FLAG向けガイドラインのリリース(1)
先月末の9/28、FLAG向けのセクター別ガイドラインがリリースされました。
FLAGとは、FOREST, LAND AND AGRICUTUREのことで、林業、土地利用及び農業分野のことを意味します。この他、輸送セクター、セメント・鉄鋼などの産業セクター、建築セクターなど、排出量が著しいセクターについては、セクター別ガイドラインの整備が進んでいます。
さすが、SBTi。
そうそうたるメーカーが、パイロットテストに参加していたようです。
FLAGに注目していたのは、その他のセクターが「排出」のみであるのに対し、FLAGセクターでは「吸収」も発生するからです。
長期SBTでは、1.5℃シナリオに沿って2050年排出量ゼロを目指しますが、どうしても削減することのできない排出量(=残余排出量)が約10%程度残るとしています。
UNFCCCでは、ネットゼロにするために残余排出を「中和」することと定義しています。中和とは「未削減の排出量を相殺するために、大気中から炭素を除去し、永続的に貯蔵するために企業がとる措置」です。
この「中和」に使える手段が、大気中からの「除去」とFLAGにおける「吸収」とされています。具体的なルールは現在検討中ですが、このガイドラインが参考になるのではないかと考えているのです。
FLAGでも結果的に排出となっている場合が多いところ、炭素吸収源(陸上、沿岸、海洋など)の劣化から生じる排出によるところが大きいため、これを最大限抑制して、吸収源にすることが求められています。
この意味で、グリーンカーボン及びブルーカーボンは、「削減クレジット」とは異なるんですね。
さて、これからは、FLAGのガイドラインに従って目標設定を行って行きますが、それでは、今までFLAGセクターの企業はSBT目標を設定できなかったかというと、そうではありません。総量削減アプローチを選択することはできました。
しかしながら、困難だったので、FLAGが開発されたという経緯があります。加えて、このセクターは全体として人為的な排出量の約22%を占めていたため、カバー率を増やす必要性に迫られていたことにもよります。
ちなみに、AFOLUというのは、IPCCのガイドラインで使用されている用語で、Agriculture, Forestry and Other Land Use(農業、森林、その他の土地利用)のことで、FLAGと同義です。以前使用されていた、LULUCF(Land-Use, Land-Use Change and Forestry:土地利用、土地利用変化及び林業)と農業が一緒になりました。
含まれる対象は以下の3種類です。
土地利用変化( LUC: Land Use Change)によるCO2排出(家畜飼料関連を含む)
土地管理(非LUC排出)からの排出(主にN2OとCH4、農場内の自動車や肥料生産に関連するCO2排出も含む)
炭素吸収と蓄積(森林管理の改善、アグロフォレストリー、植林/再植林、土壌有機炭素蓄積、バイオ炭)
ところで、目標設定はFLAGに従えばいいのは分かった。でも、算定はGHGプロトコルだよね。でも、目標設定が困難だったのは、基準が明確でなく、妥当な目標レベルが判断しづらかったというのもあるけど、そもそも、一定程度の「確からしさ」を担保した算定というのが難しかったからじゃないの?という声も聞こえてきそうです。
そのような懸念に対しては、ちゃんとGHGプロトコルの方も、当該セクターに特化したガイダンスを開発中です。それがこちらです。
SBTiはGHGプロトコルと連携して開発を進めていますので、利用するに当たって、出戻りや二度手間など不都合が発生することは無いはずです。
ローンチセミナーでも、この点は、しっかりとPRしていました。
安心して、着手しましょう。
なお、GHGプロトコルの方はまだドラフト段階で、リリースは来年になる見込みだそうです。
内容については、次回に譲りたいと思います。
今しばらく、お待ちくださいませ。
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