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第15章:いにしえのゆうしゃ の たーん

”幸せとは他者への貢献感である”。僧侶は驚いた。なぜなら、勇者はこれまで他者がどう思おうと気にすることではないとの理論を展開していたからだ。

僧侶「勇者さま、他者への貢献感こそが幸せであるといいながら、他者がどう思うか気にするべきではないとおっしゃていました。矛盾していませんか?」

勇者「いえ、矛盾はしていませんよ。なぜなら、あなたが他者への貢献感を得るのに、他者の承認はいらないからです。

僧侶「えっ?」

勇者「例えば、落ちているゴミを拾う、これは明確な他者貢献です。誰にも見られなくとも、誰に褒められることなくとも、あなたは他者貢献感を得れば良いのです。」

僧侶「なるほど。」

勇者「道具屋に寄付箱が置いてありますよね。今度、寄付をしてみてください。あなたは、所属する小さなパーティーにおいて自分が無力だと悲観しているかもしれませんが、より大きなパーティーにおいては、人の命を救うほどの貢献ができているのです。その自覚ができれば、自身の存在価値を見出すことができますよ。」

僧侶「それなら簡単にできそうですね。是非、今度やってみたいと思います。小さなパーティーですら役立たずな私が、どうやってもっと大きなパーティーに貢献できるのか疑問に感じていましたが、こんな私でも役にたてるのだと少し自身がわきました。」

勇者「もう一つ、幸せのための重要な要素"自己受容"についてお伝えしておきましょう。」

僧侶「自己受容?自分を受け入れる、、ということですよね。最近、自己肯定感という言葉をよく耳にします。同じ意味でしょうか。」

勇者「自己受容は、自己肯定とは少し違います。自己肯定は自分自身を正しいと肯定することですが、現実、あなた自身のすべての行いを肯定しきることは難しいのではないでしょうか。」

僧侶「えぇ、むしろ否定し続けてしまっています。後悔の塊ですね。」

勇者「決して珍しいことではありません。誰でもミスはします。むしろ見ようによってはミスばかりでしょう。自分の活動や考えを肯定しようとすれば、どうしても肯定しきれない事にぶつかります。」

僧侶「ええ、その通りです。」

勇者「一方、自己受容はありのままの自分を受け入れることです。自己肯定と異なり、自分を無理に正しいと思いこもうとする必要はないのです。」

僧侶「ありのまま、、でも、、それでは、正しく、良く生きようとするのではなく、ただ自堕落に"しょうがないしょうがないと自分に言いきかせて生きる"、発展のない人生になってしまいませんでしょうか。」

勇者「それは誤解があります。自己受容とは、自分自身をありのまま受け入れた後、”これからどうするか”と考える思考です。」

僧侶「これから、、ですか。」

勇者「そう、例えば過去の自分というのは、変えられません。起こってしまった事について、修正することはできません。ただ、その意味づけを変えることはできます。前に、人は原因ではなく目的に基づき行動をすると申し上げましたね。あなたは過去の事実を原因に行動をとるわけではありません。過去の事実にどのような意味をつけるかは今のあなたができることです。それにより、あなたは、これからどうするかを決めることができるのです。」

僧侶「私に、、私にそんなことが本当にできるでしょうか!」

勇者「できます。あなたに必要なのは勇気だけです。」

僧侶「勇気ですか?」

勇者「勇者になる時、はじめの講習で習う言葉があります。それは"変えられないものを受け入れ、変えられるものを変える勇気をもつべし"、400年前、魔王を封印した、いにしえの勇者が残した言葉です。この言葉の意味を当時は本当の意味で理解できていませんでしたがね。」

僧侶「、、、勇気、、、なるほど。では、私も今日から勇者ですね。」

[攻略の手引き]

◯ゆうしゃのこころえ 習得レベル1 ゆうしゃ
・・・古の勇者から伝承される勇者としての目指すべき姿として、"変えられないものを受け入れ、変えられるものを変える"勇気をもつべしという言葉がある。肩書きが勇者になると一度は教わる言葉だが、本当の意味で理解するものは少ないといわれる。

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