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私は詩人か高等遊民か、それでなければ何物にもなりたくない 小さな幸せの伏線が張り巡らされた書簡体小説『恋文の技術』 森見登美彦 #1

森見登美彦の作風?

『恋文の技術』を書いた森見先生とはどんな人なんでしょうか?代表作は『ペンギンハイウェイ』や『夜は短し歩けよ乙女』などです。森見先生の世界観の基本的は怠惰大学生と京都です。本作中に出てくる「私は詩人か高等遊民か、それでなければ何物にもなりたくない」を体現する人が多く出現します。主人公は童貞臭い怠惰を極めた大学生が多いです。そして、主人公が京都を舞台に奔走しまくるのを、他の世界なら主人公になるであろうキャラの持ち主たちが脇を固めるとい世界観が多いです。主人公が本当にどうしよもない場合が多いのですが、その人間味が最高なんです。怠惰であることに誇りも持っていて、そしてその誇りを守るためにはどんな努力を惜しまないという矛盾が愛おしい。これが顕著に表れるのは『新訳 走れメロス』の走れメロスの主人公なので、ぜひ読んでみてください。これぞ森見というものが感じることができると思います。

読めばペンを握りたくなる

さあ、『恋文の技術』について書いていきたいと思います。この本は書簡体小説になっています。そして、基本的にの主人公の書いた手紙しか読むことができません。書簡体小説でよくある、手紙のラリーは一切ありません。怠惰大学生の書いた手紙を読んで何が楽しいのか?、そもそも理解することができるのか?という不安は今すぐ拭ってもらって大丈夫です。4~5人の相手に主人公は手紙を書くのですが、この全ての相手の手紙がリンクするんです。そして、それぞれの相手によって起きた事件に対する感情やとらえ方が差を全然違う。この違いを感じることができるのは主人公からの一方通行の手紙しか読めないからこそだと思います。

この本の特徴として、とにかく伏線が多い。「あ、これとこれつながった。」みたいになれる仕掛けがたくさんあります。そして、この伏線たちはよくある大どんでん返しや感嘆を起こすような伏線ではなく、「家に帰ったらケーキがあった」「コンビニの合計金額がぞろ目だった」くらいのちょっと笑顔になるような伏線です。ノーランみたいな伏線はもうおなか一杯みたいに思っているひとなら、ささる作品だと思います。

私はこの本を読んだ後、早速友達に手紙を出しました(まだ返信はありませが…)。この本を読んだ後は、誰でも猛烈にペンを握りたくなり、そして、最強の文章をつくりたくなるはずです。ぜひ、読んでみてください。

この作品にはまれる人はきっと、森見先生の小説にはまれると思います。

P.S 私が一番好きな章は「見どころのある少年へ」です。初めてnoteを書きましたが非常に大変ですね。そして、文章を全然よくない。練習あるのみです。

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