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Foxing - Nearer My God (2018)

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総評: 7/10

ロックの真の力強さを感じる作品だ。これを聴いた後では、巷に溢れる「ロック」アルバムは、全てが消費者向けの商品であるかのように思えてしまう。

ヒステリックなボーカルが、喜怒哀楽を包み隠さず最大限に表現するバンドサウンドに乗る。自分の感情を音として爆発させることだけに目を向けている。体裁を客観視することは一切無い。その眩しいまでに迷いのない姿は、逆にどのバンドとも比較しがたい。そんなバンドは名バンドが多い。その意味で言えば、Brand NewやCymbals Eat Guitarsと並べることが出来るかもしれない。

ただ、その2バンドくらい王道なら良かったのだが、本作についてはひとつ言っておかなければならないことがある。それは、曲のアレンジが凄くヘンだということだ。例えば"Gameshark"。ギャグのようなメタルサウンドに素っ頓狂なファルセットが乗る様はさながらMuseだが、これを良しとした神経を疑う。無駄にリヴァーヴとエコーを効かせ9分も駄々をコネ続ける"Five Cups"も明らかにヘン。映画音楽のようなストリングスに打ち込みを乗せる"Heartbeats"は特に奇妙だ。かと思えば"Bastardizer"はThe Cranberriesみたく清純な天上の名曲であり、実に気味が悪い。

この人たちにとっては感情ありのままを音に込める過程こそが重要なのであり、その出来上がりの姿には無頓着なのかもしれない。冷静に本作を評価するなら、このとっ散らかり過ぎたサウンドは作品への集中力を大きく阻害する要因であり、マイナスポイントになるだろう。

だが、このバンドに関しては、このヘンな個性を保ちながら、行けるところまで行ってほしい。久しぶりに「絶対失敗するだろうことにも果敢に挑戦し、ギリギリ失敗寄りで終わる」バンドを聴いた。思い返せば私の好きなロックバンドは、みんなそうだった気がする。毎週量産され続ける「名作過ぎてつまらない名作」に飽きた方はどうぞ。

1曲目は文句無しにカッコいい。Brand New並みの武者振るいするスケールとスリル。この音でアルバムを統一出来ていたらどうなっていたのだろう。2,3,5も比較的王道の10年代エモ。Into It Over Itや、Tiny Moving Partsなども思い浮かぶ。この手の曲が無性にカッコいいことから、実力自体は相当なものなのだと分かる。


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