見出し画像

FLAG向けガイドラインのリリース(4)

ガイダンスの説明も4回目。
今回は、炭素除去(Carbon Removals)の目標設定です。

1〜3回目はこちらです。

炭素除去は、1.5℃目標を達成する上で、FLAGセクターに求められている貢献度の半分を占めるとのことで、SBTiとして重要視しているようです。

裏を返すと、当たり前ですが、FLAGがエネルギー/産業セクター排出量と切り離して算定される理由が、炭素除去による「カーボンネガティブ」な訳で、これが無ければ合算しても問題ないということ。(意味が無い)

なので、これまで算定方法が難しかった、目標が立てづらかった、などなどの理由により含めていなかったのであれば、積極的に取り入れて欲しいというメッセージが発せられています。

さて、炭素除去は、下記のような自社のサプライチェーン内の活動により発生します。

・森林及び土壌の管理
・森林放牧の増加
・バイオ炭の利用 など

具体的には、バイオマス(地上・地下)、死蔵有機物(枯れ木、ゴミ)、土壌有機物という形でストックされることになります。

なお、目標に含めることができる除去量は、継続的に実施されモニタリングされている活動によるもののみを含めるべき、とされています。

というのも、既に実施されていない、あるいは、モニタリングされていない活動は、将来における累積排出量の削減に寄与しないからです。

まぁ、適切に間伐作業が実施されていない人工林や耕作放棄地などは、将来的に排出源となるでしょうから、宜なるかなですね。

FLAG目標として設定できるのは、下記条件に当てはまる企業ですので、今一度ご確認下さい。(2回目で既に案内済)


A. 以下の事業を行っている企業
・林産品、紙製品
・食糧生産:農業生産
・食糧生産:動物由来
・食品、飲料加工
・食品小売業
・たばこ

B. 以下の条件に当てはまる企業
・収入の20%以上が森林、土地、または農業に起因する
・スコープ1、2、3排出量のうち、FLAG関連排出量の合計が20%以上


加えて、これも繰り返しですが、エネルギー/産業セクターとは区別して算定及び目標設定下さい。

なお、FLAGセクターだからと言って、サプライチェーン外の活動による炭素除去を含めることは、NGとしています。

これについては、疑問が残ります。

Net-Zero Standardにおいては、ゼロ目標達成のために「中和」を必要とし、そのために用いるのが、純粋にCO2量の削減となる「吸収量」「除去量」ということでした。

そのうちの一つが、FLAGの「Carbon Removals(炭素除去)」だと考えています。その場合、「サプライチェーン内」であれば算定に含まれるので、それ以上の削減をする、つまり「中和する」となれば、不可避的に「サプライチェーン外」の除去量を使用することになります。

それが「NG」であるというのは、どういうことなのか。
よくよく読んでいると、このような記述が。

現在のGHGプロトコルの会計ガイダンスによると、製品炭素貯留はFLAG目標やFLAGパスウェイ開発には含まれていない。これは、GHGプロトコルから新たな指示が出された場合に見直される予定です。SBTi FLAGは、GHGプロトコル土地部門・除去物ガイダンスと連携して、特に土地集約型部門の対象範囲内の除去物を扱うが、FLAG目標に含まれない除去物(例:カーボンオフセットプロジェクト)、FLAG部門外のもの(例:直接空気捕捉や他の技術的除去物)は含まない。

FLAGガイダンスより、著者訳

恐らく、Net-Zeroに至る過程においては「オフセットするのは認められない」ということなのでしょう。自社努力による削減にまずは励みなさいと。

ということで、大まかに、FLAGガイダンスに基づいた目標設定を見てきました。次回は、具体的な事例を紹介したいと思います。
もう少しお付き合い下さいね。


もしよろしければ、是非ともサポートをお願いします! 頂いたサポートは、継続的に皆さんに情報をお届けする活動費に使わせて頂きます。