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『透明な夜の香り/千早 茜(集英社)』を読んだ感想。

※章ごとの感想になっています。ネタバレには特に配慮していませんので、お嫌な方はお気をつけ下さい。
簡単な全体の感想でいい、長文がお嫌な方は、読書メーターへどうぞ。
https://bookmeter.com/books/15416247


1:Top Note


今時、紫色に染めた白髪をヘアネットで覆った、年中エプロン姿の大家さんなんているんだろうか?
朔さんが更年期の女性がダメなのは、更年期障害があるから?
非現実感を出したいのかも知れないけど、登場人物達も舞台設定も、どこかで見たような、型にはめたような感じがしてしまった。
最初、資生堂とタイアップしてるのかと思った。(朔さんの元職場は、加齢臭を発見した会社。)
何故、朔さんが、一香さんを特別視するのか分からない。
源さんは、朔さんは、まるで花に呼ばれたみたいに、まっすぐに咲いた花の場所へ行く、「一度も間違えたことがないんだ(P.35)」と言っていたけど、花に愛されてるとも言えるのでは?

2:Floral Note


苺とミントのスープというお洒落なスープは、苺ジャムの代わりだったのか…。
私はスープを作ったことはないけど、ジャムは作ったことがある。ジャムも結構お砂糖使うんだけど…。
確か、ムスクは、もう天然のものが使えなくなっていたはずだけど、朔さんからそういった説明がなかったことが気になった。
朔さんは香りに敏感な人なのに、人口香料は大丈夫という設定が受けつけない。
むかし、私は、フレグランスを好んでつけていたことがあったんだけど、何故か、気分が悪くなってしまって。販売員さんに話したら、「人口香料のせいだ」と言われたことがあったので。販売員さんの妹さんはもっと深刻で、頭が痛くなって、香りをつけられなくなってしまったそう。
フルーツナイフで人は殺せないと思うんだけど…。
「嘘は臭う」って、どっかで聞いたことがあるんだけど、気のせいかな?
自然の香り、特に、梔子の花も香りがきついので、朔さんが平気というのが気になった。
依頼者の三十五歳という年齢がポイントになるのかな?
この歳になると、幾ら若く見えても、マイナス五歳が限界かと思うけど。

3:Chypre Note


薔薇のジャムは想像するより美味しくないこと、ミツコという香水は昔の香りなので、今の軽い香りに慣れていると、濃く、癖の強い香りに感じられること、大学生だった頃、友人に、「君は、道徳観があるから、文豪にはなれない」と言われたことを思い出した。
ミツコさんに依頼された香りは杖のグリップに仕込むそうだけど、こぼれたり、にじんだりしてこないのか気になった。
相変わらず、ここの食事は現実感がなくて、お腹いっぱいになるのだろうか?と思ってしまう。
幾ら、真夏のような暑さの中、庭仕事をしているとはいえ、源さんのお昼は塩分過多に思えたし。(P.83「卵焼きと塩豚のスライス、胡瓜と茄子の浅漬け、(略)塩結び。」)
そろそろ、ネ(むかし、フランスで、一流の調香師をこう呼ぶと聞いたことがある)の説明もして欲しいんだけど、出てもこない…。
ミツコの説明も、あっさりしてたな…。

4:Woody Note


仕事柄、さつきちゃんがしっかり食べていることは知っているけど、食べなきゃ綺麗になれないよ…。ケーキバイキングは、主食ではないけど。
最近の果物は驚くほど糖分が高いから、果実食がよいとは思えなかった。
変なおじさんから、一香さんを助けてくれるのは、新城か、源さんが良かったな。朔さんだと何かイメージに合わないというか…。
朔さんも、機嫌が悪いと、集中力が乱れがちになるらしいけど。
提案でも、自律神経を乱す香りを作るなんて言わないで欲しかったけど。
(一度やると厄介なんで。)
「生殖可能な健康体(P.123)」以外にも欲情する人達はいるので、何か引っ掛かってしまった。
ドイツで三百年前から作られているリキュールを調べたくなった。
犬が情報を隠すことをしないのは、マーキングだからだと思う。

5:Spaicy Note


色んな美容室に行っている女性から、別の美容室に行ってから、そろそろまた美容室に行く時期になったので、次は私も通っている美容室に行ったら、髪を触った担当美容師さんに、「「あ、私が切ったんじゃない!」と言われたことがあった」と聞いたことはあったけど。
朔さんは、何で、犯人が美容師だと分かったんだろう?
警察にわざと捕まって、何か情報を得たんだろうか?
一香さんの健康な髪に触れて、何か確信を得たとか?
むかしと違って、紫外線がすっかりきつくなってしまって、健康に悪いと言われている現代?に、何故、日焼け止めを支給しないのか?
窓もない寝室は、匂いがこもって、朔さんほど嗅覚がよくない私でも、ムッとしそうで嫌なんだけど…。
朔さんの嗅覚って、本当に独特なんだな…。感覚も、常軌を逸している。警察が来るかも知れないところに、自分の名刺を置いて行くなんて…。
ホームレスより、ストレス臭の方が嫌みたいだし。
一香さんは、匂いがすごいので、朔さんが外出している時に仕込むように言われていたケチャップを作っていたけど、きつい匂いって、一日二日では消えないんだよな…。消えたと思っていても、一週間くらい残っていることがあるし、タオルなどに付着していることがある。
誰もが好む香りはないけど、嫌がる匂いはあるというのは、音と一緒だなと思った。

6:Citrus Note


いきなり、木場さんの息子さんの話が出て来て、びっくりした。
金木犀の香りは、小学生には、芳香剤のイメージが強く、臭くて嫌われてた気がするんだけど…。
下が練乳の入ったミルク寒天とはいえ、烏龍茶と金木犀の花のジュレなんて洒落たものを子どもが好むだろうか?コアントローや、砂糖菓子くらい甘くしてあったとしても。
しかも、口内炎があって、脊椎に炎症が起きる先天性の病気を発症し、下半身が動かなくなってしまった子に食べさせても大丈夫だろうか?と思ってしまった。
私は田舎の子なので、モンシロチョウを幼虫から育てたこともあるけど、「モンシロチョウの翅はレモンの香り(P.182)」 って知らなかった。
肉親だから向き合えないことがあるし、子どもは親に嫌われることを恐れている。
朔さんがコインロッカーに捨てられた赤ちゃんを助けなかったのは、彼が母親に捨てられた過去も関係しているのかも知れないけど、里親を探すのも、施設育ちは大変とか、メディアを通して知っていると、何とも言えない気持ちになる。朔さん自身、苦労したみたいだし。
朔さんは、木場さんに、煙草の栽培はしているけど、製造はしていないと言っていたけど、新城の煙草は朔さん作ではないのだろうか?と思ってしまった。
このまま、三人のチームワークのような関係、時間が続けばいいなと思ってしまったけど、難しいんだろうな…。
少し前くらいから、朔さんが更年期の女性を雇いたくないのは、匂いだけじゃなく、彼の母親に歳が近くなるからかな?と思っているんだけど…。

7:Animal Note


新城は、「執着と愛着の違いがわからない時点で問題だ。(略)(P.206)」と言っていたけど、私も、両者の違いは何だろう?と考えてしまった。
私も、人が変わると動揺する人間だったからだろうか?
でも、人とは少し変わっている云々の前に、人って、複雑なものではないのだろうか?
端から見ると、おかしな関係に見えても、当人同士が了解していれば構わないと思うし。
?新城は、「料理もだけど、あいつさ、仕事部屋や寝室に人を入れたことがないんだよ(P.203)」って言ってたけど、スーパーのコルクボードに貼ってあったアルバイト急募の紙には、「ーー家事手伝い、兼、事務、接客。経験不問。応相談。(P.9)」と書いてあったけど…。
私は、それより、一香さんが、朔さんに、スチームの調合を頼まれたことに驚いた。
別の小説でも見たけど、今時、短大を出て、パソコンを使えないことにも驚いている。使えなくても、就職できたことにも。
死の匂いが分かるなんて、一香さんもずいぶん鼻がよくなったのか、お兄さんのことを思い出したから?
死の匂いって、みんな同じなのかな?

8:Last Note


朔さんも、大概、嘘つきだよな…と思ってしまった。
パソコンに匂いがあるなら、ガラスにもあるのでは?
一香さんのお兄さんの引きこもりによる自殺は、「期待して、甘やかして、目をそらし続けた結果(略)P.220」なのかな?
一香さんのお兄さんは、最新のパソコンを使い続けていたみたいだから、他の引きこもりの人達のように、家で、パソコンを使って仕事が出来たかも知れない。その場合、稼ぎは少なくなるみたいだけど。
この世に、自分と世界の見え方が同じ人が存在するのか分からないけど、一香さんにはさつきちゃんがいてくれて羨ましいし、一香さんのお兄さんにもさつきちゃんのように見守ってくれる人がいたら良かったのにな…と思ってしまった。
フェレットの飼育環境が改善されたらいいけど、ここを出て行かなければならなくなってしまったとしたら、可哀想だな…と思ってしまった。ペット禁止物件で動物を飼っていたら、飼育環境も悪くなるでしょ…。最悪なのは、捨てられることだし。
一香さんが屋敷の家具や窓枠にワックスをかけていた話や、さつきちゃんが一香さんと鍋を食べていた後、どうやら炭水化物を絶っていた話などが出て来てややこしい。
1話完結だけど、その1話が少しずつ繋がっていっている作りになっているのは分かっているんだけど、「…え?」って気になって、確認してしまった。
私も、朔さんと同じで変化は苦手だし、今も弱いかも知れない。でも、例え、自分は変わらないと思っていても、世の中には変わらないものなんてないし、否応なく、自分もその変化に対応せざるを得ない。
嗅覚と味覚は違うというような終わりになっていて面白かったけど、友人になった二人がこれからどうなるのか、朔さんはこれからどんどん並みの人間らしくなっていくのかは、知りたいような、知りたくないような気がする。
既に、続刊が発売されているけど。



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