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映画「プリズン・サークル」で対話する のび汰

こんばんは、のび汰です。
先日、母校となった大学で「プリズン・サークル」という映画の上映会が行われたので参加してきました。
これは刑務所で行われた回復プログラム(いわゆる更生プログラムの一種かな)のリアルを記録したドキュメンタリー映画です。
この上映会では、単なる映画の上映だけでなく、

  • 坂上香監督の講話

  • 学生同士のディスカッション

  • 懇親会

などが催され非常に濃い1日が過ごせたのでここに記録しておきます。

「プリズン・サークル」のび汰の感想

感想を書く前に超ざっくりとこの映画を紹介すると「刑務所内で行われるTC(Therapeutic Community)による囚人たちの変化(回復)の様子を収めた映画」といえると思います。
TCってなに?については、映画の公式サイトから文章を拝借します。

TCでは、依存症などの問題を症状と捉え、問題を抱える当事者を治療の主体とする。コミュニティ(共同体)が相互に影響を与え合い、新たな価値観や生き方を身につけること(ハビリテーション)によって、人間的成長を促す場とアプローチ。

映画『プリズン・サークル』公式ホームページより

対話がそこにある気がした

まず僕がこの上映会に参加しようと思ったきっかけは、この映画の中に「対話」の重要性を見つけることができるんじゃないかと思ったからです。
僕はここ数年、「対話」に非常に関心があります。
いまはメディア業界で仕事をしていますが、「対話」の醸成こそまさに今メディアに求められている役割だと思っているからです。
(なんか小学生のテンプレ感想文みたいな出だしだな…最近子供の感想文とか読んでるからそういう文章のクセがついちゃったのかも。おもしろいからこのままにしときます笑)

そういえば最近とんと聞かなくなったけど「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」という言葉があるように、SNSを中心としたコミュニケーションでは自分の考えが先鋭化しがちだと思っています。だからこそ、「対話」を提供する第三者が必要なんだ。みたいな。
(なんか最近この単語を聞かなくなってきたように感じるのは、多少はプラットフォーマーたちの努力で緩和されてきたとかあんのかな。どうだろう、気のせいかな)

刑務所内で行われる「対話」とはどんなものだろう。
僕が期待していた「対話」とはなんだろう。

かつては、凶悪なニュースを見るたびに「この被害者が自分の家族だったらと思うと、、、犯人はなんとしてでも極刑にすべし!」と怒りの感情が湧いていた僕ですが、もしかしたら "犯罪者が犯罪者になる理由" みたいなものにも目を向けなくちゃいけないんじゃないかと思う気持ちも無いワケではないです。結局なにが彼らをそうさせたのか。
この映画では、彼らがTCに参加する様子を通してそういったことが見えてきます。そして少なくともこの映画の登場人物たちには、どうやら幼少期・少年期の家庭に問題を抱えているという共通点がありました。
こういうエピソードが、例えば裁判などで説明されるものではなく、囚人たちの「対話」によって少しづつ明かされていくことに重みがあると感じたんです。
他にもなかなか衝撃的だったのは「2つの椅子」という対話手法で、映画の中では囚人自身の中にある2つの考えを対話させていました。よくアニメとかで天使と悪魔が出てくるあれです。
「罪を背負って生きなくてはいけない」と考える自分と「良い死に方をしたい」という自分を対話させていました。これはかなり自分で自分の精神をえぐるだろうなぁという気がしていましたが、実際に犯罪を犯してしまった囚人の対話は、想像以上にズシリと重いものがありました。
(ゲシュタルト療法というセラピー手法の一種らしく、わかりやすかった説明記事を紹介させていただきます)

メディアのあり方に投影する のび汰

僕にとっては期待していた以上の「対話」がこの映画の中には記録されていて、観ているだけなのに体力を消耗する感覚がありました。
やっぱり、この重たく黒々とした本音みたいなものを攻撃的ではない形で体外に放出するのには「対話」しかないんだなと、きっと「議論」とか「討論」ではどうしても相手にも自分にもバリアを張ってしまい、論理をどうにかしようという表面的な言葉の応酬になるんだろう。
相手の考えを知りたければ「論破」なんてもってのほかだし、関心をもって聞くこと。これに尽きる。そしてそれを囚人どうしが行っていることがすごい。
このTCの取り組みは囚人たちだけでできるはずもなく、もちろん「支援員」という方々がこの対話を仲介している。言葉のとおり「支援」しているのであって、言葉を誘導しないし強制もしていないようでした。
この「仲介」するポジションっていうのが僕にとっては非常に興味深く、なぜってそれこそまさに「メディア」のあり方じゃないかと思ったから。
ってことは、メディアが対話が生まれる情報社会を作ろうと思ったら、「仲介」っていう本来の姿に回帰しなきゃいけないんじゃないか?
とか、映画に直接表現されていることとは少し違った自分だけの発見をしたりしていました。

坂上香 監督の講話より

上映のあとには、この映画を制作した坂上香 監督の講話。監督曰く、「これは刑務所の映画ではない。「凝縮された日本」がここにあると思いませんか」というような問いかけだったように思います。(たしか)
そう思うと、この映画から自分の仕事にも通じるなんか普遍的っぽいものの発見もあながち間違ってなかったのかも。笑
また、監督はこの映画の取材中の非常に興味深いエピソードを教えてくれました。それは、この囚人たちの変化のもっとも重要な瞬間は映画に写っていない時間にあると。それは取材が許されなかったので撮れなかったそうですが、実際に囚人たちの心に変化が生まれるのは、このTCの時間を終えた直後や次のTCに向けた準備の時間に、囚人たち同士が小さな輪でお互いをさらけ出して話し合っている時間だったようです。
例えばTCのなかで思い出したくないツラいエピソードを発表した囚人に対して、「きょうはよく頑張ったな」といった声かけがあり、それが心をほぐしていくのではないかとおっしゃっていました。
それから個人的にかなり興味深かったのは、この映画の主な登場人物が全員「20代」だった理由。
実は取材時には20代~60代までの囚人を何人か追いかけていたのだけれど、映画で主な登場人物としたのは20代のみ。なぜか。それは他の年代の囚人たちは、若者たちと比べて大きな変化(回復、成長)に時間が必要なのではないかと考察されていましたので、僕は変化の大きい若者にフォーカスした結果、主人公は20代の若者たちになったと解釈しました。
若者はちゃんと変わる力を持っているのに、更生の可能性が低いと断じてしまうことへの危険性にも言及されていました。
これは自分の胸によく刻み込んでおかなくてはいけない。要するに年を取ってから考え方を変えるのは難しいということだろうと思うので。それは身の周りの人たちを見ていれば本当に合点の行く話で、、、そうならないようにしなくちゃ。
こんなふうに映画に表現しきれなかった現場のリアルがお聞きできたし、本当に価値ある上映会でした。

学生同士のディスカッション

さて、上映会はこれだけで終わりではなく、監督の講話のあとは学生同士のディスカッションがありました。(僕は一応、昨年度末で大学を卒業したわけだけど、卒業生まで参加対象を広げてくださっていたので参加することができました!)
数人のグループに分かれて感想などを話し合うスタイルで、僕のグループにはたまたま、犯罪者の更生支援の活動をしているという学生と、犯罪被害者である学生がいました。
更生支援の活動をしている学生がなぜそのような活動をしているのか興味があって聞いてみたところ、「被害者を減らすには加害者を更生させなければいないから」という答えが返ってきて衝撃を受けました。そんなことは考えたこともなかった。でも言われてみれば本当にその通りだ。なんて素晴らしい考えの持ち主なんだろうと感動しました。
この映画の中に登場する加害者たちは、家庭や周辺環境に問題があって、いてみれば彼ら自身が加害者になってしまった相応の理由があるんだなという感想を抱いていましたが、、、
このディスカッションでは犯罪被害者である方もいらっしゃって、その方は「加害者を許すことはできない」という気持ちを吐露してくれました。あぁ危ないところだった、当然ながら加害者の更生を考えるときには被害者がいることを無視してはいけない。この被害者の方は将来被害者の支援の仕事をしたいと考えているということでしたが、「加害者を憎むという気持ちだけで被害者支援の仕事をしていいのだろうか」という気持ちで今回の上映会に参加したと言っていました。この言葉も重い。かなり重たい。こういう考え方ができるもの本当に素晴らしいことです。
ここでも「対話」が僕を救ってくれたというか、なんか加害者の回復(更生)を目撃したばっかりにバランスを欠いていたかもなぁと思わされました。「対話」が成立する条件の一つには "複数の視点" 、”複数の立場” を持つことを忘れるな。

懇親会で聞く別の ”現実”

とまぁ「プリズン・サークル」をがっつり味わった僕は、もっと楽しく深く参加者同士の感想を交換しようとう思って懇親会に参加したところ、ここでもまた衝撃の ”現実” も突き付けられました、、、それは「あんなキレイな刑務所だったら犯罪犯して捕まったほうがいいんじゃないか」と考える人々の存在です。
もちろん学生の中にそういう人がいたわけではなく、学生たちの中には社会人学生もたくさんいて、施設などで働いているとそういう考えの人たちがたくさんいるといういうのです。
あまり詳しくは書けませんが、自分の身体をわざと傷つけて障がい者施設に入ろうとする人などの話も聞きました。
これが社会の "リアル" なのか。
ずっしりと重い、被害者・加害者の世界に浸った後に見せられたまったく別次元の社会。
僕の脳みそではちょっともう処理しきれません!ドラえも~~~~ん!(涙

ひとつの映画が示してくれた現実をもとに、これほどまでに多様な方々とコミュニケーションできて、ものすごく価値のある時間でした。
このような企画をしてくださった運営の皆様には本当に感謝です!!
よかった!このコミュニティに入れて本当によかった!!

コンサルまでの日々はブログで

今回はがっつり感想を書いてみたかったので、なんとなくそういう仲間が集まっていそうなnoteを選んでみました。
もし奇跡的にここまで読み進めてくださった方がいらっしゃったらコメントなど書き込んでいただけると嬉しいです。

ちなみに、僕ことのび汰がコンサル(的ななにか)になるまでの日々はこちらのブログで毎日発信中です。
学びはありませんが、未経験転職者がコンサルになることができるのかどうか、その苦しみのリアルを観測することができるんじゃないかと思います。
あわせてお楽しみにください。


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