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第23章 ばーさーかー の たーん

脳にある危険対策マニュアルは、自分自身で修正していく必要がある。そのためには、どんなことをすればよいのか。

僧侶「ところで、なぜ魔法を覚えた時のことなんて質問されたのですか?」

勇者「実は、頭の中の危機対策マニュアルを修正する作業と、魔法を覚える作業は非常によく似ています。それに関連してか、魔法を使うことに長けた魔法使いや僧侶は、不安障害になりやすく治りやすい、戦士や武道家はなりにくく治りにくいという統計があるのです。」

僧侶「へぇ、なぜそうなるのですか?」

勇者「これは脳の仕組みや癖が、そうさせているといわれています。不安障害などにおいてよくある症状ですが、頭の中に悪いイメージが浮かんでは、ぐるぐるその事ばかり考えてしまう、そんな経験がおおありではないでしょうか。」

僧侶「しょっちゅうです。」

勇者「魔法を使うとき、あなたは、発動したいものを強く、何度も何度もイメージしますよね。」

僧侶「あ、不安障害の症状と似てるということですか?」

勇者「そう、戦士や武道家らは、普段あまり頭を使わない人達です。魔法も不安も、イメージする能力が無いんですよ。つまり、魔法使いとしての素質と、不安障害になる素質は近しいところにあると私は思っています。」

僧侶「なるほど、でも不安障害になりやすい素質があるのに、反対に治りやすいとはなぜですか。」

勇者「不安障害になるのも治るのも同じなんです。どちらも危機対策マニュアルを書き直しているだけなのですから。

僧侶「たしかに。素質があると言われると、俄然やる気ぐでてきました。で、実際にはどうやって危機対策マニュアルとやらは書き込みが進んでいくのでしょうか。」


勇者「脳はとても優秀な性質をもっています。脳は
見聞きし経験したことから、その傾向を分析し、対策をパターン化していきます。そのパターン化をしていくプロセスを"学習"といいます。

僧侶「わかる気もしますが、どのようなことでしょうか。」

勇者「そうですね、例えば、、、5。」

僧侶「えっ?」

勇者「4、3、、」

僧侶(ドキドキ)

勇者「2、1、、と、カウントダウンされると、0のタイミングで何かあるのかな、と思いますよね。」

僧侶「えぇ、ドキドキというかワクワクというか、少し身構えちゃいますね。」

勇者「ところが、これって、野蛮なバーサーカーなどが聞いてもなにも感じないんですよ。あなたが身構えることができたのは、これまでの人生で、カウントダウンが0になったら何かが起こるという傾向を、過去に学習できているから反応できるわけです。

僧侶「なるほど、私の対策マニュアルには、カウントダウンが終わると何かが起こるよと書かれているわけですか。」

勇者「その通りです。ここでさらに、わたしがカウントダウンして0になったタイミングで、あなたを殴ったとします。さらに、何度かカウントダウン0になるたびあなたを殴ると。」

僧侶「はい。」

勇者「すると、あなたはカウントダウンが0になると殴られるという法則を把握し、カウントダウンが始まったら防御体制に入るという対策をマニュアルに書き込むことになります。」

僧侶「でしょうね。」

勇者「これまでドキドキ半分ワクワク半分のただのカウントダウンが、恐怖として登録された瞬間です。」

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