“ONE”CONCERT〜FUEIRO〜(2019/11/3)
『“ONE”CONCERT〜FUEIRO〜』に伺いました。(2019/11/3@銕仙会能楽研修所)
東京藝術大学卒業の若手音楽家 Ensemble LeventのLevant(ルヴァン)はフランス語で「風」を意味します。管楽器1本ずつに打楽器を加えた形態や、金管・木管・打楽器といった組み合わせでのアサンブルなどの編成でも活動をしています。この日のコンサートは尺八奏者で琴古流大師範の寄田真見乃さん、第2回アジアフルートコンクール第1位のフルート奏者 石田彩子さん、日本フィルハーモニー交響楽団オーボエ奏者の佐竹真登さん、クラリネット奏者の西澤いずみさん、ホルン奏者の能瀬愛加さん、日本フィルハーモニー交響楽団ファゴット奏者の大内秀介さんのメンバーで行われました。
このコンサートは “笛色”と題し、日本と西洋の音楽や楽器の対比や発見を掲げ、3つ大きなテーマでのプログラムが構成されました。第1部は「各楽器のオリジナル作品」ということで尺八の独奏で『鶴の巣籠《巣鶴鈴慕》』と『胡笳の歌』、そして木管5重奏の演奏でドビュッシーの『小組曲』、イベールの『木管5重奏のための3つの小品』といったフランス作品の室内楽。第2部は「文化の交差」と題し、J.S.バッハの『無伴奏フルートのためのパルティータBWV1013からアルマンド』、サン=サーンスの『白鳥』を尺八で、別宮貞雄による『日本組曲第1番』を木管5重奏で演奏されました。第3部は「両楽器の融合」で、このコンサートのために委嘱編曲されたで尺八と木管5重奏のための『証城寺のスケルツォ』が演奏されました。
尺八という楽器は竹に5つの穴の開いた楽器であるため、バッハやサン=サースなどの広い音域を必要とする曲では穴を半分だけを押さえたり、息を調整するなどして音を出す必要があります。寄田さんの演奏はこのような困難さを全く感じさず、曲のエッセンスを捉えた素晴らしいものでした。尺八の朴訥としたあるいは峻厳とした音色はそれぞれの曲の情景を見事に浮かび上がらせました。
木管アンサンブル演奏はイベールやドビュッシーの色彩感、音の重なりが美しく響き、世界観の対比がとても印象的。第3部の江戸信吾 作曲の証城寺のスケルツォは尺八と箏、十七弦のための楽曲ですが、西下航平さんの編曲で木管五重奏と尺八の曲として演奏されました。様式の異なる楽器が融合を図りつつも、異質さも残し、独特の音楽体験を味わえました!
なお、このコンサートは令和元年度港区文化芸術活動サポート事業助成公演として港区から助成で実現した「能楽堂でのクラシックコンサート」です。今回の会場は表参道駅からほど近い能楽堂(銕仙会能楽研修所)でした。この空間が演出する雰囲気は独特で、舞台から響く西洋音楽が通常のコンサート会場で聴くよりも、その曲が作られた時代、国などの背景をかえって浮かび上がらせるような感覚を味わえました。
アンサンブル・ルヴァンは東京オリンピック2020を前に文化プログラム「beyond2020」の認証も得ており、今後の活動が楽しみです!
皆さんもぜひコンパスを使ってコンサートをお楽しみください!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?