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条件分岐型短歌連作『空色マルチシナリオ』

こんばんは、短歌はお好きですか?あるいはゲームはお好きですか?

この記事では、私のご用意した短歌30首をゲームとしてプレイしていただきたいと思います!

ルール
・読者…いえ、プレイヤーのあなたは短歌の主人公になりきってください。   
 主人公は青春時代の「君」との思い出を引きずった青年です。
・歌の後に指示がないときは、そのまま次の歌に進んでください。
・歌の後に指示があるときは、その通りの順番で読み進めてください。
 指示に条件分岐が含まれるときは、片方を選んでみましょう。

マルチシナリオ型のゲームのように、あなただけの物語が展開していきます。

あなたは最短経路で青春を脱出できるでしょうか!?


GAME START!

01  君と見た空の色さえ褪せてゆく徐々に心が石化してゆく

02  ぼくがなにも言わないうちにネモフィラは青く光って消えてしまった

きみを よびとめる →03へ
きみを よびとめない →05へ

03  出会った日の草の匂いに、逆光に、名を尋ねあう声にふれたい

04 誘わなきゃ二度と会えないと思ってさ。書店に至る坂をのぼった

20へ

05  改札にただ見送った 登り棒に座れなかった子供のように

06 あの夜にジャングルジムのてっぺんに登っていたら月にさわれた

07  君が去って千回は日が沈んだが本当の夕焼けに遭わない

08  僕を成す水が単語が少しずつ君の知らないものに置き換わる

09  真っ白な光が街を蝕んで二人の定理を消してゆく朝

ひとりで いい →10へ
ひとりは いやだ →11へ

10  歳をとり吾輩の辞書は厚くなり痛みを痛みと思わなくなる

14へ

11 好きだった本ほど波の遠くへと投げ捨てるこれで大人になれる

12  君でない人らと笑う 引き出しの貝殻は波音を忘れる

13 半角の隙間のような瞬間に君を想ったキー叩きつつ

14  糖分は脳で燃やされ遠い夏の眩しい橋の記憶に変わる

15  終止線を強く引いてもリピートを書き足すように君を思い出す

でんわを かけない →16へ
でんわを かける →18へ

16 濃青色沈殿ターンブル・ブルーによどむ記憶から君の言葉をよりわけていく

17  ピロティーの風を好きだとはにかんだ論敵きみは敵ではなかった

07へ

18 言い差しが出合い頭にぶつかればいつでも君が譲ってくれる

19  絡まった糸を辿って見つけあう知らない鞄、よく知った笑み

20  「合理的な人になったね」夕闇の静かな水面にさざなみが立つ

21  視細胞 破骨細胞 何者かになってしまえば隣り合えない

かこは すてられない →22へ
かこは すてよう →24へ

22 図書室の棚も廊下の黄緑も道草もアルバムは知らない

23  胸に射す朝陽を文字にしたかった息を切らせてあの教室で

19へ

24  雑踏に黒いスーツで紛れ込み時代の本の一文字になる

25  さよならだ心の部品のいくつかを君と互いに取り替えたまま

さびしい →26へ
さびしくない →28へ

26 ここからじゃ一等星しか見えないね、そんなことから話したかった

27 もう僕の声が半分まざってるね君の台詞を思い出すけど

12へ

28 あの駅のホームの端の岬にて君の手にふれなくてよかった

29 白昼を星空をまた白昼を歩くよきみとではないにせよ

30 大人になる 君と眺めた空の色も閉じ込めながら結晶となる

GAME CLEAR!

最短経路で青春を脱出できましたか?
え、回り道が多かった…?
そのほうが多くの歌を味わっていただけたかと思います。
どんな経路の青春が得なのか、なんて分かりませんね。

お付き合いいただき、ありがとうございました!