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第05章:まおう の たーん

不安やパニックは正常な動作で、自ら生み出した警告であると勇者は言う。僧侶は一定の理解をしつつも違和感を拭いされずにいた。

僧侶「うーん、やはりよくわからない事があります。不安やパニックといった症状は、”変わりなさい”という警告だとおっしゃりましたよね。」

勇者「はい。その通りです。」

僧侶「例えば、私がストレスを感じている仕事中などに警告されるならわかります。"もう、休め!"という感じで。でも実際には、私を苦しめる警告は仕事場にとどまりません。全然仕事に関係ない場所でもおこるのです。例えば、たくさん人がいる場所に行くとパニックになることがあります。この症状は、私に何を"変われ"と警告しているのですか?明らかに、警告すべきタイミングが間違っているのではないでしょうか。」

勇者「いえ、間違えていません。あなたの無意識は、あなたにその場所にいてはならないと警告しているのです。」

僧侶「なぜですか?」

勇者「あなたは、初めてパニックになった原因のストレスとは別に、パニック症状自体に恐怖しストレスを感じています。そのため、パニック症状が出ると困る場所では、”このままだとパニック症状が出るぞ、逃げろ!”と無意識が警告しているのです。」

僧侶「!!、、、なるほど。」

勇者「あえて、恐怖という言葉を使いましたが、不安とよく似た言葉ですよね。不安と恐怖の違いはなんだと思いますか?」

僧侶「うーん、なんでしょう。より危険なものに抱く感情が恐怖ですか?」

勇者「するどいですね。もう少し具体化すると2つの違いがあります。不安は”未来”に発生する”不確か”な脅威への感情で、恐怖は”現在”まさに直面している”明確”な脅威への感情です。それぞれ、その警告の意味も異なってきます。」

僧侶「なるほど。未来か現在か、不確かか直面しているか、たしかに。では、それぞれの"警告の意味"とはなんでしょうか。」

勇者「不安は、未来のことと申し上げました。つまり、不安は、"注意しなさい、準備しなさい"という警告です。我々人類は、この不安という感情があったことにより、様々な困難に対し、準備、対策し、進化してこれました。この感情がなければ世界はとっくの昔に魔王の手に落ちていたでしょう。」

僧侶「確かに。」

勇者「一方で恐怖は、まさに脅威に直面し"臨戦態勢な状態"です。人は臨戦態勢になると、アドレナリンが分泌され、交感神経が高ぶり、運動器官への血液供給が増大、呼吸器官におけるガス交換効率の上昇、痛覚の麻痺など、脅威に対して闘争か逃走(fight-or-flight)の選択をできるように体ができているのです。」

僧侶「ちょ、ちょっと待ってください。急に難しい言葉が。。。整理させて下さい。」

勇者「はい、時間は充分あります。ゆっくり理解していきましょう。」

僧侶「まず、不安や恐怖は自身への警告で、パニックは警告の最たるものであると。また、私を苦しめているパニック症状は、パニックになるという脅威から逃げろと警告していると。うーん。これらは正常な動作だとおっしゃっていましたが、パニックになることを恐怖しパニックになるのはバグなのではないですか?」

勇者「警告がでるのが正常だと思います。なぜなら、あなたにとっては、パニックになるかもしれないという脅威が本当にそこにあるんですから。」

僧侶「うーん。。正常だと言われてしまうと、なんか治せない気分になってしまいました。」

勇者「私はメンタル症状は"治すもの"ではなく、"見直すもの"と考えています。日々の生活習慣、あなた自身のセンサーの設定、アラートの音量など、見直し調整する事で、症状を克服する事ができるのです。」

僧侶「見直す、、」

[攻略の手引き]

◯ふあん 習得レベル1 みんな
・・・未来の不確かな脅威に対しての警告。準備するよう促す。
◯きょうふ 習得レベル1 みんな
・・・今目の前に直面する脅威に対しての警告。闘うか、逃げるかが選択できるよう、体内の器官を強化する。

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