サスティナビリティ情報、監査できるのは誰?
8月16日付の日経掲載されたこの記事、着目された方もいらっしゃるでしょう。
IOSCOの要請を受けて、IESBAがグローバルに使えるサスティナビリティ保証の倫理基準を策定しているというものです。
ここで、IOSCO(International Organization of Securities Commissions)は、国際証券委員会組織のことを指します。これは世界の主要な証券監督当局が集まる国際組織であり、金融市場の透明性、整合性、および投資家の保護を促進することを目的としています。
各国の証券規制当局との協力を深化させ、国際的な証券市場の基準とベストプラクティスを推進するための枠組みやガイドラインを提供しています。
簡単に言えば、IOSCOは、国際的な証券市場の適切な規制と発展をサポートするための組織です。
また、IESBA(International Ethics Standards Board for Accountants)は、国際会計士倫理基準評議会のことを指します。この評議会は、全世界の公認会計士や監査人に適用される職業倫理に関する基準を設定しています。
IESBAは、IFAC(国際会計士連盟)の下で活動しており、公認会計士が直面する可能性がある倫理的な問題や課題に対処するための指導原則や基準を発表しています。発行している主な文書に「国際会計士のための倫理基準」がありますが、これには公認会計士が遵守すべき倫理的な行動規範や基準が定められています。
要するに、IESBAは、公認会計士の倫理的行動を指導・規定する国際的な機関です。
つまり、サステナビリティ情報を監査する監査人の倫理基準を策定し、投資家が安心して利用できるようにするもの、企業の開示情報に「お墨付き」を与えようというものです。
また、IOSCOは、IAASBに対しては、サステナビリティ情報の保証基準策定を要請しており、これを受けて、23年8月2日、国際サステナビリティ保証基準(ISSA)5000「サステナビリティ保証業務に関する一般要求事項」を提案したことは、先日ご案内したところ。
ここで改めて説明しておくと、IAASB(International Auditing and Assurance Standards Board)は、国際監査および保証基準評議会のことを指します。この評議会は、国際的に認知されている監査および保証の基準を設定する機関として、全世界の監査人や関連する専門家に適用される基準を発表しています。
IAASBは、IFAC(国際会計士連盟)の下で活動しており、金融報告の信頼性と透明性を高めるための基準を設定・発展させています。主に「国際監査基準(ISA)」という文書を発行しており、これには監査業務を行う際の手続きや実践に関する基準が定められています。
要するに、IAASBは、国際的な監査および保証の基準を設定する評議会です。
ですので、IAASBが策定する「ISSA5000」に基づいたサステナビリティ情報開示を行っているかを、IESBAが策定する倫理基準にしたがって監査人が監査する枠組が構築される、というのが、8月16日付の日経記事の意味するところです。
ISSBがIFRS S1・S2を6月末にリリース、これを受けて、IOSCOが承認したことにより、世界標準への道が開けたと共に、義務化も視野に入ってきました。
こちらについても、ご案内済みです。(後半を参照ください)
S1・S2の後には、生物多様性や人権、人的資本などの情報開示要請が控えていますので、ここで、IOSCOが早めに手を打ったのは賢明と言えるでしょう。
ちなみに、GHG排出量算定結果の検証に当たっては、ライセンスはありません。
ですので、批判を恐れずに言うと、法人であれば誰でもできます。
JABがISO14065認定を行っており、例えば、環境省のSHIFT事業では65認定を受けた検証機関による検証を求めています。
しかしながら、現在6機関しか認定を受けていないため、結果として、ISOの審査機関や監査法人など、必ずしもGHG算定を専門としない機関が担っているのが現実です。
ただ、会計の分野の協会がサステナビリティの分野に入り込んでくるのは、いかがなものかと、思わないでもないです。
サステナビリティ情報は、会計情報のようには、割り切れません。
過度な保証を求めても無理な話です。
それを理解した上で監査するのであれば良いかもしれませんが、どうでしょうか。
ということで、総論は賛成ですが…..
いずれにせよ、状況をウォッチしていこうと思います。
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