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9/24ラブロフ外務大臣政治討論演説全文邦訳| 77th 国連総会|付録 岸田総理政治討論演説

9月24日、第77回国連総会政治討論でロシア連邦セルゲイ・ラブロフ外務大臣がとても重要な演説をしました。ウクライナ東部では2国と2州の構成主体承認住民投票が実施されています。

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NATOは加盟国が隣接するロシア国境への旅団規模の兵力拡大配備計画を示唆し、ロシアは一国でNATO全軍と戦う準備を進めていると示唆、ウクライナのロシア連邦への攻撃にNATOが与する場合、ロシアは軍事作戦ではなく全軍による戦争を開始して戦略兵器を含む全兵器を使用すると宣言しました。

24日のラブロフ外相の演説は、ウクライナ紛争はロシアとウクライナによる米国とその同盟国との代理戦争に発展する可能性を指摘し、その愚行を糺し、それを全世界に訴え、欧米が愚行続ける場合は断固戦う意思を改めて表明した欧米に対する最後の忠告とも思える歴史的な演説です。

現実は、ロシアに対峙している欧米一極主義勢力の衰退が著しい情勢にあります。それは、裏返せば、戦争派勢力がいつ常軌を逸した行動をはじめるか分からないという状況です。ウクライナによるザポリージャ原発への砲撃がその最たる例です。

換言すれば、水面下では、すでに第三次世界大戦が実質的に始まっているというのが正しいかもしれません。

すぐお隣のユーラシア大陸でまさにハルマゲドンが起きようとしています。

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ロシア連邦外務省ホームページに掲載された演説全文を邦訳して掲載します。

掲載目的は、一次情報として日本のみなさんに読んでいただくことです。特に、ロシアに対して批判的な日本の方々に読んでいただきたいのです。読んで先ず、二次三次情報になる日本のマスコミ報道との違いを感じてください。ロシアは本当に日本のマスコミがいうような残忍行為をしたのでしょうか?日本のマスコミ報道は本当のことを伝えているでしょうか?外国の報道記事を読めば、日本のマスコミとは真逆の報道がたくさん流れています。残忍な虐殺行為はウクライナ兵によるものだとか、原発攻撃をしているのはウクライナ軍だとか、数々の証言や証拠が露出され、もはやそれが当たり前になっています。紛争や戦争を起こして私腹を肥やしているのはどちらですか?米国や欧州の戦争屋の方々ではありませんか?ロシアは何の利益もありません。それでも紛争の原因はロシアがつくったのですか?そんなことは小学生でも理解できると思います。

もし少しでも疑問に感じたら、ご自分で調べてほしいのです。テレビや新聞のマスコミ報道を鵜呑みにせずに、できるだけ、一次情報を自分で調べていただきたいのです。一番大切なことは、マスコミに都合よく要約された偏向記事ではなく、一次情報を読むことです。

外務省ホームページに掲載された岸田総理大臣の政治討論演説も掲載しました。よくよく読みくらべてください。岸田総理の演説内容に違和感はありませんか?米国の同盟国としてロシアを日和見的に非難していますが、ウクライナ紛争の核心にはまったく触れていません。

私共の主観ですが、ラブロフ外相の問題の核心に迫り世界平和に貢献すべき国際機関の在り方をすべての国連加盟国に対して真摯に問いかけている演説にくらべると、つっこみどころ満載の岸田総理の演説の軽薄な内容は、日本人として、悲しく恥ずかしく思えます。日本の総理大臣の演説を聞いた国々のトップは、日本人はどういう精神をもつ民族だと思ったのでしょうか?


ラブロフ外務大臣政治討論演説邦訳全文


私たちは困難で劇的な瞬間にいます。危機的状況は拡大し国際安全保障情勢は急速に悪化しています。

私たちは、率直な対話によって互いの妥協点を探すのではなく、嘘の情報や粗末な作り話や挑発に対処しなければなりません。米国とその同盟国の行為は相互の利益的和解を図るための国際機関と、正義を保証し恣意的行為から弱者を保護するための国際法に対する信頼を損なわせます。ドイツファシズムと日本軍国主義の廃墟のなかで創設され、加盟国間の友好関係の発展を促進し、加盟国間の紛争を防ぐことを目的に設立されたはずの国際連合の創設趣旨に反する否定的な傾向があります。

今日、将来の世界秩序なるものが決定されつつあることは 明らかです。問題は、それが一つの覇権国(世界政府)が、彼らだけに利益をもたらす「規則」に従って生きることを強制するものではないのかということです。それとも、彼らの秩序に従わない人々に対する脅迫や迫害がなく、ネオナチズムや新植民地主義もない民主的で公正な世界になるのでしょうか?ロシアは断固として後者の民主的で公正な世界を選択します。我々は、同盟国、パートナー及び意志を同じくする人々と協力して、民主的で公正な世界秩序を実現するように呼びかけます。

何世紀にも渡って、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの資源による過剰消費が保証されてきた「黄金の十億」の利益に役立った世界開発の一極モデルは過去のものになりつつあります。今日、国益を守る準備ができた主権国家の形成は、平等で社会的指向の持続可能な多極構造の形成につながります。ところが、客観的な地政学的プロセスは、ワシントンとワシントンに完全に従属する欧米諸国の支配層エリート達によって、彼らの支配的地位に対する脅威として認識されています。

米国とその同盟国は、歴史のフライホイールを止めたいと考えています。かつて冷戦での勝利を宣言したワシントンは、自らを、義務を負わず不処罰で行動する神聖な権利だけを持つ、地球上の神、主の使徒の地位にまで自らを引き上げました。世界のどの国でも、そんなワシントンの行動ゾーンだと宣言することができます。特に、自称「世界の主人」を何らかの形で喜ばせてこなかったならばなおさらです。私たちは、アメリカから遠く離れたユーゴスラビア、イラク、リビアの地で何十万人もの民間人の命を奪ったワシントンの遠大な口実の下での攻撃的な戦争がどのように行われたかを記憶しています。これらの国々のどれかの国で、アメリカとその同盟国の正当な利益が本当に影響を受けていただろうか?ユーゴスラビアやイラクやリビアの国々は、英語や他のNATO加盟国の言語や欧米マスコミや欧米文化を禁止しましたか?彼らはアングロサクソン人を「非人間的」と宣言して彼らに対して重火器を使用しましたか?中東におけるアメリカの軍事作戦の結果はどうなりましたか?人権と法の支配を改善しましたか?それらの国々の政治的社会状況は安定化しましたか?人口の幸福の成長は?ワシントンが武力介入した結果、その国の人々の暮らしが良くなったという国を挙げることができますか?

「ルールに基づく秩序」というスローガンの下で一極化を復活させようとしているアメリカと同盟国は、ブロック対決思想で至る所に「分断線」押しつけています。「我々と共にいるか我々に敵対するか」の二者択一です。三つ目の選択肢はなく妥協点もありません。NATOの東方への拡大、ロシア国境での軍事インフラ構築に向けた無思慮な行為を続けながらワシントンはアジアも従属させようとしています。6月にマドリードで開かれたNATO首脳会議で、いわゆる「防衛的同盟」は「ユーロ大西洋とインド太平洋の安全保障の不可分」だと宣言しました。インド太平洋戦略のスローガンの下、何十年もの間ASEANを中心に発展してきた開放的で包括的な地域構造全体を弱体化させる閉鎖的なフォーマットが作られています。更に彼らは台湾周辺での「火のゲーム」を開始する軍事支援を約束しました。

悪名高い「モンロー・ドクトリン」が世界的な広がりを増しているは明らかです。ワシントンは、地球全体を「裏庭」に変えようとしています。反対する者を弾圧強制するやり方は違法で一方的な制裁であるにもかかわらず長年に渡り国連憲章に違反して採択され、政治的脅迫の道具として使われています。この慣行が不条理なのは言うまでもありません。制限は一般市民を襲い、医療品、ワクチン、食料などの必需品へのアクセスを妨げています。60年以上続いているキューバに対する米国の禁輸措置は、その明白な一例です。国連総会では、圧倒的多数で即時廃止を長い間粘り強く要求してきました。国連事務総長は、総会での決定事項の実施を促進することが職務であり、この問題には特に注意を払うべきです。彼はまた、パンデミック中の米国と欧州連合における制御不能なお金の排出と、炭化水素市場における欧州連合の無責任で非専門的な行動が引き起こした食糧・エネルギーの危機を克服するために最善を尽くさなければならないという特別な役割を担っています。常識に反して、ワシントン(米国一極支配派)とブリュッセル(EU議会)は、ロシアに対する経済戦争を宣言して危機的状況を悪化させました。その結果、食料と肥料・石油とガスの価格は上昇しています。我々は本年7月22日のイスタンブール協定の締結に貢献した国連事務総長の努力を歓迎します。その間、ウクライナの穀物を積載した輸送船のほとんどが最貧国には行かず、ロシアの穀物と肥料の輸出過程における米国と欧州連合議会によって作り出された財政的・物流上の障害は完全には取り除かれていません。我々は、数週間前から30万トンもの肥料が欧州の港に拘留されていることを指摘してきました。長い間、私たちは、アフリカの貧しい国々へ無料でそれを輸送することを提案し続けましたがEU議会はまったく応答しません。

オフィシャルなロシア嫌悪は、欧米で前例のないグロテスクなプロポーションを獲得しました。米国と欧州連合は、ロシアに軍事的敗北をもたらすだけでなく、ロシアを破壊して解体する意図を公然と宣言することを躊躇していません。言い換えれば、「独立した地政学的規模(ロシア連邦)」の世界政治地図からの消滅を達成することです。

ここ数十年間のロシアの行動が、どのような現実において、反ロシア派(ワシントン及びブリュッセル)の利益を侵害してきたのでしょう?ロシアの立場のおかげで、1980-1990年の軍事戦略的な「緊張緩和」が可能になったというのが事実です。我々が、かつてワルシャワ条約機構を自発的に解散したことが、NATOの存在意義を奪ったのでしょうか?あなた方は、ロンドンとパリの立場に反して無条件でドイツの再統一を支持しましたか?ドイツはヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカから軍隊を撤退させました。ドイツは旧ソビエト共和国の独立を認めました。「NATOを東方に1インチたりとも拡大しない」という西側指導者の約束を信じてプロセスが進んだ時、NATOロシア建国法の締結を通じて、実際にその約束を正当化することに同意しましたか?ロシア国境に近い脅威的な軍事インフラに近づくことを容認できないことを警告したら欧米の利益を侵害することになるのですか?

米国とその同盟国の例外主義の傲慢さは、冷戦終結後、特に破壊的になりました。1991年、ペンタゴンの副長官P・ウォルフォウィッツは、ヨーロッパにおけるNATO統合軍司令官W・クラークとの会話で、冷戦終結後、彼らは罰を恐れることなく軍隊を使うことができるようになったと率直に認めました。そして、イラクやシリアのようなソビエト政権の代理国を、彼らに挑戦することができる新たな超大国が現れるまで、5年、おそらく10年は支配します。いつの日か誰かの回顧録から、米国の戦略がウクライナとの関係でどのように構築されたか明らかになると確信しています。しかし、ワシントンの計画は既に明らかです。

米国とEUの要請によって、2014年2月の危機の解決に関する当時のウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコヴィチと野党との合意を支持したことは許されないのではないでしょうか?ドイツ、フランス、ポーランドによって保証された協定は、翌朝、ヨーロッパの調停者を辱めたクーデターの指導者によって踏みにじられました。米国と欧州連合は、クーデターの結果を認めることを拒否したウクライナ東部の人々に対して、ナティズム武装組織による残忍な虐殺行為を黙って見ていました。ロシア人をクリミアから追放し、最高指導部が「存在」を宣言したドンバスに対してロシア語教育、ロシアメディア、ロシア文化を完全に禁止するというキエフの政策にも我慢すべきだったのでしょうか?

ロシアは、ウクライナ東部で、キエフとネオナチによって行われた住民への残忍な殺害行為を終了させるための重要な役割を果たしました。2014年9月5日に、ウクライナ、ロシア連邦、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国が調印したミンスク議定書は実施されたでしょうか?2015年2月11日に、欧州安全保障協力機構(OSCE)の監督下、フランスとドイツが仲介して、ウクライナとロシアが署名したミンスクⅡは停戦を実現したでしょうか?ウクライナ東部の二つの州に幅広い自治権を認める「特別な地位」を与えるという内容が含まれた合意は履行されずに一方的に反故にされました。

長年に渡って我々はOSCE文書の最高レベルで確認された平等で不可分な安全保障の原則に基づいて、欧州における共存のルールに合意することを繰り返し提案してきました。この原則に従って、誰も他人の安全を犠牲にして自分の安全を強化することはできません。我々は、2021年12月に、これらの協定を法的拘束力のあるものにする必要性に関する最後の提案を行いましたが、米国とその同盟国は傲慢に拒否しました。

米国と欧州連合との交渉ができず、キエフ政権が自国民に対する攻撃を継続したため、我々は、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立を承認し、その地域のロシア人と住民を保護し、NATOがウクライナの領土で、実際にはロシアの国境でつくり続けてきた、ロシアの安全保障に対する脅威を取り除くための特別な軍事作戦を開始するしか選択肢がありませんでした。この軍事作戦は、国連憲章第51条に基づき、ロシアと共和国との間の友好・協力・相互扶助の条約を遵守するために実施されました。自国民に対する責任を自覚している主権的で自尊心のある国であれば、我が国と同じ行動を取ると確信しています。

現在、米国とその同盟国は、ウクライナのルハンスク人民共和国、ドネツク人民共和国、ヘルソン州とザポリージャ州で実施されている国民・住民投票に対して癇癪を起しているが、そこに住んでいる人々は、キエフ政権のトップであるV.A.ゼレンスキーが、2021年8月のインタビューで自ら人々に勧めたことに反応しているだけです。ゼレンスキーは、子供や孫の利益のために、ロシアに親しみを感じているすべての人はロシアへ行くようにとも助言しました。二国二地域の人々は、彼らの祖先が何世紀にもわたって住んでいた先祖代々の土地と共にロシアへ行こうとしています。

ヨーロッパを完全に服従させたアングロサクソン人にとって、ウクライナはロシアとの戦いにおける一消耗品にすぎません。NATO議会は、ロシア政権を、彼らの世界完全支配実現(世界政府実現)にとっての差し迫った脅威であると宣言し、中国を長期的な戦略的課題として特定しました。同時に、ワシントンが率いる「集団的欧米諸国」は例外なく他のすべての国々に恐ろしいシグナルを送っています。

米国とその同盟国にとって望ましくない人々に対して、彼らが宣言した十字軍の結果の一つは、米国とその同盟国が、彼らの利己的な利益を実現するための道具に変えつつある多国間機関の衰退です。国際機関を彼らの利己的な利益を実現するための道具に変えるという路線は、国連、国連人権理事会、ユネスコ、その他すべての多国間組織に課せられています。実際、OPCW(化学兵器禁止機関)は民営化されています。ロシア国境の境界沿いやユーラシア全域を含むペンタゴンの何百もの軍事生物学的プログラムの透明性を確保するためのメカニズムの創設を阻止するための試みが行われています。米国とその同盟国による軍事生物学的プログラムが決して無害ではないという事実は、ウクライナの領土で明らかにされた容赦ない事実によって証明されています。

私たちは、米国とその同盟国が、国連事務局を民営化し、世界の文化的文明的多様性を否定する新自由主義的思想を国連活動に導入する路線を目撃しています。それに関連して、我々は、国連憲章が定める通り、国連事務局の組織構造における加盟国の公平な地理的代表権を保証し、一群の国による国連事務局支配を阻止することに最大の注意が払われるように要請します。

国連本部の"ホスト国"の義務に関して、国連の作業に全加盟国が参加するための通常の条件を保証する義務に関して、ワシントンが、事務局とアメリカ政府との間の協定に基づく義務を履行しなかったことに関連して耐え難い状況が起きています。この協定は、国連事務総長に定められた義務を履行する責任があります。我々は、協定事項を遵守していないただの慣性を受け入れることはできません。

安保理の特権を損なわせる各国の動きは懸念事項です。もちろん理事会も国連全体も時代に適応させるべきです。我々は、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ諸国の代表の参入が増えることによって安全保障理事会の作業が民主化されるという見通しをもっています。特に、インドやブラジルは主要な国際的プレーヤーであり、安保理常任理事国としてふさわしい候補者であることことを強調します。

今日、これまで以上に、すべての加盟国が人類の運命に対する集団的責任を回復するために先ず重要なことは国連憲章の目的と原則へのコミットメントを改めて再度確認することです。

その目的のために、2021年7月に創設され現在20か国が参加する国連憲章擁護グループがあります。グループの目的は、有害な一極主義に対して国際法の普遍的規範を厳格に遵守させることです。私たちは、グループの目的を共有する国々に参加を呼びかけます。多くの国々が参加することによって、非同盟運動、BRICS、SCO及びASEANが大きく前進する可能性を秘めています。

米国(ワシントン)と欧州連合(ブリュッセル)は、あらゆる国において、民主主義が社会形成のモデルだという彼らの概念を積極的に押しつけていますが、国際情勢を鑑みて、米国と欧州連合は民主的規範に導かれることをけっして望んでいません。最近の例を挙げれば、ウクライナの状況です。ロシアは、民主的な立場を詳細に実証して数年前から実践しています。しかし欧米は民主的規範に反対を宣言しました。欧米は国際社会の国々に対して、各国が取る立場を自由に決めさせていると思うかもしれませんが、欧米は各国に対して「選択の自由」を与えていません。彼らは、自由にしようとする国々を脅迫し弾圧します。彼らはロシア経済制裁に加わらない国々を脅迫します。欧米による、そうした脅迫行為は、民主主義ではなく独裁主義であり、少なくとも独裁制を押し付けようとする行為であるのは明白です。

米国とその同盟国は、民主主義で禁じられている独裁という方法で蓋然的な覇権を維持しようとしているという印象があります。覇権を維持するための外交手段として、経済、スポーツ、情報、文化などの各分野において対峙する相手に対する違法な制裁が行われます。ニューヨーク、ジュネーブ、ウィーン、パリで開催される国際イベントへの代表団のビザで同じ問題を抱えるのは、多国間での議論において代替的な提案を防ぐために競争相手を排除したいという彼らの願望の現れです。

私は、国連を守り、世界機関(WTO)が、加盟国同士の利益バランスを見いだすための誠実な会議の場としての評価を回復することが必要だと確信しています。そうしたアプローチが、国連における、私たちの国家的イニシアチブ推進の指針になっています。

国連軍縮会議で検討中の日中国際条約草案の目標である宇宙空間への武器の配置を包括的に禁止することは根本的に重要なことです。

国際情報セキュリティを確保する方法に関する協定の国連総会のオープンエンド作業部会の枠組み内での調整、並びに特別委員会に基づく犯罪目的のための情報通信技術の使用に対抗するための普遍的条約の策定を含むサイバー空間の保護の任務に特に注意が払われるべきでです。

我々は、テロ対策事務所及びその他の国連テロ対策機関を引き続き支援します。

我々は、大ユーラシア空間における努力を結集するため、国連とCSTO、CIS及びEAEUとの間の関係のダイナミックな発展を引き続き促進します。

ロシアは、地域紛争を解決するための作業を強化するよう求めていいます。我々は独立したパレスチナ国家の創設における行き詰まりを克服し、NATOの侵略によって破壊されたイラクとリビアの国家性を回復し、シリアの主権に対する脅威を中和し、イエメンにおける持続可能な国民和解プロセスを確立し、アフガニスタンにおける困難なNATOの遺産を克服することが優先事項であると考えています。我々は,イランの核計画に関する包括的共同行動計画を当初の形で復活させ、朝鮮半島問題の公正かつ包括的な解決を確保するように努めています。アフリカにおける多くの紛争状況は、それらを地政学的「ゼロサムゲーム」の対象にしようとする誘惑を放棄し、アフリカ連合のイニシアチブを支持する外部プレーヤーの統合を必要としています。懸念されるのは、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナの状況であり、米国とEUは、国連安保理決議第1244号とデイトン和平合意に具体化された国際的な法的枠組みを破壊するために頑なに取り組んでいます。

変化の時代にあって、先人たちの知恵に支援と慰めを求めるのは人間の本性ですが、その多くはそれほどの試練には陥っていません。第二次世界大戦の惨禍を思い出したハマルスキョルド元国連事務総長が適切に述べたように、「国連は人類を天国に連れて行くためではなく、地獄から救うために創造された」。こうした言葉は、これまで以上に意味があります。私たち全員に、将来の世代の安全で調和のとれた発展のための条件を作り出すための個人的および集団的責任を認識するよう訴えます。すべての人がそうするためには政治的意志が必要です。

我々は誠実な作業の準備ができており、世界秩序の安定は、真の民主主義の重要な法定原則です。すなわち国家の主権的平等の尊重に基づく国連外交の起源への回帰によってのみ世界秩序の安定は確保できると確信しています。


《参照》2022年9月24日、ラブロフ外務大臣の記者会見

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岸田総理大臣政治討論演説全文

外務省ホームページに掲載された演説全文を掲載します。


今我々は、歴史的な分水嶺に立っています。

 国連創設から77年が経ちましたが、我々はウクライナや世界各地の惨状を目の当たりにしています。大戦の惨禍を繰り返さないと固く決心した国連の創設者は、我々が直面する国際秩序に対する挑戦を見たならば何と思うでしょうか。

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 国連憲章の理念及び原則に賛同しているからこそ、我々はこの議場に集っています。加盟国が団結して平和と安全を維持し、全ての人が経済的・社会的に発展する国際社会の実現、それこそが我々が目指す姿ではないでしょうか。

 法の支配が根付いた国際秩序が維持されることが不可欠です。国連はそうした秩序形成に中核的な役割を担ってきました。

 ところが現在、この国際秩序の根本が大きく揺らいでいます。ロシアのウクライナ侵略は、国連憲章の理念と原則を踏みにじる行為です。力による支配ではなく、全ての国が法の支配の下にあるのが重要であり、断じてそのようなことを許してはなりません。

 国連は、大国のためにあるのではない。全ての加盟国の主権平等の原則に基礎を置き、国際社会全体のためにあるのです。力を有し、声の大きな国の主張だけでなく、届きにくい、しかし正当な声を実現するために存在するのです。

 世界各地で既存の国際秩序が試練に曝されている今こそ、国連憲章の理念と原則に立ち戻り、国際社会における法の支配に基づく国際秩序の徹底のため力と英知を結集する時です。そのためにどうしても実現せねばならないのが国連の改革であり、国連自身の機能強化です。コンゴ動乱の停戦調停の途上で殉職したハマーショルド事務総長は「国連諸機関に欠陥があるとすれば、それを正す責任は私たちにあります」と述べました。国連の掲げる理念を実現していくために、我々は国連の機能強化に正面から取り組む必要があります。

 改めて日本の国連、そして多国間主義への強いコミットメントを示すべく、本日私はここに国連の理念実現のための日本の決意を表明します。その内容は、

 まず第1に、国連憲章の理念と原則に立ち戻るための安全保障理事会を含む国連の改革、そして、軍縮・不拡散も含めた国連自身の機能強化です。

 第2に、国際社会における法の支配を推進する国連の実現です。

 第3に、新たな時代における人間の安全保障の理念に基づく取組の推進です。

 議長、ご列席の皆様

 安保理常任理事国であるロシアによるウクライナ侵略により、国連の信頼性が危機に陥っていることを直視しなければなりません。その信頼を回復するために、我々国連加盟国が行動しなければならない。

 これまでもしばしば安全保障理事会の機能不全が指摘されてきました。私たちは、もう30年近くにも亘り、この問題について議論を重ねてきました。しかし、本当に必要なのは議論のための議論ではなく、改革に向けた行動です。常任理事国の中にも、改革に向けた意欲を見せる国々があります。交渉無くして改革なし。様々な立場は、交渉なくして妥協も収斂もない。安全保障理事会の改革に向けて、文言ベースの交渉を開始する時です。2024年の未来サミットは、国連のあり方を幅広く見直す絶好の機会です。是非、有識者を含め、幅広い英知を結集し、機運を高めていきましょう。
ロシアの侵略による国際秩序の危機に対し、最も強い言葉でそれを遺憾とする総会決議の圧倒的多数による採択。その時国連は、闇夜の灯台のように国際社会の進むべき方向を明確に示すことができました。この総会こそが、全加盟国を代表し、国際社会の大義がいずれにあるのかを示す唯一の普遍的な機関です。

 日本は、安全保障理事会の改革だけでなく、総会の更なる活性化にも真剣に取り組み、国連全体が平和と安全の維持に一層大きな役割を果たせるよう後押ししていく決意です。また、日本は、幅広い国連の活動を支える事務総長を支持します。

 今般、ロシアが行ったような核兵器による威嚇、ましてや使用は、国際社会の平和と安全に対する深刻な脅威であり、断じて受け入れることはできません。

 私は、広島出身の総理大臣として、被爆者の方々の思いも胸に「核兵器のない世界」の実現に向けて、並々ならぬ決意で取組を推し進めています。国際的な核軍縮・不拡散体制の礎であるNPT体制の維持及び強化に向けた、世界が一体となった取組は、先月、ロシア一か国の反対により合意を得るに至りませんでした。

 圧倒的多数の国々と同じく、私も深い無念を感じました。しかし、諦めてはいません。最終成果文書のコンセンサス採択まであと一か国まで迫ることができたからです。同文書案が今後、国際社会が核軍縮に向けた現実的な議論を進めていく上での新たな土台を示しました。唯一の戦争被爆国であるという歴史的使命感を持って、日本は、「核兵器のない世界」の実現に向けた決意を新たに、現実的な取組を進めて参ります。長崎を最後の被爆地とせねばなりません。

 本年は、小泉総理と金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が署名した日朝平壌宣言から20年です。同宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指す方針は不変です。日本は、双方の関心事項について対話する準備があります。私自身、条件を付けずに金正恩(キム・ジョンウン)委員長と向き合う決意です。あらゆるチャンスを逃すことなく全力で行動していきます。

 日本は平和構築の分野でも長期に亘り、貢献してきました。1992年、カンボジアで初めて本格的にPKOミッションに参加しました。

 それから30年。マリ、中央アフリカ、レバノンなどの現場で、ブルーヘルメットをかぶった多数のカンボジア隊員が平和と未来を守っています。ティアウ・チャンルティ中佐(当時)は、日本によるPKO訓練の後、レバノンに派遣された一人です。その後、カンボジア軍のPKO訓練センターで後進の指導にあたるなど、平和の担い手として活躍されています。

 日本のPKOへの貢献を通じて生まれた平和の灯が、世代を越え、国境を越えて広がっていくのです。日本はそれを支援します。

 議長、ご列席の皆様、

 次に、日本は、国際社会における法の支配を推進する国連の実現に尽力します。

 法の支配は、特定の国、特定の地域の独占物ではありません。脆弱な国にとってこそ法の支配は重要であることを思い起こすべきです。

 国際法に基づいた法の支配を強化していくことが、長期的に見れば、全ての国に裨益し、持続的な成長と健全な国際社会の発展につながります。

 このような信念のもと、日本は、各国と協力しながら「自由で開かれたインド太平洋」実現をはじめ、様々な分野において積極的な役割を果たしてきました。

 1970年、国連総会は、厳しい対立を粘り強い対話により乗り越え、「友好関係原則宣言」を採択しました。先人たちの知恵の結晶であるこの宣言は、今日においても、法の支配を促進するための基本的原則を導き出す基盤です。

 この宣言からは、(1)「力による支配」を脱却し国際法の誠実な遵守を通じた「法の支配」を目指すこと、(2)特に、力や威圧による領域の現状変更の試みは決して認めないこと、(3)国連憲章の原則の重大な違反に対抗するために協力すること、という基本的原則が浮かび上がってきます。

 これらの基本的原則こそ、分断の深刻化が懸念される目下の国際社会を繋ぎ合わせ、人権尊重と持続可能な開発を達成するための基礎となるものであると確信します。

 日本は来年1月から、安全保障理事会の非常任理事国となります。大きな声だけでなく小さな声にも真摯に耳を傾けながら、国際社会における法の支配を強化するべく行動する考えです。

 議長、ご列席の皆様、

 日本は、新たな時代における人間の安全保障の理念に基づく取組を強化して参ります。

 人々が不安と恐怖から解放され、質の高い生活を送る。人間の安全保障の理念は変わりませんが、我々は今、歴史的な分水嶺に立ち、新たな挑戦に直面しています。今日、パンデミックに加え、他国への武力の行使や威圧、食料やエネルギー安全保障、インフレや気候変動などの問題が相互に結びつき、これまでになく多くの人々の安全が脅かされ、貧困と疾病が深刻化しています。

 誰一人として取り残さない社会を目指すSDGs。その達成のためにも、新たな時代における人間の安全保障の実現が求められています。その際、重要なのは、個人、社会、そして国家のそれぞれが、時代の変化と挑戦に対応するためのレジリエンスを高めることです。

 ウガンダのアジュマニ県は、周辺諸国から難民の流入増大、ウクライナ情勢による物価高騰など、困難かつ複合的な課題に直面しています。今日の世界が直面する挑戦の一例です。

 同県の行政官、モイニ・フレッドさんは、JICAの研修で難民・自国民双方の意見を取り入れて行政を進めていくノウハウを学びました。アジュマニ県は自分たちも経済的に苦しい中で、難民支援を止めることなく行政運営を続けており、フレッドさんは民族・国籍の対立のない地域作りのために奔走しています。

 国際社会の秩序が揺らぎ、人々の不安が高まる中、日本は、人間の安全保障信託基金を通じた取組促進も通じ、国連と共に新たな時代における人間の安全保障の実現を進めます。また、人への投資を惜しみなく実践していきます。

 本年8月のTICAD8でも、私は人への投資を重視しつつ、アフリカに今後3年間で官民総額300億ドル規模の資金の投入を行うことを表明したところです。アフリカ以外の世界各地でも、日本は人材育成や能力構築に力を入れます。私は、教育は平和の礎という信念のもと、「教育チャンピオン」に就任し、国連教育変革サミットの成果も踏まえ人づくり協力を進めます。

 新型コロナ・パンデミックは、人々の健康と、疾病から人を守る取組の重要性を示しました。日本はCOVAX等を通じたワクチン関連支援を含め総額50億ドルの新型コロナ対策を進め、グローバルファンドに対し、次の3年間で最大10.8億ドルを新たに拠出することを決定しました。日本は、来年主催するG7に向け、国際保健の枠組み強化や、新型コロナを踏まえた新たな時代のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成にも引き続きリーダーシップを発揮します。

 食料安全保障のための緊急支援と食料システムのレジリエンス強化支援、国際電気通信連合(ITU)等の取組を通じた情報通信分野での国際標準・規格作り等。日本は、人々が安心して質の高い生活を享受できる環境作りへの支援も着実に実施しています。また、こうした取組を進めるためにも、日本は開発協力政策の基本方針である「開発協力大綱」を改定します。

 私は、国際社会が抱える現在と将来の諸課題への対応を「我々のコモンアジェンダ」として示した、グテーレス事務総長のリーダーシップを支持します。歴史が大きく変わりつつある今、日本は、新たな時代における人間の安全保障の理念の下で、世界中の苦しむ人々を支えます。法の支配に基づく国際秩序に支えられた、平和と安定の維持に向け、国連及び各国と力を合わせて、取り組んでいきます。

 議長、ご列席の皆様

 歴史の分水嶺に立つ今だからこそ、日本は、国連に対する強い期待を持ち続けます。時代は変われど、変わらないもの。それは国連の理念と原則です。私は、その確信を持って、みなさんと共に国連の強化に向けた道のりを歩んでいく決意であります。

 御清聴、ありがとうございました。

エムケイコンサルティング
DEU 永野由美・東 心咲  USA 氷室玄司