マガジンのカバー画像

排出権取引の現在地

124
カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
運営しているクリエイター

#クレジット

SBTi Scope3 discussion paper の衝撃?!(1)

7月30日、SBTiが、Corporate Net-Zero Standard(CNZS)の改訂プロセスの初期段階として、4つの技術的成果を発表しましたが、このニュースで、サステナ界隈が少しザワザワしているように思います。 リサーチした訳ではありませんが、ポジティブな意見には、強い肯定的な感情を示すものが多かった一方で、ネガティブな意見は、比較的穏やかなトーンで表現されている傾向かなと。 地域としては、欧米企業やNGOからの発言が目立ち、アジア地域からの発言は比較的少なか

Additionalityに基づくICVCMの判断

ICVCMが、既存の再生可能エネルギー方法論に基づいて発行されたクレジットに対して、CCPラベルを付与しないことを発表しました。 CCPラベルとは、「高品質なクレジット」の証左とも言えるラベルで、次の2つのレベルで認証が行われます。 簡単に言うと、CCP-Eligibleは、クレジットプログラム(VCS、GS、ARTのようなボラクレスキーム)を認証するものであり、CCP-Approvedは、方法論(森林吸収やバイオ炭などのプロジェクト)を認証するものです。 詳細について

クレジットを安心して購入したい

これまで、何度か、クレジットが一般の商品になってきたという話を、noteでご案内してきました。 ここで、クレジットの普及へ向けて、開発・導入されているサービスをまとめておこうと思います。具体的には、次の5つかなと。 それぞれ説明していきますね。 「1.レーティング」はクレジットの「格付会社」。 例えば、「BeZero Carbon」が挙げられます。 株式と同じで、詳細な情報を入手するには契約が必要ですが、後ほど説明するACXとコラボしていているので、ACXが毎週リリー

CORSIA シナリオ分析からの洞察

以前のnoteで、CORSIA向けの保険が 2.は「CORSIA」対応の保険です。 CORSIAは「(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)」の略称です。これは、国際民間航空機関(ICAO)が主導する国際的な取り組みで、エアラインに対し、一定基準を超える排出量をオフセットすることを求めています。 このCORSIAで使用できるクレジットは、フェーズ毎に申請して認証を受ける必要があ

クレジット活用の強い味方(2)

前回から、購入を後押しするクレジット向け保険の紹介をしています。 今回は、Swiss Re Corporate Solutionsとgoodcarbonが共同で立ち上げた、「保険対象クレジットの現物交換を提供する初の長期炭素クレジット購入保険」の紹介から。 この保険は、「高品質の炭素クレジット供給へのアクセスを提供するだけでなく、重要な生態系や脆弱なコミュニティに恩恵をもたらす自然ベースのプロジェクトへの資金流入を容易にする」ものだそうです。 なお、goodcarbon

クレジット活用の強い味方(1)

2年前、NCSAが、6つの森林吸収プロジェクトを「Lighthouses」に指定したことをご紹介しました。NCSA(Natural Climate Solutions Alliance)は、自然気候ソリューションと炭素市場への投資の機会と障壁を特定することを目的とした、マルチステークホルダーグループです。 Lighthousesは、「灯台」という名前が示すとおり、指定されたプロジェクトは、NCSAの厳格な基準に合致しており、実施地域の自然資源、生活環境の保全・改善に寄与する

パリ協定 第6条クレジットの現状(2)

AlliedOffsetsのレポートについて、お届けしています。 前回は、こちらです。 さて、第6条クレジットに関して注目すべき動きがあったのは、ルワンダ、ガイアナ、タンザニアの3カ国でした。 ルワンダは、GSとVerraによって認証されたクレジットに対して最初の認可書(LOA)を発行。 両者とも、前回ご案内したように、創出が容易な「クックストーブ・プロジェクト」です。 ちなみに、LOAとは、ホスト国がその国内で行われるカーボンオフセットプロジェクトを公式に承認し、そ

米国のVCMの現状をおさらいしておこう

ACXとAlliedOffsetsによる、「Sustainable Markets 」レポート。 今回は、米国のVCM事情についてでした。 なお、「VCM」は「Voluntary Carbon Market」の略称です。これは「自主的カーボン市場」と訳され、規制に基づく市場(コンプライアンス市場)と対比して使われ、前者で取引されるのは「ボランタリー・クレジット」、後者は「コンプライアンス・クレジット」です。 欧州に比較して、何かと後ろ向きな姿勢に見られがちな米国ですが、各

台湾のクレジット事情 現状確認

AlliedOffsetsの隔週発行ニュースレター「Policy Carbon Currents」 気になっていたイシューをタイムリーにレポートしてくれるので、非常に助かります。 今回は、台湾のクレジット動向がテーマ。 法規制関係は中国語のみが多いので、とかく情報収集に苦慮するので、めちゃくちゃ参考になりました。 昨年23年8月、台湾証券取引所と台湾当局系ファンドの国家発展基金が共同で、台湾初のカーボン・クレジット市場「台湾炭権交易所」を設立、関連する法整備などを行った後

世界銀行のCPレポート 斜め読み(2)

世界銀行(世銀)が毎年リリースしている、「カーボン・プライシング・レポート」の2024年版が公開されたので、その内容を簡単にご紹介。 1回目は、導入で終わってしまいましたので、今回は、内容を具体的に説明していきたいと思います。 まずは、導入されている国・地域についてみてみましょう。 ICAPのレポートと同様、マップで示されていると分かりやすいですね。 世界では、75の炭素税及び排出権取引(ETS)が実運用されており、過去12ヶ月で2国・地域増加しています。この地図を見て

世界銀行のCPレポート 斜め読み(1)

世界銀行(世銀)は、こちらのダッシュボードを通じて、世界のカーボン・プライシング(CP)の情報を発信しています。 説明をしておくと、CPには次の3つの種類に区分されます。 排出量取引(Emisssion Trading Scheme:ETS)のみであれば、ICAP(International Carbon Action Partnership)も重要な情報源です。 導入されている国・地域がマップやリストで示されますし、排出権価格(Allowance Price)のチャー

インドネシアのカーボン・クレジット市場(2)

隔月で、国・地域のクレジット市場を深掘りしたレポートをリリースしているACX。今回は注目していた「インドネシア」をフィーチャーしていましたので、その内容についてご案内しております。 前回は、セクター別まで説明しておりました。 このように、Waste DisposalとRenewable Energyで、CDMレジストリに登録された全クレジットの70%以上を占めていることが分かりました。 ですが、グラフから内訳は分かりませんので、UNFCCC CDMプロジェクト検索ツール

米国から目が離せない?!

4月9日、SBTiによるスコープ3削減に当たってクレジットの利用を認める旨の声明を発端として、サステナ界隈がざわつき始めたのは、皆さんご承知の通りでしょう。 実際問い合わせも多く、取り急ぎ、個人的な見解をご案内しました。 もしご覧になっておられないようでしたら、是非。 これに至る伏線は複数あり、さほど驚きではありませんでしたが、やはり、足元で起きている現象を俯瞰して、今何が起きているかを把握する「Insight」と、これらを解釈して将来何が起こりそうかを予測する「Fore

クレジットがお店に並び始めた?!

クレジットについては繰り返しご案内しているところですが、そもそも論として、次の欠点がありました。 あくまでも私の見解なのですが、こんな「商品」誰が買うのでしょうか? もちろん、J-クレジットを扱うプロバイダーやコンサルも複数存在していますし、私も利活用をご案内していましたが、やはり相対での取引となってしまい、「気軽に」購入できるものではなかったというのが現実です。 なので、はっきり言って、これまでは商品性(?)を十分に理解している「プロ」のみぞ扱う「商品」だったと言えま