アメリカのガールズリーダーシッププログラムをいくつか周り話を伺っていた時に母と娘の関係性について教えていただいていたことがありました。
女の子らしさの押し付けに疑問を感じると自分の一番身近な女性「母」の言葉について考える始める子がいることに気が付きます。これは、母、そして祖母が、当たり前として社会の中で女性としての振舞いや考え方を教え込まれ、自分らしさを抑圧されてきたそれをまた、そのまま娘に教えようとするとき、娘を女性らしさと言う呪文で抑圧してしまうと、女の子らしさなんて気にせず私らしく生きればいいのだと、目が覚めている娘は、窮屈に感じ、葛藤が起こります。
ここで言う目が覚めているというのは、差別や不平等について目が覚めていること、社会の流れの中で変化している最新の感覚を身に着けている人の事を「Woke(ウォーク)」と言いますが、Wokeな女子に「女の子なんだからそんな事しないの!」と叱ると、彼女はきっと「男の子だったらよくて、女の子はダメだなんて間違っている!」と指摘してくるでしょう。もし言い返してこなくても、叱られた彼女は、その叱った大人の方が間違っていると、葛藤するでしょう。
NYにあるガールズリーダーシップ団体で、プログラム中にLGBTQ+は、おかしい事でもなければ間違ったことでもない、自然なことで、LGBTQ+の人達を拒絶し抑圧している社会の方がおかしいと学んだ参加者の女子が家でそのことを家族に話した結果、彼女のお母さんから、「変なことを教えるな」と団体に苦情電話があったという話を聞きました。これは、特別な例ではなく、こういったことは、よくある話しだそうです。
社会の新しい「当たり前」に触れ、人の感覚がリニューアルされる時、その当たり前とは真逆の感覚で育ってきた前の世代は混乱し、拒絶しようとします。これは、私達が気が付いている以上に様々なシーンで起こる様です。インターネットがある今、子供たちは、私たち大人が育ってきた時には想像もできなかった様な量の情報を、様々なところから入手してきます。そして、私たち大人が気が付かなかった社会問題に気が付きやすくなるでしょう。
ガールズリーダーシップのプログラムの中で、犬が好きだという女の子が、犬に関わるボランティアをしたいというと、犬の散歩でもするのかと思っていたら、殺処分される犬を救いたいと発言しました。インターネットで少し調べると、それが社会問題なのだという事はすぐにわかりますが、普段今まで通りに生活をしていると、こういった問題の多くは耳にすることなく生活できてしまいます。Wokeな女子は、様々な社会問題を知り、自分にできる事、自分の意見を持ち、今まで社会が”女の子”に期待していたような無垢な発想ではなく、ビックリするような大人な意志の強いしっかりした発言をします。
自分よりも若い、幼い、女の子の方が正しくて、自分の方が間違っているのかもしれない?社会が決めた常識に対して「ちょっと待って」それって本当に正しいの?と疑問を持つ。押し付けられる常識や古くからある考え方に対してクリティカルに挑戦をする。自分の感覚が根本的に間違っているのかもしれないと気が付き調整するのは、初めはとても違和感のあることです。でも今「女性」の地位が少し前とは大きく変わろうとしています。この先、10年20年後、日本はだいぶ遅れをとってしまうかもしれませんが、世界で活躍していく人にとって、社会の変化に敏感に反応し、適応していく、クリティカルシンキングの力を育て、自分が正しいと思う事や信じることについて、考えられる、意見できるようになる。
周りの空気を読んで、社会の当たり前に上手くフィットしていけない大人になってしまったら、女の子らしく可愛がってもらえる女性になれなかったら、娘が苦労する。そうかもしれません。ですが、日本の一歩外を出ると、既にその古い感覚から抜け出すためのクリティカルシンキングの力を身に着けなかった娘さんの方が何十倍も苦労する世の中になってきています。そして日本も少し遅れはするかもしれませんが、確実に変わってくるでしょう。
娘にとって、一番身近で影響力のある母の存在。頭を柔らかくして、一緒に新しい感覚を取り入れていくのは、とても難しいですよね。でも、未来を生きる娘さんと一緒に、クリティカルシンキングの力を養い、一緒に常識をアップデートしていきたいものです。