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エネルギー価格高騰〜世界を見渡せば

2020年12月から2021年1月にかけて到来した大寒波の影響で電力使用量が跳ね上がり、「電力不足」と、それに伴う「電力市場高騰」が大きな問題になりました。

この時は、小売電気事業者が電力を調達するJEPXのスポット価格が跳ね上がり、それまでは数円〜十数円/kWh程度だったものが、1月以降は200円を超える時間帯も発生。1月15日16:30ー17:00には、過去最高の251円を記録。

JEPXから安価に調達できることを武器に参入が相次いでいた、小売電気事業者に冷や水を浴びせる形となりました。

第29回電力・ガス基本政策小委員会資料より

これをきっかけにして、2022年4月に予定されていた、需給逼迫時のインバランス料金の上限価格(200円/kWh)を前倒しで導入。上のグラフのように、1月18日以降は、200円に張り付く形になりました。

このとき、政府に泣きついた小売電気事業者もあったといいますが、ナンセンスですよね。商売をしている訳だから、オプション取引等々で価格変動対策をしておくのが当然。でも、今考えると、この時退場していた方がHappyだったかもしれませんね。

というのも、ご案内のように一旦落ち着いたかのように見えた電力市場も、2019年の夏頃までのような、自前で発電所を所有するより市場調達の方が安い、といった新規参入者に好適な状態には戻りませんでした。

そして、2022年2月の、ロシアによるウクライナ侵攻。
小売電気事業者の倒産や撤退が相次いでいるのは、ご承知の通り。
これにより「契約切り」された事業者が、大手電力の最終保障供給へ駆け込む「電力難民」は、この1 年で急増し 10 月には4万5866件に達した模様。

帝国データバンク「新電⼒会社」事業撤退動向調査(11 月)より

その後はわずかに減少しているものの、新電力の相次ぐ撤退や倒産が、利用者にも大きな影響を及ぼしている。市場価格 の高騰が続くなか、財務基盤のぜい弱な事業者だけでなく大手企業グループでも、電力小売事業から撤退を余儀なくされる事態が相次いでいます。

新電力の安価な価格提示に飛びつこうとする事業者からの相談に対して、「電力はメシの種でしょ。価格よりも安定供給。寄らば大樹の陰ですよ」
とのアドバイスは、我ながら天晴れだったと自画自賛(笑)


前置きが長くなりましたが、では、海外を見渡したらどのような風景が拡がっているのでしょう。

以降、「ELEMENTS」のインフォグラフィックを拝借して、3種類のエネルギーについてご案内します。

まずは、電気料金。

家庭向け電気料金[ドル/kWh]

日本は、$0.22/kWhで32位。

1位はデンマークで$0.46kWh、2位はドイツで$0.44kWh、3位はベルギーで$0.41kWhと、ロシアからのLNG依存していることを考慮すると納得。高いと思っている日本の倍です。

4位はバミューダ諸島、5位はケイマン諸島と、離島が続きますが、こちらは致し方なし。日本でも、宮古・八重山地方他離島からなる沖縄電力は、化石燃料による火力発電に頼らざるを得ず、どうしても高くなってしまいます。

その後は、3ドル台でヨーロッパが続く構図。
ただ、原子力に頼るフランスは、$0.18/kWhと別格です。

沖縄は日本の縮図。日本も「離島」ですから、エネルギーセキュリティを考慮すると、電源の選択肢は幅広く有しておくべきでしょう。個人的には、原子力というオプションも真剣に考慮して、ベストミックスを探るべきと考えています。


続いて、ガソリン代です。
個人的には、落ち着いてきたように感じますが、皆さんの肌感覚はいかがでしょうか。

消費者向けガソリン価格[$/Gallon]

リットルではなくガロン当たりなので、感覚が掴めないかもしれませんが、およそ4倍と考えて下さい。

ダントツの1位は香港で、$11.1/gallon。世界平均の2倍以上と別格です。
税負担の重さや地代の高さが影響しているようです。
日本は$4.2/gallonで、100位以下。恵まれている方なんですね。

UKなど自国で生産していても、ネットで輸入国となっていれば総じてウクライナ侵攻の影響を受けており、欧州においては、9月の消費者物価指数を10%程度押し上げたとしています。

日本は、燃油高騰対策緊急支援金を続けていますが、いつまで続けるつもりでしょうか。政策は始めるよりも止める方が難しいですからね。


最後は、ガス代。天然ガスの価格です。

消費者向け天然ガス価格[$/kWh]

日本は、欧州のようにパイプラインではなく、液化してLNG船で輸送、国内でガス化という過程を辿るので、そもそも、単価は高くならざるを得ません。なお、この価格の集計にLPGは含まれていません。

ちなみに、ガス価格は、Nm3単位、GJ単位、kWh単位などとバラバラで報告されるので、kWhで統一されています。(1kWh = 3.6MJで換算)

それを踏まえて見てみましょう。

1位はオランダで$0.41/kWh、2位は少し差があってスウェーデンの$0.24/kWh、3位はドイツで$0.20/kWh、その後は、欧州諸国が$0.14/kWh〜$0.19/kWhで続きます。

日本が$0.11/kWhで15位というのは、悪くない数字では?

欧州は、今秋が暖かかったこともあって、10月の需要が昨年と比較して22%も少なかったとか。これにより在庫が想定よりも積み増されたと思いますが、油断はできません。欧州の寒波は半端ないですから、一旦起きてしまえば帳消しです。果たして、今冬を乗り切れるでしょうか。


主要なエネルギーをざっと見てみましたが、いかがでしたでしょうか?

エネルギーの大部分を輸入に頼る日本。
確かに、温暖化対策は喫緊の課題ではありますが、それは、地球環境が維持されることによって、私達および後世の人々が持続可能な生活ができることが最終的な目標だと思います。

環境問題の前に貧困問題がある。
とりわけ、途上国で環境教育を実施しようとすると直面する課題です。
環境は50〜100年に亘る課題であるところ、貧困は今日明日の課題。
優先順位は火を見るより明らか。

3E+Sの視点を持ち、現段階で選択肢を狭めること無く、部分と全体、短期と中長期を幅広く見渡しながら、困難な課題に対処していきたいですね。




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