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第20章 めしつかい の たーん

交感神経が活発になることは"ガンガンいこうぜ"、副交感神経が活発になることは"落ち着こうぜ"、という脳からの指示だと勇者は言った。また、様々な身体の症状は、これら指示に基づき、闘争や逃走に準備した結果だとも言った。

僧侶「なんとなく理解できる気もするのですが、詳しく教えてください。」

勇者「人は、脅威に直面するとアドレナリンという神経伝達物質が放出され、交感神経が優位になります。つまり、全身にガンガンいこうぜ!っと指示が飛ぶわけです。」

僧侶「はい。」

勇者「すると、脳は活性化し、運動に適した状態になるように血圧とガス交換率が高まり酸素を全身に送り出します。また、闘争に集中するため、内臓の動きをストップします。

僧侶「なるほど、だからドキドキするのですね。」

勇者「その通りです。一方で、脳が活性化して眠れない不眠症や、内臓の活動停止に伴う便秘などを発症する可能性があります。」

僧侶「あ!あの、私はどちらかというと反対で、新しい洞窟に向かう日などは、便秘よりも下痢になって困っているのですが、これは、別の症状なのでしょうか。」

勇者「いくつか説があるようですが、草食動物は肉食動物と対峙し逃げる際は、少しでも体を軽くするために、糞尿を全て出しながら逃げるそうです。もしかしたらそういう本能的な機能が残ってしまっているのかもしません。もう一つは、副交感神経が活性化している可能性があります。

僧侶「あれ、闘争か逃走かと言っている時に副交感神経が活性化するのですか?落ち着けと?

勇者「不安と恐怖の違いを覚えていますか?」

僧侶「はい、えっと、確か、”不安”は未来の不確かな脅威への感情、”恐怖”は現在まさに直面している明確な脅威への感情でしたね。」

勇者「そうです。新しい洞窟へ行こうとしている日に下痢となるケースでいうと、この時の感情は、恐怖というよりは、不安に近いでしょう。一時的に交感神経が高まるかもしれませんが、あくまで将来の不確かな脅威への対応であり、その時点では本来交感神経を高めることは不要であるため、それを抑えようと、副交感神経を活性化させ、”落ち着こうぜ”と指示している可能性があります。副交感神経が優位になれば下痢になることもあります。」

僧侶「なるほど。」

勇者「他にも、副交感神経が優位になることで、胃酸が過剰にでたり、血圧が下がり、ふらつきや、血管迷走神経性失神という失神まで至ることもあります。

僧侶「必ずしも、交感神経が悪くて、副交感神経が良いというわけでもないのですね。」

勇者「その通りです。大事なのはバランスですね。過度のストレスを受け続けるとこのバランスがとれなくなり、"ガンガンいこうぜ"の指示が高頻度にでてしまうのが不安障害、"落ち着こうぜ"の指示が止まらないのがうつ、といった具合です。少し乱暴な表現かもしれませんが。」

僧侶「そうすると、症状事態を止めるというよりも、自律神経の乱れを正すことが重要なようですね。」

勇者「その通りです。召使いは当主の指示に従っているにすぎないですから。では、どのように指示を正し、自律神経の乱れを正すことができるかについてお話しましょう。」

[攻略の手引き]

◯さくせんしじ 習得レベル10 とうしゅ、ゆうしゃ
・・・ガンガンいこうぜと指示して闘争や逃走に適した身体に変化させたり、落ち着こうぜと指示して、リラックス、回復に努めることができる。

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