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クレジット活用の強い味方(2)

前回から、購入を後押しするクレジット向け保険の紹介をしています。

今回は、Swiss Re Corporate Solutionsとgoodcarbonが共同で立ち上げた、「保険対象クレジットの現物交換を提供する初の長期炭素クレジット購入保険」の紹介から。

この保険は、「高品質の炭素クレジット供給へのアクセスを提供するだけでなく、重要な生態系や脆弱なコミュニティに恩恵をもたらす自然ベースのプロジェクトへの資金流入を容易にする」ものだそうです。

なお、goodcarbonは、複数の検証可能なクレジットを活用してネット・ゼロ達成を目指す企業を支援する、ベルリンを拠点とするスタートアップであり、Swiss Re Corporate Solutionsは、世界中の大企業および中堅企業にリスク移転ソリューションを提供する元受損害保険会社です。

そんな両社が共同開発した「カーボン・フォワード保険」は「企業が5年先の炭素クレジット・ポートフォリオを世界規模で構築できる保険」だとか。

前回もお伝えしましたが、プロジェクトは長期に亘るため、様々なリスクに直面します。この保険は、政治的リスク、自然災害、天候リスクによる先渡購入の不引渡リスクを保証するもので、目的からすると、前回ご紹介した、クレジット特化型の保険と同じではあります。

では、何が違うかというと、クレジットの不履行があった場合「現物」で補填される点。前回ご案内の、kitaとokaは「現金」での保証でした。

ネット・ゼロは、2050年時点で削減できていない「Residual Emissions」を、吸収除去系クレジットで中和すること。カーボン・ニュートラリティは、それ以前の段階で削減できていない「Unabated Emissions」を中和することです。

ネット・ゼロやカーボン・ニュートラリティ目的に調達しようとしている企業にとっては、投資した資金が返ってきてもらっても困るのです。コストをかけてまで「中和」したかったのですから、「クレジット」が手に入らなければ意味が無いのです。

だからこそ、「自然ベースの炭素クレジット・プロジェクトへの資金流入が大幅に緩和されることが期待される」と謳っているのですね。

続いて紹介するのは、日本の事例です。

東京海上日動火災が開発したクレジット購入者向けの保険「カーボンクレジット・レピュテーション費用保険」で、その名の通り「風評被害」によって、クレジットが毀損した場合に保証を受けられる保険です。

東京海上日動火災プレスリリースより(PDFが開きます)

「Reputation risk」であれば、前回ご紹介した「kita」が「Carbon Purchase Protection Cover」という保険でカバーするとしています。

kitaウェブサイトより(著者抜粋、追記)

「カーボンクレジット・レピュテーション費用保険」と何が違うかというと、はっきり言って「同じ」だとは思います。が、「ウォッシュ批判」によって購入したクレジットの価値が毀損し、価格が下落した場合に保証する旨を、明確にして、保証対象としていることが異なるのです。

まぁ、ウォッシュ批判も「Reputation risk」ですけどね。

この保険は、デロイト トーマツと共同開発、提供するサービスのようです。

<東京海上日動のカーボンクレジット・レビュテーション費用保険の概要>

日本国内において、以下の対象事由が公になった場合に、カーボンクレジット購入企業が企業価値の毀損を防ぐために対策を講じる費用等を補償

【対象事由】
被保険者が購入したカーボンクレジットの対象プロジェクト(カーボンクレジットを創出する事業)に対するグリーンウォッシング批判の発生に伴い、購入者が批判を受けること等。

【対象となる費用】
企業として対策を講じるために必要となる危機管理コンサルティング費用や弁護士相談費用、マスメディアやネット投稿への対応として必要な報道状況分析費用やネット投稿削除費用、事実関係の公表・説明を目的とした危機対策本部設置や緊急会見・社告費用等、被害の収束に向けて支出した費用に対する保険金の支払い

デロイト トーマツ プレスリリースより

役割としては、東京海上日動が、企業が購入したクレジットに疑義が生じた場合の対応費用を補償する保険を開発、販売し、万が一実際に保険の対象となるような事由が発生した場合に、デロイト トーマツが保険契約者の対応を支援するというものだそうです。

具体的には、デロイト トーマツはコンサルティング、フィナンシャルアドバイザリー、法務・税務、リスクアドバイザリーといったグループ内のサービスを結集し対応するとしています。

「グリーンウォッシング」という悩ましい課題も、ビジネスチャンスになるというよい例でしょう。これにより、「高品質なクレジット」への資金流入が加速すれば、プロジェクト実施者も購入企業もハッピーですし、ネット・ゼロへと一歩近づきます。

私は常々「危機を機会に変えましょう」とご案内してきました。

直面している課題や、直面しそうな課題、まだ顕在化していない課題等々、個別具体的なリスクがあるでしょうが、一歩立ち止まって、視点を変えて、概観してみましょう。千載一遇のチャンスがあるかもしれません。

しかしながら、様々な「視点」を持ち合わせていなければ、活かせません。
そこで、このnoteでは、国内外の情報を提供することで「視点」を育むお手伝いをしたいと思っております。

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