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自動車業界の事例を他山の石に

世間を賑わしている、自動車メーカーの型式指定申請における不正問題。

国土交通省は、ダイハツ工業等の不正事案を踏まえ、型式指定を取得している自動車メーカー等85社に対し、型式指定申請における不正行為の有無等に関する調査・報告を指示していました。
 その結果、5月末までに自動車メーカー計5社から、型式指定申請における不正行為が行われていたとの報告がありました。
 型式指定申請において不正行為を行うことは、ユーザーの信頼を損ない、かつ、自動車認証制度の根幹を揺るがす行為であり、新たな不正行為が明らかになったことは極めて遺憾です。
 国土交通省としては、道路運送車両法に基づき、報告のあった5社に対して更なる調査を実施し、その結果に基づき、厳正に対処してまいります。

国交省報道発表資料より

この問題に関する一連の報道は「メディアのメシの種」になったきらいがあり、個人的には首肯しかねるところ、「なるほど」と思わせる記事に遭遇しました。

どの点を「なるほど」と思ったかは記事を参照してもらうとして、サスティナビリティ情報開示業界としては、これを他山の石としたいですね。

今回の問題の背景にあるのは、次の3点だと思います。

1.規則が適切に守られていなかった
2.規則が適切に更新されていなかった
3.規則について適切なコミュニケーションがなされていなかった

規則の不備・不在を一番認識しているのは「現場」である「メーカー」であるところ、「ルールセッター」である「国交省」へ適切にコミュニケーションできていなかったため、必要な法改正や運用の変更がなされず、放置された結果、法の遵守が蔑ろにされたのではないかと。

サスティナビリティ情報開示と対比させると、こんな感じでしょうか。
(厳密な意味で違う、というツッコミはご容赦ください)

S1・S2基準は公開済みで、日本版S1・S2基準はドラフト公開済み、遅くとも24年度末までに、確定基準が公開される予定であることは、ご存知の通り。

「不正行為」の元凶(?)である「自動車型式指定規則」「道路運送車両の保安基準」は、共に昭和26年の施行。自動車メーカーとしては、この時点で関与することはできなかったでしょうが、サスティナビリティ情報開示では違います。

今年(24年)7月末まで意見募集中であり、当のSSBJは、特設サイトを設けて解説動画や解説記事を紹介するなど、周知徹底に執心しています。3月のドラフト公開時には、セミナーも開催し、委員の間で意見が分かれた項目の紹介や、その背景も説明しました。

セミナーについては、全10回のシリーズでご案内しましたので、よろしければご参照ください。

また、金融庁の方では、有価証券報告書における、サスティナビリティ情報開示内容やその対象企業、適用時期について「サスティナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG」にて1年間かけて検討していきます。

経産省の方でも「 企業情報開示のあり方に関する懇談会」を開催。

ちょっとこれは、何が起きているのか?という問題意識の下、noteでも採り挙げてみたところではあります。

個人的には、次のように整理して納得しました。
詳しくは、noteを参照下さい。

1.SSBJ 開示項目
2.金融庁 適用対象企業・適用時期及び保証
3.経産省 開示方法

いずれにせよ、ルールセッティングにおいて、まだまだ、関与できる余地が残されています。個社で意見を提出したり、業界団体でロビー活動したり等々、お上にエンゲージメントしていきましょう。

ISSBの小森理事は、繰り返し次のように述べられています。

S1・S2をコミュニケーションツールとして使って欲しい

「開示」を通じて、機関投資家やお客様、地域住民の方々などのステークホルダーと対話して欲しい。そのための材料、手段、基盤として利用してほしいというメッセージです。

「義務だから」となると「やっつけ仕事」になりますが、ルールメイキングに加わり、自分たちで使いやすいものとすれば、自主的に活用することとなり、不正をするような動機も起こるはずがありません。

なお、サスティナビリティ情報は、日々変わり続けていることは、皆さんも承知の通り。そして、スタンダートセッター側も十分認識しています。

とはいえ、報告者・利用者から声が届かなくなると、スタンダードセッター側の改訂動機も高まりません。また、改訂におけるコンサルテーションで、フィードバックが少なくなると、需要がないと誤解するかもしれません。

ですので、今回の自動車業界の事例を他山の石とし、同様な状況に陥らないよう、緊密で活発なコミュニケーションを続けていきたいものです。

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