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【コンサル物語】私が歴史物語を書く理由

2020年頃にとても面白い本を読みました。『帳簿の世界史』です。南カリフォルニア大学の歴史学部教授ジェイコブ・ソール氏(HIST Faculty Profile > Department of History > USC Dana and David Dornsife College of Letters, Arts and Sciences)が会計・帳簿の歴史を一般向けに描いたもので、専門書とは全く違う物語の世界がそこに描かれていました。歴史と会計の面白さがいっぱい詰まったその本を毎日夢中になって読んだことを覚えています。

会計・帳簿業務に係わるすべての経理部員に推薦したい本です。きっと日々の業務に誇りを持てるようになる内容だと思います。会計の歴史を扱った書籍は最近たくさん出版されているので、その中の一冊として既に手にとっている方もいらっしゃることでしょう。

改めまして、コンサル物語を執筆している seizanry です。今は会計周りのコンサルタントをして生計を立て、週末に記事を執筆しています。

『帳簿の世界史』との出会いが今の仕事の成立ちやルーツをもっと知りたいと思うきっかけになり、会計士とコンサルタントの歴史への興味が湧きました。それから同じようなテーマの本を読み続けるきっかけとなりました。

ところが会計士やコンサルタントの歴史や成立ちを調べていくと意外と一般向けにまとまった書籍やサイトが少ないことに気づきました。それなら自分で書いてみようと思ったことがコンサル物語を書くきっかけです。興味が続く限り書いていこう思っています。

コンサルタントを目指す学生の方々やコンサルタントへの転職を考えている方々、既にコンサルタントや会計士として活躍されている方々にとって、少しばかり日々の活力になれば最高だなと思って書いています。

一人でも多くの方に読んでもらえるような記事を書くことを心がけていますが、実際書き始めてみるとなかなか大変だと感じるばかりです。

コンサルティングの歴史を書くとなりますと書籍やインターネットから必要な情報を集めるわけですが、集めた情報を単につなぎ合わせるだけでは何も面白くない、そのような難しさです。私は大学で歴史学を学びましたが、自分で歴史記事を書いてみて初めて大学時代に教わったことを少し理解できました。

歴史は多面的なものなので、どの視点、どの立場から語るかによって全く違うものになるということ。だから、歴史を書くときには自分の立ち位置を明確にしないと、読む人に正しく伝えることができないと感じます。立ち位置をはっきりさせることで、書き手の主張は読み手に伝わりやすくなる、とも言えるかもしれません。(主張に賛同するかは別の話ですが)

コンサルティングの歴史も、学者・研究者が書いた本、コンサルティング会社の社史、ジャーナリスト本など元ネタは多士済々です。参考資料として利用する場合には、それぞれの位置づけに注意し補完し合うことも必要です。

歴史について書かれているものは、ともすれば事実の羅列になっているものがたくさんあります。それを読んで面白いと感じるか、面白くないと感じるかの違いには、描かれている時代の背景や人物についてどれだけ周辺の付加情報を知っているかによることが多くないでしょうか?

私はそう感じることがあります。だから、コンサルティングの歴史を書くにあたっては、書いている時代や人物の周辺情報をできるだけ補足することで、少しでも多くの方に面白いと思ってもらえるようにと考えています。

また、描かれている対象が今の時代にどう繋がってくるのかということも大切です。コンサル物語を読んでいる人は今の時代の人です。今との繋がりがあると一層興味を持てるかもしれないと思ってます。

例えば、コンサル物語は19世紀から20世紀そして今のアメリカを舞台にした物語ですが、その中でプライス・ウォーターハウス(後のPWC)という会計事務所とアーサー・アンダーセンという会計事務所を中心とした物語が展開されていきます。この場では非常に雑な説明になりますが、この2社の歴史的な関係がダイナミックで非常に面白いのです。

19世紀末にニューヨークでアメリカの事業を始めたプライス・ウォーターハウスと、そこで会計士としてのキャリアをスタートさせたアーサー・アンダーセン。アンダーセン氏はプライス・ウォーターハウスを辞めた後で自身の会計事務所を設立。そのアーサー・アンダーセン社は20世紀後半には世界最大のコンサルティング会社になりながら、1989年コンサルティング部門は会計事務所から独立、その後アクセンチュアとなります。

一方コンサルティング部門に独立されたアンダーセン会計事務所は、数年も経たないうちに内部に再びコンサルティング部門を設立しますが、2002年にエンロン事件で会計事務所自体が消滅。その時のコンサルティング部門は紆余曲折を経て2009年にプライス・ウォーターハウス(当時はPWC)に買収されました。なかなか面白い話だと思いませんか?

このようなことを考えながらコンサル物語を書いています。興味を持っていただけたらぜひ続けて読んで見てください。

『帳簿の世界史』ジェイコブ・ソール(著)村井章子(訳)

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