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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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#EU

CBAM 移行期間は移行期間〜しっかり勉強を

今年23年10月から「移行期間(Transition period)」が開始したCBAM。 第1回目の報告義務期限が来年24年1月31日に迫る中、対象セクター及びそのサプライチェーン企業は、その対応について準備を急いでいることでしょう。 5月から7月まで実施された、移行期間のみに適用されるルールに関する、コンサルテーションが実施された際には、寄せられたフィードバックを分析しました。 このときは、EU域外からのフィードバックに限って内容を確認しましたが、メディアが騒ぐほどの

Fit for 55 パッケージ 第一弾

欧州議会は、2022年4月11日、「Fit for 55 in 2030パッケージ」のうち、以下の内容を含む重要な法案を承認しました。 「Fit for 55」とは、2030年までに温室効果ガスの純排出量を少なくとも55%削減するというEUの目標です。この施策は、気候変動法に基づいて策定されています。 「パッケージ」は、その目標を達成するために、EUの法律を改正・更新し、新しいイニシアチブを導入する一連の提案のことをいいます。ですので、今回承認された法案は、その一部という

EU-ETS2030年目標、大幅削減で合意

EU理事会と欧州議会は、12月18日、EU-ETSの改正指令案の暫定的な政治合意に達したと発表しました。 今回の改正は、欧州気候法において設定された「Fit for 55(1990年比で2030年に最低55%削減)」の達成に向け、現行のEU-ETSの削減目標を引き上げるもの。合意を受けて、改正指令案は、EU理事会と欧州議会の採択を経て、施行される見込みです。 欧州委員会は、EU-ETS開始年の2005年比で2030年までに61%削減とする改正案を提案(2021年7月)、E

CBAMが導入が事実上決定

13日、欧州議会とEU理事会がCBAMの導入について合意に達したことは、日経メディアでも報道されているので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。 まだ「暫定的かつ条件付きの合意(provisional and conditional agreement)」であり、最終決定に至るには、EU各国及び欧州議会において「採択(adoption)」される必要があります。 とはいえ、暫定合意内容にあるように、23年10月以降に運用が開始されることは間違い無いでしょう。初期は移行期間の位

世界の排出権取引市場動向

日本では、民主党政権時代から、何度となく議論され、試行され、それでも日の目を見ていない「排出権取引」 現在は「GXリーグ基本構想」の下、440の賛同メンバーの協業で、ルール作りが進行中。22年9月から23年1月の5ヶ月間、JPXにて取引所市場の実証事業を行う予定です。とはいえ、GXリーグにおける企業由来の超過削減枠は取り引きされず、J-クレジットのみ。システムの検証がせいぜいでしょうか。 4月に、こちらでもご紹介しております。 しかし、世界に目を向けると、異なった景色が

国境炭素調整措置(CBAM)が気になります

前回のnoteで、国境炭素調整措置(CBAM)の導入が1年間前倒しされ、2025年から本格運用になる、という話をしました。リーケージを回避するという同じ目的で導入されていた「排出枠の無償提供」終了時が、2035年から2030年へこちらも前倒しとなります。 ですので、クロスフェードの開始時期が1年間前倒しとなることに加え、クロスフェード期間が4年間も短縮されることになりますね。 なお、この間も、無償提供からオークションへ排出枠の割り当て方も徐々にシフトしていきます。欧州委員

EUのしたたかさ? 国境炭素調整措置

CBAM 略語が多すぎる状態を「アルファベット スープ」などと呼ぶことが多いですが、環境関連の用語についても同じ状態に陥っています。 CDPやSBTi、RE100、TCFDなどが代表例ですが、これも覚えておいた方がよいかもしれません。 the Carbon Border Adjustment Mechanism 国境炭素調整措置(国境炭素税) "シーバム"と読むことが多いようです。 EU域内の事業者がCBAMの対象となる製品をEU域外から輸入する際に、域内で製造した