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燃え尽きアラフォーコンサル転職記

前書き

40前後のおっさんは 良い感じに転職することが出来るのか?
労働意欲が減退した戦略系コンサルは 満足に転職することが出来るのか?
出来る 出来るのだ

ある程度のランクになった戦略系コンサルの転職記録はネット上であまり見かけない。特に10数年も戦略系コンサルを続けたものの老齢となり労働意欲が減退したらどうするのか、という点は未だ明確に提示されていなかったと思う
アラフォーで燃え尽きて転職を決意し実行した戦略系コンサルとして、今回の転職記録を後続のために残す
なるべく具体的かつ率直に記載するように努めたつもりだ

有料部分には特に何も情報を記載していないので、おひねりだと思っていただきたい
あと気が向いたら文中のリンクをクリックして転職サイトに登録してくれると私の懐が潤ってうれしい

退職に至る病

顧客の期待値コントロールをミスったプロジェクトが炎上し、月の平均睡眠時間が3時間を切って早数か月、心身の降伏点が見えてきていた

金属の降伏点の概念

金属に加重をかけていくと、弾性の範囲では完全に元に戻る。上記図の降伏点までの直線がその範囲だ。それを超えて降伏した後は、加重をゼロにしても元の点に戻らない。そしてさらに加重をかけ続けると破断に至る。人間が壊れる過程も、似たようなものだと理解している

ろくに寝てないのにいざ寝ようとすると眠れないという不眠気味の症状が出始め、考えがまとまらず、資料を作る手が動かなくなってきている
心という器は ひとたび ひとたびひびが入れば二度とは 二度とは…
過去の経験や周囲の人間が壊れる様子から、このままだと遠からず自分の何かが壊れることが予見できた

家族への負荷のかかり方も大変なものがあった
妻はほぼワンオペ、土日もほぼ仕事で不在でたまに帰ると寝てるだけの不機嫌なおっさん。子供にも優しくできない。完全に不良債権である
人間は、少なくとも自分には、余裕がないと他人に優しくするだけの器量がないこともよくわかった

プロジェクト自体は奮戦のかいもあり、最終的には円満に終了した
そして、プロジェクトが無事終わる気配を見せた瞬間に、退職を決意した
このプロジェクトは何とかなったが、もう一度現状が再現されたら次は確実に心身が降伏点を超えることを悟っていたので、転職先を見つける前にプロジェクト終了時点で退職意向を告げる
あてのない転職活動が始まった

転職の勝利条件と仮説構築

退職を申し出た瞬間は1年くらい無職で過ごそうかと本気で考えていたが、退職意向を伝えた後1週間くらいしたら心身が回復して転職活動への気力がわいてきた
もとより小心者なので、無職で貯金が減っていく状態で過ごすのがストレスになるであろうことも想定される
Fireにはまだ遠く、子供の教育費等を考えると今後もある程度は稼いでおかないと安心できない。あまり贅沢をしない方なのであと10年ほどそこそこの年収水準を維持できれば逃げ切り確定に持っていける気がするが、子供の進路次第でその計画が大きく狂う可能性もある
よって今回の転職では、

  • そこそこの年収維持(できれば2‐3割程度の年収減でとどめる)

  • 心身のストレス減少(労働時間の短縮、具体的には月20時間程度の残業時間を目指す)

という条件の両立を勝利条件とした

この条件を満たす市場は、ニッチセグメントでシェアと利益率が高いメーカーの経営企画役員ポジションであろうという仮説を立てる。メーカーの経営企画ポジションは現在のスキルの親和性もあり、比較的合格率も高いだろうという想定である
ベンチャーでSO込みの年収を狙いに行く手もあるが、SOの期待値を計算すると保守的に見積もった場合意外と低く、一時的な年収減も耐えられない範囲に踏み込む可能性が高い。それに、ベンチャーは身を粉にして働く人間が行くべきところなので興味があるところの話を聞くにとどめて基本除外とする
商社も一瞬検討したが、過去にプロジェクトをやった範囲ではノリが合わなさそうな気がしたのと海外に頻繁に出るのがめんどくさいのでいったん除外
コンサルはシニマネ以上だと売上目標の達成に対するプレッシャーと炎上リスクが常に脳をよぎるので、良い転職先が見つからなかった時の安パイとして後回しにした
最近はハイタレント等のコンサル案件斡旋サイトが台頭してきており選択肢としてフリーランスもあったのだが、50代に入った時に果たして業務を引き続き受注できるかという点に疑問があったので、最終手段としてこちらも後回しである

退職日は確定しているが、そこから無職期間があっても問題ないというスタンスでこの時点では活動を開始した

このトリプルトゥエンティ―という概念、激務高給系から転職する際の一つの目安になると思う

転職活動 ヘッドハンター編

これは調子こいてたタイミングのツイートである
ツイッターで転職したいとつぶやいていたらDMで何人かのヘッドハンターが声をかけてくれたので、まずそこから転職活動をスタートした

このルートの良かった点は、労働時間短めかつ高給というニーズをヘッドハンター側が完全に理解してくれているところである
具体的には3人から各1社ずつ紹介を受けて、3社ほどニッチセグメント×高シェアメーカーの経企ポジションを受けた

結果的に、1社は社長面談で撃沈、1社はそもそもポジションがなかった(評判は良かったが年収相応のポジションが今は空いていなかった)、1社は年収面で交渉したが条件が折り合わず辞退となった

ヘッドハンター経由で転職する場合、時間軸を長めにして待つことを前提とすべきであり、短期決戦には向いていないということをこの時点で悟り始める
しばらく無職で手を広げて声がかかるのを待つことも考えたが、無職・無収入期間が長いことに不安があるためエージェントを活用して手を広げる路線に舵を切った

転職活動 転職サイト登録編

前回転職時のエージェントに声をかけつつ、ビズリーチとパソナキャリアでエージェントの補充を試みた
最近は企業が直接声をかけてくれるサイトも増えてきたので、この手のサイトに登録するのもありだと思われる

仮に現在転職意向がなくても、面白い話が舞い込む可能性もあるので転職サイトには常に登録してアンテナを立てておくことをオススメする
いざというときに転職する際のハードルが下がるし、自分の客観的な市場価値がわかるので現在の条件を相対的に評価することができるようになる

https://twitter.com/consultnt_a/status/1655528289694531586?s=20

直接転職エージェントに声をかける手もあるが、転職エージェントは参入障壁が低く歩合制なので、仮に同じ会社に所属していても本当に能力がピンキリである
よって当たりが出るまでガチャを回す必要があるのだが、ガチャを回す観点では転職サイトに登録してエージェントから声をかけてくれる状態を作る方が早いので、転職サイトへの登録を第一歩にすることを推奨する

当たりの基準は人によるが、個人的には以下の条件が重要だと思っている

  • レスが早い(最重要項目。レスが遅いとストレスに直結する)

  • 推薦してくれる企業のセンスがいい(こちらのニーズを踏まえた提案をしてくれる)

そもそも話が合わない、自分がねじ込みたい企業だけ強引に推してくる、上から目線で説教してくるとかのクソ率が半分くらいあるので、納得いくまでガチャを回した方が良い
リクルートキャリア等のデカいエージェントの場合担当者の変更も可能なので、エージェント内でチェンジを申し出るのもよい

アラフォーでエージェント使わなきゃ転職できないやつはクソという話もネット上では散見されるが、いざ転職の際に誘ってくれるのは今までのクライアントかコンサルorベンチャー起こした友人くらいであり、そこらへんの企業には行きたくないのでしょうがない。割り切ってサイトに登録しよう

エージェントと話してニッチセグメント×メーカー×経営企画のポジションにいいのがなかったので、妥協して大き目のメーカーやB2C事業会社の経営企画ポジションでエントリーを開始した

業務経歴書の書き方

転職サイトへの登録には業務経歴書が必要なので、ほんのさわりだけ業務経歴書の書き方のコツを記載する
とはいってもコンサルの業務経歴書は簡単で、以下の点を参加したプロジェクトごとに記載していけばよい。数が多い場合は直近数年分や代表的なプロジェクトのみでOKだ
年末年始の時期に、1年の振り返りを兼ねて更新するといざというときすぐ動ける

  • プロジェクトの概要(業界と顧客のざっくりした規模、プロジェクト内容、期間)

  • 自分の担当範囲、役割

  • プロジェクトの成果(定性、定量両方)

  • (マネジメントの場合)何人くらいマネジメントしたか

それに今回の転職に至った理由、自分のアピールポイントを記載すれば内容的には十分戦える水準となる
留意点として、業務経歴書の転職理由に関しては当然本音ベースではなく建前を書くべきである。激務に疲れてなるべく働きたくない、と書いてくるやつを採用したい企業はいない。特に、心の中で思うだけならまだしも、それを堂々と書いてくるやつは
上手い理屈を考えよう

転職活動 事業会社経企編

メーカーを中心とした事業会社の経企ポジションで、上限が年収1000万円を大きく越える水準を提示している企業にポチポチ応募していく
事業会社ではなぜコンサルから事業会社に行くのか、という点への説明が重視される傾向があるのでそこは練りこんでいこう。激務に耐えかねた、というニュアンスをチラ見せしつつ事業会社へのあこがれを語るのがポイントだ
転職する場合に前職のネガティブな要因を語るなという話がよくあるが、まったくなければ転職する理由がそもそもないので不自然になる。よっていい感じのバランスで混ぜ込むのが合理的なのだ
活動を始めてわかった他に重視される点は、マネジメント経験の有無だ。プロジェクトマネジメントの経験以外に、チームマネジメント(人事的な)の経験も問われることが多い。40代の転職はマネジメント経験がないと詰む可能性がある

おおよそ8割程度の確率で内定が出るので、転職活動自体は迅速に進み内定ハンター状態になっていた
内定を得るまでは順調だったのだが、間抜けにも内定がいくつか出た段階で重要な点に気づく
募集要項の上限値で年収が1000万円を余裕で越えるものの、その上限値で年収を提示してくれる企業はほとんどいないのだ
実際に提示される年収はだいたい1000万円がギリギリで、既存従業員と水準を揃える意味もありそれを大きく超える大手メーカーの経企ポジションは現実的にはあまりないのである
活動当初は年収が大きく下がっても労働時間がその分減れば良いかと思っていたのだが、結構な責任を求める(少なくとも先方の話はそう聞こえる)ため年収1000万円では割に合わない予感がひしひしとする。もちろん入ればぬるま湯環境という可能性もあるが、担当者や将来の上司候補と話した感触では何か嫌な予感がしたのだ。直感は大事にすべきである
将来役員を目指してもらって~とか、M&Aを積極的に行っており刺激が~とか言われても特にその希望はこちらにはない。希望するのは10年間良い感じの給与でWLBを維持できる職場である。やりがいとか刺激はもう求めていないのだ

色んな業界を受けたが、最終的に勝利条件を達成できそうな条件が引き出せたのは製薬と医療機器業界であった
外資系製薬とか医療機器業界は年収水準が高いのだが、英語が苦手という弱点から考えるとレポートラインで日常的に英語を使うのはストレスがたまる可能性が高い
よって、若干年収水準は目標に足りていないが日系の医療機器メーカの内定を押さえつつ、並行してコンサルも受けてみることとした

転職活動 コンサル編

コンサルからコンサルへの転職はチョロい
どのファームで何を何年やったかが説明できれば、だいたいそいつは何ができるかわかるからだ。現時点ではまだかなり売り手市場なのもあり、受けると即内定くらいの勢いで話が進む
よって受けるのは本当に興味があるところと、WLBが良さそうなところに絞った

具体的に受けたのはBig4と、某シンクタンクである
Big4は受けたチームが必要とするスキル・知見と個人的な興味が完璧にマッチしており、業務内容的にも興味がそそられる内容であった
一方某シンクタンクは元戦コンでWLBに疑問を持って転職してきた人が直属の上司になりそうであり、WLBの充実にかなり理解があった

この2社から内定が出た段階で、転職先を決定する脳内会議を週末に酒を飲みながら実施した

結論

今回の転職活動では、最終的に日系医療機器メーカ、Big4、シンクタンクの3択に絞り込んだ
オファー時の給与面で言えばBig4>シンクタンク>>医療機器メーカ
給与の伸びしろでいえばBig4>医療機器メーカ(役員コースに乗った場合)>シンクタンク>医療機器メーカ(役員コースに乗れない場合)
WLB面で言えばシンクタンク=医療機器メーカ>Big4
業務の面白さでいえばBig4>医療機器メーカ>シンクタンク
という条件に見えたので(WLBは実際に働くまで完全には不明なので、話した感触から推しはかっている)、WLBと年収のバランスを重視してシンクタンクへの転職を決定した

転職先のシンクタンクは基本年収以外に分厚めの退職金制度があり、年収の20%弱の退職金が発生するシステムだったのが有利なポイントである。手取りベースでみると退職金に多めに積める給与体系は有利であり、それを含めれば含めればトリプル20を満たすことができる
WLBに関しては、Big4でシニマネの場合年数億の売上目標が発生する点も考慮すべき点である。逆に某シンクタンクは売上目標がKPIに占める比率が少ないため、目標達成の圧が少ないと想定される(人事評価制度を人事と現場の人間に別々に聞いて確認した)。降格制度が事実上ないのも相まって、将来何かで致命的に転けた場合でも働かないおじさんとして窓際で粘るカードが切れる(勿論そうならない予定ではあるが)
今回の転職はそもそもWLBを改善するために始めたのであり、なるべく労働に対する圧が低いところに行くことが優先だと判断した結果である
知的好奇心に惹かれてBig4に行かなかった判断の成否は、数年後にわかるだろう

あまりネット上にはない、燃え尽きアラフォーコンサルの転職を赤裸々に記載してみた
将来の過酷な労働の継続に不安を覚えるコンサルや、コンサル志望の方に
参考にしていただければ幸いである

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