AppleのForesightを利用しよう
日本時間の23年9月13日2:00から放映された、Appleの新商品発表会。
ご覧になった方も多いことでしょう。(リアルかどうかはさておき)
イベントを通じてのメッセージは、この1点だったのではないでしょうか?
その心は、Apple(iPhone、Apple Watch)は、緊急事態に自立的に対応することで、人々を生命の危機から救い出し、Apple Watchや自社の排出量のカーボンニュートラル達成、モーダルシフトにより輸送による排出量を95%削減といった、圧倒的な削減努力により、地球を救うことです。
導入のビデオは、Apple Watchによって一命を取り留めた本人へのインタビューで綴られていました。生かされたからこそある、ありふれた日常は、観る人の心に響くものでした。
個人的には、日本人「Masahiko Iimura」さんの映像から始まったことが印象的でしたね。ちゃんと、日本のマーケットも重視してますよ、という感じがして。
思えば、Intel製のプロセッサから、Apple自身が設計したARMベースのプロセッサM1へと移行、初搭載したMacBook Airを発表した2020年11月10日の発表イベントでは、パフォーマンスと効率の大幅な向上、バッテリー寿命の延長、高速な起動時間など、製品のパフォーマンスばかりが、前面に押し出されていました。
もちろん、今回も、何倍とか何時間とか、様々な数字が踊ってはいたものの、終わってみると印象は薄く、Apple Watchのカーボンニュートラル達成を印象づける「劇中劇」や、Lisa Jackson (VP, Environment, Policy and Social Initiatives)が太陽光パネルを前に説明する姿が、心に残りました。
Appleは、既に製品単体をPRする時代ではないことを十二分に承知していて、Apple製品を使うことによって実現出来る、私達一人一人のライフスタイルを提案しているのです。
ちなみに、Appleは、カーボンニュートライティを達成した商品に付けるラベルも発表しています。個人的に、こちらも気になりました。
技術仕様書には、14040,14044,14067の記述はありましたが、ニュートライティについて、ISO14068やPAS2060などへの言及はありません。しかしながら、自社努力による削減ファーストであることを明言していましたし、第三者検証を受けている説明もありましたので、一定の確からしさは担保されているでしょう。
まぁ、一般ユーザにしてみれば、そんなことは関係なく、「良さそう」と無批判に皆さん受け入れるのでしょう。
加えて、残余排出量をオフセットするというのも衝撃的。
Apple Watch 9及びUltraのユーザーが3年間使用する際に消費する使用電力量に相当する吸収クレジットを購入するというのです。(高品質な炭素除去プロジェクトに投資すると表現していましたが)
これも、ブランド構築費用と割り切っているのでしょうか。
性能を謳わなくなったことのエコーとして、プライバシー保護もありますね。
AppleはSiriを2011年10月4日に発表し、同月14日にiPhone 4sとともにリリースしました。Siriの導入はスマートフォンにおける音声認識技術とAIの活用を一般化する大きなステップであり、以後多くの他の企業が類似の音声アシスタント技術を開発きっかけになったことを、覚えていらっしゃる方もいるでしょう。
このときは、ユーザーの「プライバシー」に関する配慮は、ほとんどなされていなかったように思います。とにかく、AIの性能に着目されていたのではないかと。
しかし、2019年7月に、「Appleが外部の請負業者にSiriの音声データを解析させていた」という内容が報道されました。解析作業はSiriの性能向上を目的としていましたが、一般の人からすると、「プライバシーをシンガイしているのではないか」と疑っても仕方ないですね。
この事態を受けて、Appleは音声データの取り扱い方針を見直し、ユーザーからの明示的な許可がない限り、音声データを第三者と共有しないと発表しました。
では、今ではどうでしょう。
確かに、ウェブサイトには、しっかりとAppleの考え方、規範、方針が掲載されています。アプリケーションがどのように扱っているかも具体的に説明していますし、ユーザー自身でコントロールできるよう配慮しています。
ですが、もう「当たり前」になっているのです。
誰もが「プライバシーに配慮した事業を行っている」ことを所与のものとして考えているので、敢えて言及することは少なくなってきているのです。
これは、環境配慮についても同様です。
1990年代、「エコ」「環境にやさしい」という企業は少数派でした。
それよりも、性能第一。車も馬力の時代でした。
そんなところへ、1997年10月「201世紀に間に合いました」と突然現れたのが、トヨタのプリウスです。セールストークはまさしく「エコ」、HVによる圧倒的な低燃費でした。全社あげて「エコ」を謳っていました。
当時の取締役の方がいみじくも仰っていたのを思い出します。(曖昧な記憶なので、間違っていたらすみません)
環境配慮が、エコが当たり前になると考えていらっしゃったのだと思います。
当たり前の時代に「エコ」を謳っていたら、「今までやってなかったの?」と逆に疑われかねません。
閑話休題、Appleの話を持ち出したのも、企業に対して要請される開示の内容も、時代と共に変化することをご案内したかったからです。
Appleがイベントを通じて発信していた内容は、全て、私達や子供たち、将来の人々の暮らしを守るために自社が取り組んでいる事例でした。であれば、この先には何が来るでしょうか。
欧州委員会のESRSは気候変動以外にも、汚染、水・海洋、生物多様性や労働環境、資源循環などの開示を要請していますし、ISSBは、今後、生物多様性や人権、人的資本に関する開示基準を策定すると公表しています。
自社の排出量の算定もままならないのに、という声も聞こえてきそうですが、とにかく、できるところから着手することが肝要です。
金融の世界のように、確固としてメソドロジーがあって、確実な答えがあるとは、誰も思っていません。そんな中で、どのように対処しているのか、目標を設定しているのか、現実的な計画があるのか、今はどの位置にいるのか、といったことを、詳らかにしておけばよいのです。
ということで、GAMAの一角であるAppleの動向からは何がしら、将来に対するForesightが得られるのではないかと思い、突っ込んでみました。
規制当局の動きだけでなく、マーケットやユーザー視点でのウォッチングも行っていきたいと思います。ご要望がございましたら、是非是非お知らせ下さいマセ。
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