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第25章 たびびと の たーん

人の脳にある危機対策マニュアルは、強いイメージ=妄想により、良くも悪くも書きかわる。この書き替えのコツは魔法を覚える時のコツと同じだと勇者は言う。

僧侶「魔法を覚えるコツとは、、実物をみて、何度も、強く、イメージして、、、ようするに、たくさん練習をしなさいということでしょうか。」

勇者「まあ、そうですね。せっかくなので、もう少し脳の仕組みも含めて理解しましょう。」

僧侶「よろしくお願いします。」

勇者「魔法というのは、より強くイメージできた時、その強さが増します。この感覚はご経験がある事でしょう。」

僧侶「えぇ。そういえば、学生の頃、竜巻が家の近くを通過したことがありました。その時の轟音が、はっきりと耳に残りまして、それ以来、そこまで得意ではなかった風魔法がぐんと強化されました。あれも強くイメージができるようになったからかなと思っています。」

勇者「そうですね。今あなたは、轟音が耳に残ってるとおっしゃいました。これが重要なポイントで、イメージする際には、なるべく多くの五感を利用することが望ましいです。」

僧侶「五感を、、ですか。」

勇者「たとえば、火がメラメラと燃えるという視覚的イメージ、風がビュービュー吹く聴覚的イメージ、死臭などの嗅覚的イメージ、氷の冷たさなどの触覚的なイメージといった具合に、魔法によって、強く意識する五感は異なったりしますよね。」

僧侶「あんまり意識した事がありませんでしたが、たしかにそうですね。」

勇者「魔法の中でも一番難しいとされるのが、雷魔法ですね。ピカッと光る視覚的イメージ、ゴロゴロと激しい地鳴りのような聴覚的イメージ、気圧の変化や電気に痺れる触覚的イメージ、これらをまとめてイメージする想像力が必要となります。」

僧侶「なるほど、、たしかに、雷魔法は難易度が高く、勇者の中でも限られた方しか使えないですよね。」

勇者「炎魔法であっても、視覚イメージだけで創造した炎よりも、焦げた臭いや、熱さ、燃える音を合わせて想像したほうが、圧倒的に強力になります。練習を繰り返すことで、その発動の時間も短縮されます。」

僧侶「わかります。」

勇者「これは練習を繰り返すことで、脳内でイメージが浮かびやすくなるよう、脳にパターンが刻まれていくからです。実際には、脳内で連想をしやすくするため、関連するシナプス同士の接続ができていきます。これは、草が生い茂った場所を、たくさんの旅人が何度も同じ場所を歩くことで道ができ、道ができることで人が歩きやすくなるという感じとです。」

僧侶「なるほど、作られた道が、対策マニュアルということですね。ここまで少し整理させてください。」

勇者「そうしましょう。」

僧侶「脳内には、危機対策マニュアルがあり、そこには、さまざまな脅威に対して、全身に指示する命令が記載されていると。例えば、ナイフを見たら、そのナイフが使われる恐怖シナリオを連想させ、防御行動を促したり、恐怖への対応のため、神経伝達物質を使って血圧上げたりなどなど。」

勇者「はい。」

僧侶「さらに、良くない連想を繰り返してしまうと、例えば、台所に立つだけでナイフを連想し恐怖してしまう。そして、台所自体が恐怖の対象になってしまう。その公式が脳内の対策マニュアルに刻まれる。

勇者「はい、パターン化、学習、ですね。」

僧侶「この負の対策マニュアルを書き直すには、なるべく多くの五感を利用して、良いイメージ=妄想することで、書き直していく。

勇者「はい、その通りですね。」

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