、どこかで無理をして、周りに調子を合わせてるんだぞ。
兄ちゃんも、ちょっとは大人のふりをしてみな。」と。

時には自分を折ることも大事だぞ。毎日少しずつ負けておく。
そうしておくと、最悪の事態はなんとか避けられるんだ。
全身に当たる夕日は穏やかな暖かさを残してくれた。
窓の外に広がる一つ一つの建物に、
それぞれの暮らしがあるのが不思議だった。

このエピソードを読んで、
家族でもなんでもない人からの言葉って
強いものがあると改めて思いました。
”源じい”は、あまり詳しく男の子の状況を聞き出そうとしなかった。
でも、毎日寄り添うことで心を開かせた。
だからこそ、男の子は物事に向き合い、前に進むことを決めた。

その感情の変化が少しずつ分かっていく、
そんなストーリー構成に感動しました。


 2、ハートストーン

ある日、突然倒れた10歳の男の子。
病院で検査をしてもらうと、
小脳に悪性腫瘍ができていることが医師によって伝えられました。
5年生存率は、6割。

入院して治療を続けていたら、母の母から電話が入った。
「お父さんが、心臓発作で倒れた」と。

1週間後、男の子の手術が行われました。
朝の日差しが、昼の高さになり、ゆっくりと金色に熟れながら、斜めに落ちていく。
この表現で、手術にかかっている時間がすごく長いことが分かります。

しかし、手術室前で待っているとまた1本の電話が。
相手は母からでした。
「お父さんが亡くなった。発作が起きて、心臓マッサージをしてくれたけど、ダメだった。さっき、死亡確認が済んだ」と。

男の子の手術は、14時間半かかって、深夜に終了。
無事成功し、あとは放射線と薬で治していくことが伝えられました。

ハートストーン、これが男の子の命をきっと救った。

涙を作るのは心なのだとわかった。涙はどこかのタンクに
ためられているものではないのだ。後から後から滲み出して、
頬を伝っていく。
これほどたくさんの涙が人の器官にためておけるはずがない。
1人で生まれ、1人で育ち、いつか想像もできない場所と時間に、
1人で死んでいくのが、人間なのだ。
みんな、今は俯いてもいいから、
いつかは顔を上げて、前に進もう。

この話は、ぜひ本を手にとって読んでいただきたいです。
こんな奇跡、ありそうでないような、
なさそうであって欲しいような、そんなストーリーでした。

涙が止まらなかった。

病気ものって、たまらないですよね。
特に子供が主人公となると、これまた余計に。

ハートストーン、タイトルにもありますが、
これの説明をするには少し難しいなと感じたので、
知りたい方は、本編を読んでみてください。

この意味がわかると、さらに感動すると思います。


自宅には、まだ石田さんの本がたくさんあるので、
これからも様々な本をご紹介していきたいと思います。

説明が上手にできるように頑張ります。笑
今回はちょいと下手くそでした。

ぜひ、お楽しみに。


おりょう☺︎






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